1296. 18階の魔物討伐(18)
栗と胡桃を採取してギルドに戻り、隆一がショートケーキ、デヴリンがイチゴタルト、ダルディールが栗のパイを頼んで昼食を食べ終わって18階に降りて来た一行は、早歩きで動き回りながらオーガは倒し、ポイズンスライムは回避して進んだ。
「お、アーミーアントの群れだな。
左側に設置型の足止め用魔道具を展開するから、右側から来るのを適当にいなしてくれ」
隆一が運搬具から設置型の魔道具を取りだしながらダルディールに頼む。
既にデヴリンはもしもの時ためにちょっと下がって警戒している。
暫く待っても中々アーミーアントの群れが辿り着かない。
「う~ん、次は少し逃げてから諦めて設置型足止め用魔道具を使うって流れにするべきかな?」
フェロモンを噴き付けた相手を追う時はかなりの高速で動くアーミーアントだが、どうやら遠くから視認しただけの場合はもう少しゆっくり動くらしい。
と言うか、端の個体が潜在的獲物を発見したら、群れの内部で何か意思疎通が行われた後に群れ全体で用心深く狙いに来るという感じなのだろうか。
先日は頑張って走っていたり、背負子の準備をして背負われて逃げたりしていたので、最初に接敵した際の探知から戦闘開始までにかかる時間に関してあまり認識していなかった。
「まあ、外で接敵した場合は都合のいい岩場っぽい地形まで移動するのが正解だろうなぁ。
ここでは……下手にそういう地形に移動するとテリトリーを出てしまうかも?」
ちょっと考えながらデヴリンが応じる。
「一度接敵してからだったら他の魔物のテリトリーでも追って来るから、挟撃された場合の戦い方の訓練になるかもだが、接敵前だったら18階だったら追うのを止めるからなぁ。
アーミーアントの群れのテリトリー内でちょうどいい岩場があるか、少し探してみるといいかもだな。
群れを対処するのに慣れてきたら、一度接敵してから違う魔物のテリトリーに出るのも良い挟撃訓練になるかもだが」
まあ、最初はあまりリスクを取るべきではないだろう。
まだアーミーアントの群れを一人では倒しきれないのだから。
「氷矢!」
やっと近づいてきたアーミーアントの群れの先頭の個体に攻撃を加える。
上手いこと首の節の所に刺さって、その個体はあっさり沈んだ。
「お?
ホールインワンじゃないか。
珍しい」
思わず冗談を言いながらクロスボウ型足止め用魔道具で右側の魔物の脚を止め、その横にいた個体に氷矢を放つ。
「上手いこと節とか目に当たらないと刺さらないのが面倒だよなぁ。
氷矢!」
接敵最初の一撃が良かったのだが、2発目は当たった場所が悪く、あっさり外殻に弾かれてしまった。
三発目は足の節に当たり、倒れてはいないが動きが止まる。
「そこで止まっておけ!」
足止め用魔道具を放ち、首と前脚を拘束したら上手いことアーミーアントは動けなくなった。
その後ろから来た個体に足止め用魔道具を放ち、それが足に絡まった粘着液に手間取っている間に最初に足止めした個体に氷槍をしっかり狙って放つ。
氷槍ならば外れさえしなければ外殻を貫くのだが、魔力消費量が多いので無駄撃ちは出来ないのでしっかり狙えるタイミングでしか放てない。
氷矢を2発で倒すのと、氷槍一発で倒すのとでほぼ魔力消費量は同じなのだが、氷矢は一発で倒せるときもあれば、慌てると3発でも倒せないことがあるので、中々判断が難しい。
「ちょっと後ろに戻っていな!」
暫く戦ってクロスボウのフレシェットが空になった足止め用魔道具の充填をしている間に近づきすぎた個体をダルディールがシールドバッシュで上手いこと後ろに跳ね飛ばした。
「どうも!
氷矢!」
一番前の個体に攻撃を叩き込み、その後ろの個体に足止め用魔道具を放つ。
上手いこと今回は一発で氷矢が急所にあたってくれた。
まだまだ続く群れの個体をひたすら倒していく。
「ふあぁぁぁぁ。
疲れた~。
最後の方はかなりダルディールに弾き返してもらった感じだったな」
やっと群れの最後の個体を倒し終えて、隆一は地面に思わず寝転がってしまった。
一応デヴリンに助けてもらうのは避けられたが、それはダルディールが近づく個体を全部跳ね返してくれたからだった。
これが最終的には乗り越えられるような岩だったり、単に足止め用魔道具で左右を止めていただけで隆一が一人だった場合は押し切られていただろう。
「まあ、一応体力と魔力は群れを殲滅できるだけあると分かったんだ。
あとは腕を磨くだけだな!」
デヴリンが楽し気に言った。
それなりに隆一が成長していると見て、育ててきた身としては嬉しいのかも知れない。
『うむうむ、弟子が上達してきたのう〜。』ww




