ようやく落ち着け……なかったよ!
とりあえず疲れた。色々疲れたので眠った。眠った………はず、なんです。
「ここ…………どこ?」
私は、何故か森にいました。ガサガサとしげみから現れたのは……白くてモフモフした……ホーンラビット……ではないですね。あれはもっと獰猛な生き物です。
「勇者様、ボクはミミと言います。こちらへどうぞ」
あ、これは夢ですね。私は寝ているんですよ。そう思って安心してミミ君について行きました。
すると、不思議な家を見つけました。木造で、屋根は……不思議な形状ですね。
「勇者様、ここを開けてください。こう、スライドさせて」
「はい」
スライド式の扉を開けると中庭があり、そこには顔が大きなアヒルさんで、首から下は全身タイツ。腰から下はアヒルの下半身な男性が吊るされていたので、すかさず閉めて瞬時に逃げました。
「勇者様ああああああ!?」
ミミ君が叫びましたが、聞かなかったことにして全力で走りました。走って、走って、走って………ついに力尽きました。
「……大丈夫?」
「あ、はい。ご丁寧にありがとうございま…」
私に手をさしのべたのは、とんでもなく美しい少女でした。いや、ルージュ様が世界一なのは間違いないけど、甲乙つけがたいほどに美しい。少しつり目で気が強そうな印象ですが、その紫水晶みたいな瞳は穏やかに私を気遣ってくれています。まるで青銀のような美しい髪に、羨ましすぎるぐらいに完璧なプロポーションです。胸はルージュ様よりおっきいですね。
「ええと……貴女は神の使いじゃないよね?迷子?」
「え?はあ、まあ」
夢の中で迷子……まあ、こんな美女とお話しできるなら得した感じはあります。
「ロザリンド、この娘は異界の民……勇者だな。あの鳥モドキが移動を楽にするためにたまたまこちらと繋げていたから、迷いこんだのだろう」
漆黒の青年が現れ、そんな事を言いました。
「月」
漆黒の青年は月という名前で、闇の精霊様なんだそうです。
「そなたが迷っていたせいもあるようだな」
月さんにじっと見つめられる。ノア様にちょっとだけ似ていた。どうせ夢なんだから、とバル様とノア様について洗いざらい話してしまいました。ロザリンドさんと月さんはたまに質問をするぐらいで、私の話を真面目に聞いてくれました。
「異種族として、月はどう思う?」
「我か?よくある悩みだな。精霊と人のつがいでどちらも悩むが、なるようにしかならん。精霊は人にはなれぬ。できて魂だけが失われた肉体を使うぐらいだな。人は精霊にはなれぬ。魂がそも耐えられぬ」
「……そう、ですね」
アヒル様達を人にしたくない。私も人でありたい。
「だから、そのままだ。結果として、悩んだり別れたりするのは人と変わらぬ。ただ、精霊は人より情が深い。一度愛せば、死ぬまで寄り添い、またその魂を探すだろう。それが幸せか不幸かは、その精霊が決めること。同じ魂でも、記憶がなければそれは別人だ。よくて多少面影があるぐらいだな」
「人と、同じ……」
その言葉は、やけにストンと入っていきました。そりゃ、そうですよね。いつか私に飽きるかもしれませんし、私が他の誰かを好きになるかもしれません。
「私の旦那様、獣人と人間のハーフなのよ」
「え?はい」
ロザリンドさんの言葉を聞こうと姿勢を正しました。
「私の国では獣人差別があって、私の旦那様はかなり悪質なイジメを受けてたわけ。主犯も共犯も後悔させた。それでも差別がなくならなかったし、色んな人からうちの旦那と結婚するのはやめるよう言われたよ」
「………はい」
ロザリンドさんの旦那さんがどんな人かは知りません。ですが、ロザリンドさんの表情から素敵な人なんだろうと感じました。
「要は、自分が後悔しない選択をすること。私は誰に何を言われようと、ディルク…旦那様としか結婚する気がなかった。うちの父じゃないけど、ディルク以外と結婚するぐらいなら修道院か生涯独身か生殖機能を破壊して結婚できなくするよ」
「は、はい……」
過激なロザリンドさんですが、気持ちはわからなくもありませんでした。アヒル様達以外と結婚するなんて、無理です。そう、無理なのです
「レッタさんにとって、一番後悔しない選択をしたらいいよ。優先順位をつけてみたらわかりやすいかもよ」
「………ありがとうございます」
それは……そうかもしれないですね。目が覚めたら、優先順位を……つけてみましょう。
「探しましたよぉ、レッタ様ああ!?」
「きゃああああああああ!?」
「なんでまたそんな変態ルックなの?ポッポちゃん」
私を救うためにとりあえず変態アヒル様を不思議なギザギザした扇状の武器で叩いてくださったロザリンド様。しかし、変態アヒル様とお知り合いみたいです。
「とりあえずで殴るの、やめましょうよ!今回の勇者様はアヒルの尻をこよなく愛する方なので好みにこけっこおおおおお!?」
「だから、わたくしが愛するのはバングナルト様の尻一択なのです!尻ならなんでもいいわけではございません!」
何故かルージュ様がこん棒をフルスイングして変態アヒル様をお空の星にしてしまいました。
「………………変な夢」
朝からものすごく疲労感に襲われました。私は夢の中でも安らげないようです。
ついになんとかリンドさんが……書籍化の宣伝をしたかったわけじゃないです。たまたまです。




