覚悟を決めたら、幸せになれました
晴れてアヒル様達と恋人になり、ルールを定めました。私の仕事中はちょっかいを出さない。浮気はしない。ちなみに浮気は異性と二人きりで食事もアウトです。接触はお姫様抱っこもアウトです。俵担ぎがセーフです。手を繋ぐのは幼児までセーフ。
そんな感じでこと細かにルールを決めました。
「ちょっと!聞いてるの!?」
「聞いておりますよ。私の恋人達が美人で羨ましいから片方をよこせでしたっけ?」
実際はもっと婉曲な表現でしたが、要約したらそんな感じだと思われます。現在私はアヒル様達のファンらしき上位貴族令嬢に囲まれています。いざとなったら、コンラッド様からいただいた防犯グッズを使ってさしあげましょう。えげつない威力なんですよね。さっさと済ませてお昼ご飯を食べたいです。
「違いますわ!お二人は尊きお方なのです!お前ふぜいが近寄るのも許されないのです!!」
そうですわ、と相づちを打つ取り巻きさん達。うざったいですね。
「でしたら、ご自分でお二人にそう言ってくださいませ。わたくしめのような女が近寄ってほしくないのでしょう?」
くだらない。
言えるもんなら言ってみなさいよ。祟られますよ~。ノア様は元魔王様ですから、最悪一族郎党没落ですよ~。
「レッタ、ここに居たのか。今は休憩中か?」
「はい」
バル様が嬉しそうに駆け寄ってきました。しかし、アヒル様達はどうやって私を探しているのでしょうか。もうお腹すいたし、連れ出していただきましょう。
「あ、あの……」
「ん?なんだ?ずいぶん性根が腐った娘達だな」
バル様とノア様は魂が見えるらしく、外見がいくら可愛くとも魂が美しくない……つまり性格が悪い女は嫌いだそうです。真っ青になっているお嬢様達。せっかくなので、先ほど何を言われたかをバル様に教えてあげました。
「こちらのお嬢様達は上位の貴族様です。休憩中の私を人目につきにくい裏庭へ来るよう強制し、バル様とノア様は尊きお方だからわたくしめふぜいが近寄るなと言われました」
「…………………………ほう」
「ちょっと!?」
「せっかくなので、わたくしめからお伝えして差し上げました。皆様、自分ではお伝えできないのでしょう?」
まあ、悪意てんこ盛りな伝え方をわざとしたけどね!にっこりと笑ってさしあげた。
「今回は俺達に任せる、ということか?」
少しだけ、それもアリではないかと思いました。でも、こういった悪意は今後も続くでしょう。ならば、私は戦うべきです。
「いいえ、降りかかる火の粉は自分で払います。お嬢様方、残念ですが、わたくしめはバル様とノア様を愛しております。ですから、それを邪魔なさるなら……ルージュ様とマカラ様とファンデ様に密告いたします!」
「……密告とはそんな堂々とするものだったか?別に俺でもよかろうに」
「バル様とノア様に任せたら、焦土になるじゃないですか」
「心配しなくとも一撃だぞ?」
「破壊力は心配していません!!」
むしろオーバーキルを心配しているから頼まないのです。特にノア様は根絶やしにしようとする傾向にありますから、要注意なのですよ。そういう意味ではルージュ様が一番安心安全です。次点はファンデ様。そして、最終兵器マカラ様です。
「神の使いであるお二人の感性は特殊なのです。正攻法で来ずに、身分を使って別れさせようとするような輩にふりむく事はないでしょうね。バル様、私とあちらのお嬢様方、どちらが好ましいですか?」
「俺はルージュとレッタ以外の人間は見分けがつかん。あ、いや!マカラとファンデもわかるぞ!あいつら、変な色だから!あと、コンラッドな!最近ようやくバングナルトとクレストの見分けがつくようになったな!ちなみに、半分はもっと酷いと思うぞ!俺のほうが見分けられているはずだ!」
想定していた以上のアウトオブ眼中ぶりでした。いや、なんでそんなに得意げなんですかい。くっ…しかし誉めて誉めてオーラに負けました。くっそ可愛いです。
「わ、わたくし……何度かバル様に差し入れをしたのに、覚えてらっしゃらないのですか!?」
「お前か?レッタに害を及ぼすかもしれんと半分が作ったブラックリストに載っていた気がするな」
良かったですね。認識はされていたようですよ。お互い色々な意味で想定外でしたがね。意外にも、バル様の天然攻撃でご令嬢は撃沈され、以後関わる事はありませんでした。
「とまあ、こんなことがありまして」
ほとぼりがさめた頃、ルージュ様、マカラ様、ファンデ様、ピアス様の仲良し四人でお茶をなさっている時にたまたまご令嬢の話をいたしました。
「ああ、あの女ね。まったく、ちょーっと私に睨まれたぐらいでビビっていたわ。レッタ、私の友人に嫌がらせするなんて百万年早いって言ってやったから安心なさい!」
「ピアス様……」
ピアス様はキレたらド迫力ですし、公爵令嬢ですから仕方ないのでは?あのご令嬢は私が格下だから強気だったのでしょうし。確か伯爵令嬢であったと思います。
「私も会うたびに背後に回って『レッタをいじめたら……魔物の生き血をぶっかける』って脅したぞ!」
ファンデ様ったら爽やかな笑顔でえげつない……種類にもよりますが、ドレスについたら一発アウトですわね。しかも背後に回ってって怖い。地味に怖い。
「ファンデ様……」
でも、スカートめくりや宙吊りにして強制バンジーをせず脅迫だけだなんて……成長したのですね。
「もう二度と会わないと思いますわよ。あの伯爵、汚職が見つかりまして地方に左遷いたしましたの。今頃頑張って開墾しているのではないかしら?」
「ルージュ様……」
あの……私のためにじゃなくたまたまですよね?
「捏造はしてませんわ。時期を早めはしましたけど」
心を読まないでいただきたいですが、ホッとしました。
「心を込めて呪ったわよ」
「マカラ様ああああああああ!!妊娠中は術を使うなってあれほど言ったじゃないですか!!」
「産後に使ったわ」
「それなら……いい………いや、よくないです!呪わない!!」
私が大騒ぎしたせいで、マカラ様のご子息であるアイン様が泣いてしまわれました。
「よちよち………ああ、可愛い……」
「だあ~」
コンラッド様に似たのか、穏やかなご子息様です。あやしたらにぱぁっと笑ってくださいました。ああ、天使のスマイル……可愛いです!
「まあ、生死に関わらない可愛い呪いよ。ちょーっといいなと思った男の前で、必ず漏らす呪い」
「微塵も可愛くない!!」
えげつないにもほどがありますよ!!
「そうですわ、マカラ。私のように夜間はアヒル化の呪いぐらいにしないと」
「そもそも呪わないでくださいというか、なんで知ってるんですか!?あ……!!バル様!ノア様!!さては、バラしましたね!?」
「仕方ないんだ!」
「レッタを我らから奪うやつは敵だ!」
くうっ………!可愛い白黒のアヒルが瞳をウルウルさせて訴えるなんて……卑怯!
「やっとレッタとコイビトになれたのに……」
「レッタといられるのを、邪魔をされたくなかったのだ」
ションボリするアヒル様達…………卑怯!!
「ああ、もう!今回だけは許しますけど、次はダメですからね!!アヒル様だけでなく、ルージュ様とマカラ様もです!!」
「前向きに善処するわ」
「そうですわね。でも、わたくしもレッタが居ないと困りますの。長く仕えてもらいたいから、部下の労働環境保全をするのは上司として当然ではないかしら?」
「左遷はともかく、呪・わ・ない!!」
「………この二人にここまで言えるのってあんたぐらいよね。この国の平和が、あんたにかかってる気がするわ」
ピアス様の瞳は本気でした。いや、まあ……きっとこんな感じで、私たちはずっとずっと過ごしていくのだと思います。
平凡な石ころ侍女・レッタは、今日も幸せです。
さて、これにてルージュのみみっちい仕返しから始まったお話は完結となります。子育てにアワアワするマカラとか、書きたかったものはまだありますが……まだまだ書きたいものがたくさんあるので(笑)
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。




