とある侍女の憂鬱
とある侍女ことレッタ視点になります。
レッタ編・開始です!
皆様、こんにちは。平凡な侍女・レッタです。侍女と申しましても業務内容は多数あります。
下級侍女は主に雑用。平民の、身分が確かな娘がなります。掃除、調理場手伝い、洗濯、買い出し等です。
中級~上級侍女はすべて貴族です。上級侍女は少なくとも伯爵位以上のご令嬢が行儀見習いあるいはいい結婚相手を探すためになることがほとんどで………ぶっちゃけ、でかい顔しているくせに使えねぇ…失礼、本音が……ではなくまぁ、あまり仕事をしないわりに他者の仕事に口を出す馬鹿野郎ばかりにございます。
ちなみに私は中級でした。うち、下級貴族ですから。中級は食扶持を稼ぐために来ている場合がほとんどですから、かなり真面目に働きます。サボれば首ですから。上級はその辺り、勘が鋭いですからねぇ。自分達はたいして働かないくせに。
何故私がこのようにやさぐれているかと申しますと、今現在その上級侍女に絡まれているからです。
「そこを通してください。ルージュ様からお茶を頼まれているんです!」
飲み頃が過ぎたらどうしてくれる!こいつの頭にぶっかけてやろうか……いけない。マカラ様じゃないんだから、紅茶がもったいないわ。
アヒル的な意味でビビられていたルージュ様。しかし、時間経過と共にその温厚な性格が知られ『当り』の主だと認識されたわけです。
本来ルージュ様…第二王子妃付きは上級侍女の仕事。とはいえ、私の仕事を邪魔していい理由にはなりません。
「…ハルル様」
「くわ!」
あいにくアヒル様達は討伐任務で不在なので、ルージュ様からハルル様を護衛としてお借りしておりました。ハルル様は可愛いです。イケメンだったりしませんよね!?ね!
「があがあがあ♪」
「か、体が勝手に!?」
しばらく尻をフリフリ踊り続ければいいと思います。私の肩でお尻をフリフリしているハルル様は可愛いです。ハルル様のダンスをしている侍女は間抜けです。
「では、仕事がありますので失礼いたします」
早足で立ち去り、紅茶の飲み頃には間に合いました。
「しかし、困ったものですわねぇ」
今日も輝くばかりに美しいルージュ様。ため息を吐く姿もまるで絵画のようです。ハルル様とルージュ様には謎の繋がりがあり、私が最近上級侍女に絡まれまくっているのがバレてしまいました。
「…申し訳ありません」
「レッタは悪くないけどぉ、最近目立ちすぎだもんねぇ」
同じくルージュ様付きとなった我が親友・スレット。さりげなくルージュ様とお茶をしている辺り大物です。私は小心者なんで、同席とか無理です。ルージュ様、ピアス様、マカラ様、ファンデ様。こんなキラキラした美女達とお茶なんて色々無理です。
「呪う?」
「マカラ様、それリヒャルト様にダメって言われましたよね!?呪いのせいで大事なマカラ様と赤ちゃんに万にひとつでも悪影響があったら、私は首をくくります」
「………わかった。しない」
最近のマカラ様は素直です。リヒャルト様効果ですかね。
「…殴るか?」
「ダメです」
「…八つ裂き?」
「ダメです」
「じゃあ縦半分か横半分」
「じゃあの意味がわかりません!そもそもハーフカットしたら死ぬじゃないですか!!」
しゅんとするファンデ様。可愛いがよく言っておかないと、いけすかない同僚が死ぬか大ケガをしてしまう。
「わかった。驚かす」
「…………まあ、それなら」
多少の嫌がらせは、いい……かな?マカラ様も驚かす作戦に加わるようです。驚かす悪戯ぐらいなら、大惨事にはならないでしょう…たぶん。
ピアス様が挙手して発言しました。
「一晩中トイレに籠る呪い」
「…………………」
以前私がかかったアレか。命に別状はないし、少し弱らせた方が楽かもしれない。この時、私は正常な判断ができていませんでした。連日の嫌がらせにイライラしていたせいもあるでしょう。
「許可します」
「よし!」
「え、ピアスずるい!要は命の危険が無ければいいんでしょ!?私も呪う!」
「リヒャルト様に言いつけます」
「………うう…………」
「泣きますよ。私もリヒャルト様も泣きますよ」
「………ううう………」
「私、こんなにマカラ様が大切なのに、わかっていただけなくて悲しいです」
「………うううううう」
マカラ様は敗北しました。リヒャルト様は偉大です。お腹の子がいるから、絶対に無理はさせません。
「お腹の子、お世話させてくれる約束でしたよね?無理しないって約束しましたよね?」
「…………うん」
絶対に呪わないとマカラ様に約束をさせて、私は一旦下がることにしました。この時間は人手が足りないだろうから、洗濯を手伝いに行くことにしました。魔力があるものの使えなかった私ですが、今ならなんと魔法で洗濯と乾燥ができるのです!下級侍女達にとっても喜ばれました。一人で大量の洗濯物を処理できますからね!
ええ、私は……私も忘れていたのです。ルージュ様はアヒル的な意味で危険だと。ルージュ様が大人しい時は、何かを企んでいる場合があると。
「…………………」
「…………………」
直前の記憶を思い出してみました。先程ハルル様によりぶざまな尻フリフリダンスを披露した上級侍女に呼び出され、突き飛ばされたら……こうなりました。
「…………」
私は心を鬼にして、ソッと上級侍女だったアヒルに鏡を渡しました。
「くわぁ!?」
気に入っている手鏡を割られては困るので、確認させたら返していただきました。
「くわぁ!?」
「…多分、ルージュ様のお怒りを受けたのでしょう」
「くわぁ!?」
「…飽き…いえ、気がすんだら人間に戻りますよ………多分」
こんな遠隔魔法ができるなんて知りませんでし……。
「くわ?」
ハルル様、可愛い…ではなく、ハルル様でしたか!そういえば、ハルル様はルージュ様と視覚共有ができるんでした!
それからというもの、私にちょっかいを出していた侍女が幽霊にとりつかれたと辞めたり、謎の腹痛で辞めたり、アヒルになったりアヒルになったりアヒルになったりしました。
結果、アヒル的な意味で祟る侍女として恐れられ、イビられることはなくなったというか…イビったら働けなくなったというか……。最近は侍女長にもおびえられる始末です。祟っているのは私じゃないのですが………仕事の邪魔をされないからいいかと思うようにしました。考えたら負けです。マカラ様達と付き合っていくには、多少図太くないといけませんからね!
嘘です!胃が痛くなるからやめてくださいって泣いてやめてもらいました。嫌がらせされるより辛い気がしたのは何故でしょうか…。




