大団円……かな?
リヒャルト視点になります。
相談した皆をお礼とお詫びの食事会に招待することにした。天気もいいのでガーデンパーティ。こちらでは珍しいビュッフェスタイルです。結界があるから虫もゴミも入りません!
ふっふっふ……前世知識を活かした日本食の数々!ないなら作ればいいじゃなーい!流石に鮮度と衛生の問題から刺身は無理だけど、かなりの再現率じゃないかな?
お米は湊様がお詫びに持ってきてくれました。こっちにもあるはずだけどまだ見つけてないんだよね。
お酒を作る魔具で日本酒も焼酎もビールも作ったよ。こっちのビールはなんというか…あまりおいしくないんだよね。癖が強すぎるんだよ。
「変わった料理ね」
「………マカラちゃん、何してるの?」
「え?なんかおいしそうだから、つい」
マカラちゃんはカットしたレモンをチビチビ食べていた。そんなにレモン好きだったっけ?基本食にあまり興味がなかった気がする。
「お招きありがとうございます」
今日も女神みたいに後光がさしている気がする。お相手のバングナルト様も男なのに美しい。僕とは絶対に相容れない生来の勝ち組だと思う。そんな美女がふらりと倒れた。
「ルージュ!?」
いや、正確にはふらついたけどすぐにバングナルト様とクレストさんが支えた。
「だ、大丈夫ですわ。リヒャルト様、この素敵な容器の中身は、まさか………」
「茶わん蒸しです。上手くでき「しかも白米!味噌汁…いいえ豚汁!あああ、ホッケの干物まで…!こちらは筑前煮ですの!?」
ルージュ様がかつてないテンションだ。普段は冷静沈着で人形みたいだと思ってたけど、とても残念な感じだ。すごく親近感を感じる。しかも食の好みが庶民よりだ。
「茶わん蒸し!?干物!味噌汁!漬け物!和え物!梅ぼし!卵かけごはぁぁん!!イヤッフー!!」
イーリ様がたぶん歓喜の舞を踊っている転生組は皆いまだかつてないテンションだった。そんなに喜んでもらえると嬉しいです。
「漬け物なんかはお土産に持ち帰り「ありがとうございます!」
「遠慮なくいただきます」
「やるじゃない」
ルージュ様は少女のようにはしゃぎ、イーリ様は真顔。アイラ様は上から目線だけど喜んでいるらしいです。
男性客にはお酒が喜ばれました。
「かーっ!この一杯のために生きてる!枝豆サイコー!」
「アイラ………おっさんみたい…享年いくつよ?」
「成人してたのよねー。はああ、キンキンに冷えてるぅ!!」
「チータラもありますよ」
「チータラ!でかした、リヒャルト!はああ、幸せ…ビールにチータラ…いや、日本酒も捨てがたい!」
「日本酒もありますよ。焼酎も」
訂正します。アイラ様がかつてないテンションで喜んでいます。ついにはウルトラソウ!!とか叫びました。もしかせずとも酔っぱらってますね。
こっちのご飯もおいしいけど、チープなものが食べたい時もあるよね。チータラと言いつつ、チーズはさておきタラはタラっぽい味の魚?だけど。世の中には知らない方が幸せなことがありますよね~。あの干物とか……うん。原型がねぇ………。
「お料理が冷めませんのね」
さすがはルージュ様!
「はい。そういう魔具ですから。どうせなら温かいご飯を食べたいですし。スイッチで保冷にも切りかえ可能なんです。新作の便利グッズなんですよ」
「…………かなりすごい技術な気がしますわよ。確かに便利ですけど」
「ふむ、導入を検討しようか」
「ありがとうございます!」
やった、お仕事ゲット!どこにビジネスチャンスが転がってるかわからないね!しっかり稼いでマカラちゃんが不自由なく暮らせるようにしなきゃ!
「…………………」
マカラちゃんがフラフラとパーティ会場から出ていくのが見えた。
「マカラちゃん!?」
「大丈夫……きもちわるいだけ……」
「マカラちゃん!?」
必死に彼女を呼ぶ。魔力を探るが怪我でも病気でもない。どこにも異常は……………ん?
「リヒャルト?」
僕の魔力に呼応する異物。生体反応。まさか、いや………間違いない!!
「マカラちゃん、いつから!?いつから月のものが来てないの!?」
「…………………あ」
彼女も指折り数えて思い至ったらしくお腹をさする。
「…………本当に?」
「うん!そうと決まればしっかり栄養とらなくちゃ!酸味があるものなら食べられるかな?」
厨房に駆け出そうとする僕の袖は、マカラちゃんにつかまれた。
「マカラちゃん?」
「…………うれしい………うれ、しいぃ……」
涙でぐじゃぐじゃなその笑顔は、お世辞にも綺麗とは言えないだろう。でも、僕にとっては世界一可愛い笑顔だった。
「うれ、しぃ…ありがと………ありがとぉ…」
しがみつくような抱擁に、幸せな気持ちで応えた。
「僕も嬉しいよ。ありがとう、マカラちゃん」
がさり、としげみが揺れてあの男が現れた。えええ、まさか逃げてきたわけ!?マカラちゃんを背後に庇うが………様子がおかしい。
「私が…私が先にマスラを愛していたんだ。子供なんて許せない……」
「………どっちが先に愛していたかなんて…オモチャじゃないんですから。マスラさんの意思は関係ないんですか?」
「マスラの、意思」
「そう。仮に貴方が彼女を愛していたとしても、彼女が応えないなら、それは愛じゃない。最初は愛だったにしても……それはいまや、歪んだ欲でしかない。愛していたら、彼女の意思を無視していいんですか?愛していたら、彼女が愛した男を人質に結婚を迫っても許されますか?愛する彼女の子供を身代わりにしていいんですか?」
「あ…………うあああああああああああ!!」
初めて、男にきちんと言葉が届いていた。悪魔のせいもあって会話が通じていなかったのだろう。
「こちらで悲鳴が!」
「ご無事ですか!?」
負傷した騎士達がかけつけた。とりあえず痛いだろうから癒してあげることに。
「申し訳ございません。移送中にいきなり……」
男の体はよく見たら傷だらけだった。鞭打ちでも受けたのだろう。痕がある。裸足で走ったらしく、足裏は血まみれだった。
無駄なこととはわかっているけど、傷を癒した。
「さようなら」
多分この男は…今正しく罰を受けた。恐らく、男にとって最悪なシーンを再び見せつけられたのだから。
「マカラちゃん、行こう」
「ええ」
彼女は男に視線を送ることすらしない。そういえば、昔誰かが言っていたね。好きの反対は嫌いじゃない。無関心なんだって。好きにも嫌いにも、相手を意識するという共通項がある。
男に同情なんてしない。
「待って、待ってくれ!行かないで!」
「手間をかけさせやがって!さっさと来い!」
「待て、行くな!行かないでぇぇ!!兄さん…兄さん、僕が間違っていた!ごめんなさい……ごめんなさいぃぃ……」
男が誰に謝罪したのかは、きっと永遠にわからない。理解したいとも思わない。
それより、生まれてくる我が子をマカラちゃんと全力で可愛がらないとね!育児グッズ、たくさん開発しなきゃ!忙しくなるぞ!
マカラちゃんと笑顔で、皆のもとに戻り妊娠を報告した。特にレッタさんが号泣しながら祝福してくれた。
この笑顔を、この場所を…僕は守り抜こうと改めて思ったのだった。
長かったマカラ編はこれにて終幕。お付き合いいただき、ありがとうございました。




