仕返し、開始!
あれから3週間が経過しました。私は、今王太子殿下に呼び出されて人気のない教室におります。
「ルージュ、君が私に対していかに気を遣ってくれていたか理解した。また仕事を手伝ってくれないだろうか」
「はい?」
確かに私は彼のためにいつも仕事をしやすいようあらかじめ資料を用意しておいたり、最終確認だけでいいようにしていました。彼の負担を減らすようにと、自分の分だけでなく、彼の仕事の半分も請け負っていたのです。
その私がいなければ、確かに大変だろう。
でも、図々しくない?
ねえ、ものすごーく図々しくない??
「無理ですわ」
私はバッサリと切り捨てた。だって無理なものは無理ですもの。感情だけでなく、常識的にも。
「私が殿下の婚約者だからこそ私は殿下の仕事を手伝えたのです。機密も取り扱うのですから、解消した今お手伝いすることはできません」
「そんな…」
いや、そもそもいくら私がお人好しな方であっても手伝いませんわ。なんのメリットもないですもの。大変なだけですわ。
というか、手伝って発言が早すぎませんこと?もう少し自力で頑張りなさいよ。
「そもそも、殿下は私が何故婚約解消を望んだか、おわかりいただけてないようですわね?」
「私の愛が他の女に向いたからだろう?」
「ざっくり申し上げればそうですが、具体的に申しますと…今年、私の誕生日に殿下は何をくださいましたか?その日に貴方は何をしておりましたか?」
「………!?」
彼は青ざめた。
「婚約者に最低限の礼も返さないなんて最っ低ですわ。もう貴方に関わりたくないのです。顔も見たくないですわ。どうしても仕事を手伝ってほしいのでしたら、衆目の中で私にひざまづいて許しを乞いなさい。そうしたら、考えてあげてもよくってよ」
「そんな…!?」
そして私はさっさと教室を後にいたしました。言ってやったわ!私、悪役令嬢みたい…いや、悪役令嬢だったわ!
『頑張ったな』
教室の外に待機していたバングルが頭に乗っかってきた。重たいけどぬくいですわ。
『ええ、言ってやりましたわ!』
その日はバングルとささやかなお祝いをいたしましたわ。ごちそうを一緒に食べましたの。楽しかったですわ。
そして翌日。私は船の上で高笑いをしておりました。
「おーほほほほ!おーほほほほ!」
『そのぐらいにしとけ。周りの人間がドン引きしてるぞ』
私にだっこされたバングルに注意されてしまいましたわ。
『あら嫌だ。うふふ、つい嬉しくて…』
私はこれから、隣国へ留学いたします。本来なら侍女や護衛が同行すべきでしょうけど、私には不要ですしバングルの事がありますから、お断りしました。
そう、これこそが私の計画だったのですわ!
王太子殿下が仕事をさばききれないのは最初から予測済み。私だって王太子殿下の分までさばくのはキツかったのですもの。バングルに手伝ってもらったり、徹夜していたぐらいですわ。
今までは私が大体1.5を処理して、王太子殿下は0.5を処理していました。
つまり実質、王太子殿下はいきなり4倍の仕事をしなければいけなくなるのです。
恋人がいるだろうって?まだ婚約していませんし、ろくに王妃教育を受けてない小娘なんて役に立ちません。プライドが無駄に高いから第2王子のヴェース様に頼ることもできないし、手伝わないでねと根回し済みですわ!
そしてその状態で私はろくに引き継ぎもせずに留学という名の放置!!留学準備で忙しかったからと引き継ぎをしなかった言い訳も完璧ですわ!!
留学してしまえば泣きつかれてうっかり手伝っちゃうこともない!!
そう、完璧な仕返しですわ!私は自由ですわ!おーほほほほ!!
そして、隣国で新たなる生活が……始まったのですが………
「別に報告は求めてないのですが…」
私の元には王太子殿下の愉快な報告書が沢山来ておりました。皆様、何故送ってくるのかしら。別に知りたいわけではないのですが…
まあ、予想通り書類地獄に苦しんでるみたいですわ。何やら最近、謎の腹痛に苦しんだり、謎の暗殺者が襲来したりしているようですわ。
暗殺者、うちの影だったりしませんわよね!?かなり不安ですわ。お父様、短気は損気ですわよ?義弟によーく見張るようお願いいたしました。
あと、なんだか気持ち悪い手紙が王太子殿下から届いたので、仕事しろと返事を書いておきましたわ。しかも隣国まで来ると書かれていたので、たった1ヶ月で別の国に移動するはめになりました。
私、絶対手伝いませんから追うだけ無駄ですわ!馬鹿なことしてないで、さっさと仕事するべきだと思います。
あ、それから隣国の王太子様と仲良くなりました。優しくてイケメンでしたわ。匿ってくださるとおっしゃったのですが、隣国との関係が悪くなっても困りますから丁重にお断りしました。
1ヶ月は慌ただしかったですが、学びたいものは学びましたし、ほしい本はまとめて実家に送りましたから問題ありませんわ。隣国は経済学が進んでおりました。教科書は確保しましたし、帰国してまた学ぶとしますわ。
ああ、学びたいことがまだまだ沢山ありますの!楽しいですわ!
『お前、本っ当にわざとか疑うレベルでにぶいよなぁ…』
「え?」
『なんでもない』
私の日記を眺めていたバングルが何やら呟いたのですが、結局何を言っていたかは教えてもらえませんでした。
お尻を撫でたら羽でぺしりとされましたわ。それでもめげずに触ったら、バングルが人型になりました。
『…お前、毎回毎回人の尻を触りやがって…たまには触られる側の気持ちを味わえ!』
「き、きゃあああああ!?」
『うーん、これは確かにクセになりそうだ』
贅沢なお肉たっぷりのお尻が揉まれている!なんたる屈辱ですの!?
『わ、私が悪かったですわ!スカートを捲るのは…いやああああ!』
『よし、次やったら匂いを嗅ぐからな』
『うう…暫くは控えますわ』
しかし、翌日にやらかして逆襲されるのでした。だって、バングルの魅惑的なお尻を見たら手が勝手に…!
私の名誉のために詳しくは語りませんが、バングルは有言実行の殿方でした…とだけ申し上げておきます。
・隣国の王太子が仲間になった!
ついにバングルも攻めの姿勢を見せるようになりましたね(笑)




