まさかの関係
死者達が帰り、ようやく司法官長が顔をだした。なんだかガクガクブルブルしているけど、大丈夫なのかな?
「しょ、しょれでは審議を再開します!しかし、痛ましい話ではありますが、証人!私の寿命が15年は縮まりましたぞ!あまり年寄りを驚かせないでいただきたいですな。それにしても、死者から証言を聞くことになろうとは…証人の冥福を祈りましょう。そして真実をあばくことこそが、手向けになりましょう」
最初噛んだけど、司法官長さんは仕事をきっちりこなすタイプなのかも。
「ふふ、善処しますわ」
ショック死されたら困るしね。でもかなりの高齢みたいだから、もう寿命が残ってないんじゃないかしら?とか呟いてた。マカラちゃん、ご老体は労ろうね。
「ぜひお願いしますぞ。さて、死者達とコンラッド夫妻の証言、先程の映像からも被告がかなりの人数を『実験』と称していたぶっていたことが立証されました」
「異議あり!私は被験者に同意を取った上で行っており、違法性はない!!」
即座に男が否定した。この完全アウェーの状況で…すごいなぁと感心してしまう。
「ふむ…被告の意見はわかりました。騎士から何かありますかな」
「ああ…当然だ!騎士側は先刻証言したコンラッド氏のデータと契約書を提出するぜ!さらに、俺が証人だ!!コンラッド氏…うちの兄貴が不当な扱いを受けたのは間違いねぇ!!」
「あら」
「ええええええええええええええええええええええええ!??」
弟?弟って弟??え!?あんな怖そうな弟!??そうだよ、うちのジャスティンじゃないか!ええええええええ!??なんでそんな人相悪いの!??確かに眼力はすごいけど優しい子だったのに!!
「うちは再婚だから、俺と兄貴の血は繋がっちゃいねぇ。だが、兄貴は俺らを危険に晒さねぇために犠牲になった。俺は真実を知るため騎士になり、この件を調べまくったんだ。間違いねぇ!!兄貴は、こいつがウチに放火しやがった事で俺らが危険になると判断して逃がした!兄貴、ネタは上がってんだ!白状しやがれ!!俺は怒ってんだ!!あんたがヒデェ目にあっていたとも知らず、のうのうと暮らしてたことも、あんたにヒデェ事しやがった奴にも、俺らに何一つ言わなかった兄貴にも!!」
ああ、変わんないね。ものすご~く人相悪くて普通にしてても怒ってると勘違いされてたけど、ジャスティン…ジャンはいつも優しい子だった。血は繋がってないけど、僕の可愛い弟だった。家族に何あったら嫌だから、最低限の手紙のやり取りだけしていたけど、まさかこっちで騎士になっていたなんて知らなかった。
「ごめんよ、ジャン。兄さんが間違っていたかもしれない。君の言う通りだ。家が火事になった時…実は実家に帰る予定だったんだよ。たまたま皆出掛けていたから奇跡的に被害はゼロだった。だけど、家族に何かあったらって思ったら…怖かったんだ」
「兄貴……。司法官長、殺しに比べたらちっぽけな罪かもしんねぇ。だが、俺は大事な兄貴との時間を奪われ、兄貴は…拷問としか言いようがねぇぐれぇヒデェ目にあわされた。法廷に立つ騎士が私情をはさんじゃいけねぇとわかったうえで言う。こいつを許さねぇでくれ」
ジャンの悲痛な言葉に、司法官長は頷いた。
「…家族の絆をも踏みにじったのですな。罪深いことです。被告の証言よりも証人達の証言の方が正統性があります。法の下、必ずや裁きを下しましょう」
「待て!そこの男が元凶だ!娘を操り、書類を改竄して私を陥れたのだ!!私は無実だ!悪いことなどしていない!!」
ここまできて、まだ罪を認めないなんてすごいな。呆れを通りすぎて感心してしまう。
「そうだ、あいつが全て…兄とそこの根性なしが結託したんだ!その証拠に契約を終了して解放した根性なしは、兄に保護された!こいつらが結託していたのは間違いない!!」
「ふむ……被告の罪は明白ですが…その証拠はありますかな?あるいは、証人はおりますか?被告の兄とコンラッド氏が結託していた、またはしていないと証言できる証人はおりますかな?」
司法官長が法廷を見回した。震えながらも、一人のおばあさんが挙手した。
「は、はい…証言、できます。もと、旦那様の命令で…わたくしはずっと…ぼっちゃまを見張っておりましたから。リヒャルトぼっちゃんとぼっちゃまが接触したのは元旦那様が無一文でリヒャルトぼっちゃんを追い出したからです…」
「貴様ああああ!」
「ヒッ!?」
男が証人のおばあさんを威嚇した。手を出せないとわかっていても、あれだけのことをした男だ。怖いのだろう。しかし、震えながらもおばあさんは反論した。
「わ、私も罪人です!この男の命令で、毒を…ぼっちゃまの食事に毒を盛りました!少しでも我が子を生かしたかった。それには高額の治療費が必要で…でも、あの子はもういない!お前は私の子まで実験体にしていた!私はもうどうなってもかまいません!この悪魔に裁きをお願いいたします!!」
泣き崩れるおばあさん。
「司法官長」
ジャンに促され、司法官長が頷いた。
「ええ。証人の証言により、やはり違法性はあると結論いたしました」
「そんな!?ぎ、偽証だ!」
「…では、貴方の無実を証明してくれる証人はおりますか?仮にコンラッド氏が貴方をはめたのだとしましょう。ですが、当時子供であった彼がそこまでできるとは思えません。貴族でもない、回復に特化した魔力しかない平民が、貴族の大人を陥れるなど…物語にはありそうですが、現実ではありえないでしょう。法廷では、証拠が全てです。貴方が無実だと示す証拠はありますかな?」
「あり…ません」
男はようやく反論をやめた。現時点ですでに死刑が確定しているが、裁判はまだ続く。




