心を休める暇もない
大変なVIPが来てしまいました。そう、ルージュ様です。第二王子の婚約者で、他国の高位貴族様です。私みたいな貴族もどきではない、生粋のお嬢様………いや、お姫様なのですよ。さらにはピアス様。友人とはいえ……彼女も高位貴族で生粋のお嬢様です。
「うわあ、お姉ちゃん達もうちのお姉ちゃんのお友だちなの?」
「可愛い~。お姫様みた~い!」
「あらあら、ありがとうございます」
「えっと……お姫様ではないけど、ありがとう」
妹達は大丈夫でしょうが、ヤンチャな弟達にはしっかりがっつりぶっっとい釘を刺しておきました。
「いいですか?あのお二人はお姫様と変わらないぐらいえらいです。スカートめくりやセクハラをしやがった馬鹿は容赦なく夕飯抜きですからね」
私の本気を感じ取った弟達は何度も頷いていました。さて、夕飯を二人分追加……よく考えたらファンデ様はお一人で軽く五人分食べるんでした。さらに作らなくては!
私は厨房にダッシュして、大量の料理を作りまくりました。母がそんなにいらないんじゃ……と顔をひきつらせていましたが、いるんですよ!ファンデ様の食欲を甘く見てはいけません!
そんなこんなで楽しい夕食タイムです。流石に父は間に合わず、父抜きで食べています。
「お姫様、これおいしいよ」
「ふふ、わたくしはお姫様ではありませんわよ」
「え~、お姫様だよ!」
「うん!お姉ちゃんもお姫様だって言ってたよ!」
「そうなの?」
首をかしげるルージュ様。
「ほぼ平民の下級貴族から見たら、ルージュ様やピアス様はお姫様です。清く正しく美しく…完璧なお姫様ですよ」
まるでおとぎ話のお姫様ですよね。アヒルになる呪いをかけられた王子様を愛で救うお姫様。私がお姫様だったら、迷わなかったのでしょうか。
「レッタ?」
「………………え?」
しまった。思考の方に意識がいってしまって、話を聞いていなかったようです。たらればの話なんて、無益だから嫌いなのに。
「すいません、ちょっと考え事をしておりました」
「……あの、さ」
「はい」
「えっと……もし、あんたが困っているなら言いなさいよ。と、友だち、なんだから」
つんでれ尊い……。最近ルージュ様に『つんでれ』なるお言葉を教わりました。ピアス様はつんでれです。
「ありがとうございます。もし、私がルージュ様やピアス様のようなお姫様だったら……迷わなかったのかなと意味のないことを考えておりましたの」
「状況は違うけど、共感はできるかも。その、私も色々あったじゃない?犯した罪は変わらないのに、それさえなければ隣に立てたかなって思ったり……さ」
「ピアス様……」
皆、優しいです。うちのマカラ様やファンデ様も頷いてます。お二人にも女子らしい気持ちがあったのですね。
「わたくしも、自分がバングナルト様に相応しくないのでは……と悩むことがありましてよ。ならば、相応しくなればよいのです。レッタなら、なりたい自分になれますわ。わたくしの自慢の侍女で、お友だちですもの」
ゆっくりとルージュ様が立ちあがり、母に頭を下げた。
「ルージュ様!?」
「わたくし、ご息女にとても助けられました。初対面のわたくしを助けようとしてくださいましたわ。慣れぬ異国でわたくしが困らぬよう、細やかな配慮をいつもしてくれました。お礼を申し上げますわ」
「え?ああ、自慢の娘です。これからもどうぞよろしくお願いいたします。レッタ、手紙に書いてある通り、素敵なお姫様だね」
「うん!」
ほのぼのしていられたのはここまででした。
「ただいま~!」
父が最後の慈悲まで取り上げられた男性達を連れて帰ってきたからです。
「食事時に汚いものを持ってこないでください」
「すまん、すまん!むかつくからごちそうをむさぼり食うさまを見せてやろうかと思ってな!」
うちの父はお怒りです。ガチギレです。プッツンしています。
「で、あの人達はどうなるんですか?」
「賠償金を搾り取ることにしたよ。レッタと仲良しのドラゴンさん達に取り立ててもらう」
「………………一応、他国の王族なのでは……」
「うちの身内に手を出そうとする馬鹿に容赦はいらないよ。たまたまレッタの強いお友だちがいたからどうにかなっただけで、あのままだったら少なくない死傷者が出ていたはずだ」
それはそうだろう。
「だからバッキバキにプライドをへし折って、二度と逆らえないようにしておかないとね」
「父さん!??」
「レッタのお父様、私……少々調教を嗜んでおりますの。プライドを木っ端微塵に粉砕して、亡きモノにしてさしあげますわ!」
「マカラ様あああああ!??」
マカラ様がイキイキとしている!ねえ、大人しくしてるって約束は!??
「レッタさん、マカラちゃんに任せよう」
「そんな……コンラッド様!?」
コンラッド様はまともだと信じていたのに!
「こういう場合、報復できないようにプライドを木っ端微塵にして、トラウマを植え付けるぐらいじゃないと!」
「マカラ様、私が浅慮でございました!念入りにお願いいたします!!」
「任せて!プライドなんて欠片も残さないぐらい完璧に破砕しておくから!!」
多分高位貴族と思われるおじさん達に笑顔で告げた。
「ごめんなさい。私、家族が大切なんです。だから、私のために犠牲になってください」
おじさん達は悲しげな悲鳴をあげてマカラ様のブタさんに引きずられていきました。家族の安全のため、犠牲になっていただきましょう。




