とある侍女のアヒル的悩み
こんにちは。その辺の石ころ的侍女、レッタです。しかし、この間の事件でアヒル的に祟る系侍女として、すっかり同僚や上司にビビられております。腫れ物扱いです。祟るのは私じゃないですと声を大にして言っていますが信じていただけない今日この頃です。
さて、私の最近最大の悩みを我が同僚にして親友であるアーピンに相談しました。
「最近、同僚からアヒル的に怖がられているのです」
「そりゃ、あれだけ祟れば仕方ないよねぇ?」
「だーかーらー、それは私がやったわけじゃないから!それに、アヒル様達は暇さえあれば所かまわず口説いてくるし……」
「ああ、うん。イケメンを二人も侍らせてるって嫉妬されてたねぇ」
「侍らせてなんかいませんからああああああああ!!なんですか!?それ!二人を侍らせてる!?ありえません!!」
私はアーピンに必死で訴えました。あんなキラキラしたアヒル様達をこんな地味女が侍らせるなどないですから。天地がひっくり返ってもあり得ませんから!!
「私は知ってるけどぉ…他の人は侍らせてると思ってるよぉ。イケメン二人を侍らせてるスゴい女って噂になってるよぉ」
イケメン二人を侍らせてるスゴい女!??
「嫌ああああああああああ!!私、私…平凡に平和に普通に暮らしたいだけなのに!人並みの幸せが欲しいだけなのに!!どうしてうまくいかないの!?」
ここ暫くのストレスが大爆発いたしました。いやもう、本当に私は平々凡々に暮らしたいだけなのですよ。別にイケメンはいらないんですよ。ガチ泣きですよ。泣いちゃいますよ!
「え、あ、あー……よしよしぃ……えぇとぉ、あたしも頑張ってこう…うまいこと情報操作するから泣かないでぇ……」
アーピンは優しく私の頭を撫でてくれました。情報操作ができるって、私の親友は一体なんなのでしょうか。普通の侍女には無理な気がします。しかし、私にはそこをつっこむ余裕など微塵もありませんでした。号泣してましたから。
「くわわ?くーわ」
あ、ハルル様もよしよししてくれています。柔らかな胸毛がふかふか……幸せ……。もふもふ……。
「くわわ」
「流石はルージュ様のアヒルさんですねぇ。賢いですぅ」
私は泣きつかれて寝てしまいました。そして翌朝。
私は、とても美しいお二人に挟まれて目が覚めました。
「ぎにゃあああああああああ!?」
「くわ!?」
「くわわ!?」
瞬時に白黒のアヒルになりましたが、遅いですわ!
「アヒル様達!お二人の寝床はあちらでしょう!」
アヒル様達のために設えたカゴを指さす。クッションを敷き詰めており、寝心地は悪くないはずです。私も確かめましたが、ふっかふかでした。むしろ私のベッドより寝心地がいいはずです。
「くわ?」
「くわわ?」
くっ…可愛く首をかしげたって騙されませんわ!
「くーわ?」
「くーわわ?」
くううっ…可愛くスリスリしたって、許したりなんか…許したりなんか……ああ、胸毛がモフモフ…癒される…。
「「くわ?」」
「今回だけは、許します…」
至近距離からのダブル首かしげ攻撃にあっけなく陥落する私。我ながら、チョロい…。
「そうか、許してくれるのか!」
「当然だな。レッタは我らの花嫁なのだから」
許す、と言ったら早速私にベタベタしてくる神々しいレベルで美しいイケメン二人。
「だから、私にベタベタしないでくだしましいいいい!!」
今日も私の叫びがこだまするのでした。
今日は、世界は違えど神様にお仕えしていたコンラッド様に、アヒル様達について相談しました。
「難しい問題だね…」
コンラッド様も輝くばかりの美貌ですが、ふくよかな時代を知っているせいかとても親しみやすいです。コンラッド様の穏やかなお人柄もあるのでしょうね。
「はい…いくら言っても聞いてくださらないですし、そもそも二人とか無理なんですよ!一人でも無理なんですよ!」
「あははは…」
ちなみに、マカラ様は珍しく仕事でいません。どうやら気を遣ってくれたようです。コンラッド様は茶化すこともなく私の愚痴を聞いてくれました。
アヒル様達の気持ちは嬉しいが、受け入れられないこと。なのに、グイグイ来ること。寝床に潜り込むわセクハラするわ、やりたい放題であること。それで叱ると可愛いアヒル姿で謝ったり誤魔化したりして、結局許しちゃう自分が悪いという自覚もあること。
さらには、国からアヒル様達を突き放さないようにとの指示があること。
「………本当に難しい問題だね」
穏やかに相槌をうっていたコンラッド様が重たいため息を吐きました。
「ひとつだけ言えるのは、レッタさんが願うなら僕もマカラちゃんも必ずレッタさんの力になるってことかな。結局はレッタさんの気持ち次第だよ。レッタさんが本気でアヒル様?達から逃げたいなら国外でも国内でも逃がすし、敵にまわしてもいい。受け入れたいならアドバイスする。彼らに注意してほしいなら、僕がレッタさんの代理に立ってもいい。ルージュ様も協力してくれるんじゃないかな?忘れないでね。レッタさんにはたくさん味方がいるってこと」
「……ありがとうございます……」
コンラッド様は癒し系です。マカラ様、本当にいい旦那様を捕まえましたね!
「まあ、神様なんかは独自の価値観を持っていることが多いけど……間違っていたらごめんね?レッタさん、どっちも選べないぐらいにアヒル様達が好きなんじゃないの?」
「うっ!?」
「その…こっちの倫理観からすると微妙かもしれないけれど…彼らにしてみたら元は同じだから、二人を相手にしたとしても浮気にならないんだろうし」
「ううっ!?」
「そもそも本気でレッタさんが嫌がってないから、彼らは調子に乗るんだと思います」
「うううううううう!!」
きっと悪気はないであろうコンラッド様の冷静なツッコミに、頭を抱えて丸くなるしかないのでした。




