だから、毒はいりません。
保健室で予習復習していたら、放課後になりました。
「やっほー、お姫様。調子はいかがかな?」
チャラい保健医が顔をだした。丁度いいからと書類を差し出す。
「…………これ何?」
勘がいいチャラ保健医はなかなか書類を受け取ろうとしない。しかたないから内容を説明した。
「副会長を辞任するための書類ですわ」
実はこのチャラ保健医、生徒会顧問なのである。私にやたら雑用をさせたがるのであまり好きではない。ご褒美にお菓子をくれるが、雑用の量がはんぱないのでマイナスになっている。
「は?」
「よろしくお願いいたします。あ、受理していただけない場合は学園長にチクりますからね」
「…………本気?」
「はい」
探るような瞳に、満面の笑みで返事をした。ええ、本気ですよ。受け取らなければサボってたことや仕事を私に押し付けた事までばらしますからね。
保健医はようやく私の本気を感じ取ったらしく、書類を受け取った。
「…はぁ…わかりましたよ…で、ナニをやらかしたわけ?あの若様」
この人は耳聡いから確認なのだろう。隠すつもりなどないから正直に話した。
「婚約解消しましたから、頑張る必要が無くなりましたの」
「へー…………は?はあああああ!?ナニソレ!?バカなの!?死ぬの!?」
驚愕するチャラい保健医。おや珍しい。まだ噂がまわってないのね。アピールが足らなかったかしら?
「いや、死なないですよ。あっさり婚約解消しやがりましたから、仕返ししようと思いまして」
「…はあ…何するの?」
「まあ、ささやかな嫌がらせをする予定ですわ」
チャラい保健医はしばらく考えてから首をかしげた。
「手伝う?下剤に、かぶれる系とか、地味に辛い薬なら融通するよ?」
「……バレたら面倒だからけっこうです」
いや、王太子殿下に毒を使うのを勧めるなよ、教師が!
「だって君、王妃になるために青春費やしたのにあの若様がその努力を無駄にしたんでしょ?それぐらい可愛い悪戯じゃない?」
「いえ、あくまでも正攻法でいきますわ。後ろめたい方法は嫌ですの。行くわよ、バングル」
「くわあ」
バングルは基本普通のアヒルを演じています。バングルを抱き上げて立ち去ることにした。
いや、正直かなり心惹かれた。青春を捧げたのだから、この程度なら許されるという気持ちも確かにある。悔しいし悲しい。信頼を裏切られたと思ってる。
でも、私が毒なんか使ったら…ガーネット家に迷惑がかかる。それに、やはり人としてしてはならない事だと思う。
私の報復は、あくまでも因果応報なものだ。彼が今までしてきたことが跳ね返るのだから。
すでに、計画は動いている。あとは最後の難関さえ突破できれば…私の仕返しは完了するのだ。
思考に没頭していた私には聞こえなかったが、バングルがやたらプルプルしていたので聞いてみた。
「どうしたの?」
『あの男、やべー!お前が出る直前に【惜しかったなぁ、頷けばそれをネタに脅して彼女が手に入ったのに】とか言ってた!』
「………は?」
私を手に入れて?つまり、ガーネット家を脅すってこと!?ゾッとした。
『ルージュ!お前ぽやっとしてるからわかってねーけど、気をつけろよ!あの男はヤバい奴だ!』
『と、当然よ!私は慎重派なんだから!』
『…ちょっと揺らいでいたくせに』
『うっ…き、気のせいよ!』
『…そーゆーことにしといてやるよ。よく誘いに乗らなかったな。えらかったぞ』
バングルの羽が私の腕を撫でた。頭に手が届かないからね。
『うん、えへへ』
バングルは今日も安定の癒し系です。我がガーネット家の危機を回避できて良かった…!やはり迂闊なことはしないに限りますね。
さりげなくバングルのお尻を揉んだら怒られました。軽くつつかれました。
『くわあ!?んな!?尻揉むな!?』
『だって…バングルのお尻が魅力的すぎるんだもの!』
抱っこされていて逃げ場のないバングルは、結局諦めて私の好きにさせるのでした。満足です。
アヒルの…バングルのお尻は何回揉んでも飽きません。フカフカで幸せです。
察しのいい読者様は気がついたかもしれませんが、チャラい保健医は攻略対象です。
保健医が欲しかったのカーマイン家ではなくルージュの方だったりします。ルージュに自覚はないですが、気に入られています。
では、恒例の(笑)
・チャラい保健医が勝手に仲間になった!




