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私、みみっちい仕返しをいたします  作者: 明。
番外・マカラ編
109/131

死人に口なしはもう古い?

リヒャルト視点になります。

 男が目を覚ましたとのことで、審議が再開された。なんかさらにやつれているが、マカラちゃんのことだから、さらにゴリゴリ削るつもりに違いない。


「……それで、ええと……どこまで話が進んだんでしたかな?」


 おいぃ!?覚えといてよ!しかし、できるクレストさんがすかさずフォローしてくれた。


「映像による証人達の証言が終了したところです。証言により、新たな罪とこの男が想いを寄せた女性に執拗に付きまとう性癖があることがわかった所で被告が司法官長に襲いかかろうとして審議が中断されました」


「おお…そうでしたな!的確な説明をありがとうございました。年寄りの寿命が十年は縮まりましたぞ。年寄りをいじめないでいただきたいですな。それでは、審議を再開…したいのですが、何故騎士側が変更になっているのですかな?」


 確かに、さっきの適当騎士ではなく渋くて怖そうな顔に傷がある騎士に変わっている。


「細けぇことは気にすんな……さらに寿命を縮められたくなかったらな!」


「ヒィィッ!??」


 カッと片方しかない目を見開いた騎士にビビってしゃがみこむ司法官長。


「わ、わかりました!気にしましぇぇん!!」


 おいぃ!いいのかよ!??でも、正直わかりましたと言っちゃいそうかも。めっっちゃ怖いんだもん。あの騎士さん。簡単に人を斬っちゃいそうだ。


「…司法官長もこう言ってるし、裁判再開と行こうじゃねぇか。お次は…」


 騎士さんと目があった。どこかで…会った?あの瞳…見覚えがある気がする。僕に向かって、怖い騎士さんが話しかけてきた。


「兄ちゃん、来いよ。お前が男にされた事を証言してくれや」


「はい」


 元よりそのつもりで来た。僕に異論はない。少し緊張しながらも証言台に立った。


「くすん…進行役は本来私なのですが…」


「あぁん?」


「ヒィィッ!?しょ、証言でいいですぅ!!」


 司法官長、弱っ!!けどまぁ、僕は証言台に来ちゃったし、そのまま証言した方がスムーズだよね。


「証人、名前と職業は?」


「リヒャルト=コンラッド。魔具師です」


「よろしい。では証人、証言をお願いしますぞ!」


「はい」


 そして、僕は証言した。彼がしてきたこと、されたこと。幼い頃の話と、つい最近の話。その根底にある、妻だった女性に似た娘への執着。


「…証人の話は筋が通っていますね。ですが、自己治癒に特化した魔力とは珍しい」


「奴の屋敷から証人の魔力に関するデータを押収している。奴はすでに証人の魔力について把握しながら拷問したのさ。醜い嫉妬ゆえに…ね」


 なんかあの芝居がかった動きも見覚えがあるんだよなぁ。誰だっけ??


「異議あり!私は彼との契約に則り実験をしただけだ。多額の報酬も支払った!違法性はない!」


「……ほう?違法性はない、か」


 騎士さんの瞳がキラリと光った。クレストさんもニヤニヤしている。何か問題ある発言だったのかな?


「では、この書類についてはどう説明するんだ?リヒャルト=コンラッドは魔力を得た。その時点でリヒャルトに実験参加の義務はなかった。だがお前は、リヒャルトに魔力が発現したと知りながら繰り返し虐待をしたあげく、ボロボロになった少年のリヒャルトを無一文で放り出した!騎士側は、被告には明確な悪意があったと断言するぜ!!」


「出鱈目だ!その男は娘についた悪い虫!魔力もない平民の子供に、大切な娘をやれるはずがないだろう!」


 確かに、それはまっとうな意見だ。傍聴者がざわめく。貴族にはよくあることと言われればそれまでかもしれない。


「大事な娘ですって?」


 その声は、静かに響いた。怒りを滲ませたその声の主は、怒りを露にしながら証言台に立った。


「司法官長!今の発言について許可を願います!!」


「ええと、どちら様ですかな?」


 司法官長、マカラちゃんにもなんとなく負けている。


「この男に自分の娘だと騙されて育てられて参りました、マカラ=コンラッドと申します。この男の妨害はありましたが、大人になってから再会し、そこのリヒャルトと結婚いたしました。男の育児放棄と私への詐称、母への脅迫は後にいたしましょう。今は、この男のおぞましき悪事を露見させたいと思います」


「ふむ、証人にはその方法があると?」


「はい、ございます」


「わかりました。許可します」


「ありがとうございます。では、天国からの死者、カモン!」


 すると、天から体が透けた人達が降りてきた。なんか、すごい色してる人もいる。体が欠損した人も。ただ、痛そうじゃないのが救いかな。その表情に苦痛はない。


「ひ、ヒィィッ!??」


 司法官長が隠れてしまった。僕は前世でわりとバイオなんちゃらさんとか色々とホラーゲーやってたから耐性があるけど、普通の人には厳しいかも。傍聴者の中には、逃げた人もいる。阿鼻叫喚とは正にこのことだね。


「静粛に!静粛に!!」


 ついに騎士さんが司法官長を使い物にならないと判断して仕切りだした。いいのか、おい。


「わ、私の仕事…静粛に!静粛にぃぃ!!」


 プロ根性で司法官長さんが復活した。パニックを起こしていた人達も、幽霊?がじっとしているから落ち着きはじめ…中には身内を見つけてすすり泣く人もいた。


「わたし、ハ、あのオと、こに、コロされ、タ」


 なんか壊れたラジオみたいで聞き取りにくいけど、死者達は口々に語る。マカラちゃんも平然と話を聞いていたが、とんでもない事を呟いた。


「見た目のインパクト重視で死の直前の姿で来てもらったけど、聞き取りにくいわ。直してくれるかしら」


「くわ」

「くわわ」


 アヒル達が羽ばたくと、死者達は五体満足な姿となり淡々とエグいことを語りだした。四肢が欠損して働けなくなった男を雇って実験体にしたり、時には実験ではなく気晴らしで拷問をされた、男の非道を告発しようとしたら殺された、と死者達は証言する。

 これ、どっちがいいんだろうか。どっちもある意味エグい。辛い。しかし、天国の住人はまだよかった。天国に行けるだけあって清らかだし、時間がたっているから記憶もやや曖昧なんだそうだ。白いアヒルが言ってました。


「死者の証言など無意味だ。死者もある一面しか見ていないし、そもそも死者の証言は法的な意味を持たない。召喚者に使役されて偽証する場合もあり得る」


 男はあくまでも冷静だった。しかし、マカラちゃんがこの程度で済ますはずがない。


「いいえ、意味はあります。矛盾なき証言は、法的証拠とならなくても司法官長様に印象として残りますもの」


「そうですな。いやはや、まさか死んだ被害者から証言を聞くことになろうとは…長生きはするものですな。皆さんの無念、しかと受け取りましたぞ」


 死者達は司法官長にお礼を言うと消えていった。司法官長、最初はビビっていたのにすごい順能力だなぁ。


「さて、まだまだ死者はいましてよ!」


「ま、まだいるのですかな?なんと非道な…痛ましいですぞ。しかし、今回の全容を知り、真実に近づくためです。お願いしますぞ」


 司法官長がまともな言語を発したのはここまででした。


「カモン!地獄の死者達!!」


 先程とは比較にならないぐらいにパニックになった。天国の住人は、どちらかというと無機質で現実味がなかった。初見で騒ぎになりこそしたが、ガラス越しに見ているような違和感があった。

 しかし、地獄の死者達は、怨嗟、憎悪、怒り、悲しみ…ありとあらゆる闇を煮詰めたような声をあげ、腐臭を放っていた。


「ふああああああ!あばばばばばば!!」


 逃げこそしないが、司法官長が隠れた。傍聴者もけっこうが逃げた。男や僕らにも襲いかかろうとしている。僕は耐性があるし結界もあるから問題はないけど…リアルホラーは遠慮したい。傍聴者にまで襲いかかろうとする死者に、とっさに叫んだ。


「お、大人しくしないと唐辛子パウダーを撒きますよ!傷口にしみますよ!悶え苦しみますよ!!」


 死者の一人が制止を無視したので、唐辛子爆弾をぶん投げた。追尾式だから下手くそでも安心の防犯グッズである。


「グギャアアアアアア!!」


 唐辛子パウダーにのたうちまわる死者。日本の地獄と同じく呵責を受けるためか傷だらけの体に唐辛子パウダーはキツい。すさまじい効果に、死者達は動きを止めた。


「言うことを聞かないバカは私が調教しますわよ!」


 ようやく地獄の死者達も証言をした。男への悪意に満ちているが、流石地獄行きになった死者。そもそも人身売買のブローカーや男から毒や媚薬を買っているなど…どっちもどっちな気がする。男は死者達の声に耳を傾ける気などないらしく、襲われかけた時は多少怯えていたがどうでもよさそうだ。


「貴様は間違いなく俺達の仲間になるなぁ…地獄で待ってるぜ」


 最後に証言をした死者は、理性を保っていた。流石に彼の発言には青ざめており、死者達はそれを見て楽しげに帰っていったのだった。

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