1280.18階の魔物討伐(2)
「あ、ポイズンスライムだな」
ポイズンスライムのテリトリーに入ったので魔力探知に集中していた隆一は、ちゃんとポイズンスライムを接敵する前に発見できた。
「よし。頑張って倒してくれ」
デヴリンが鷹揚に頷く。
「氷矢!」
視野に入った直後、毒を吐かれる前にと急いで攻撃魔術を叩き込む。
今回もコアを外したが、スライムのジェル部分を凍らせて動きを制限したお陰で、あちらから吐き出された毒は見当違いな方向へ飛んで行った。
「もういっちょ氷矢!」
毒を吐いた後なので少し余裕があるともう少し近づき、しっかり狙って放った攻撃は今度はちゃんとコアに当たり、ポイズンスライムの凍っていない部分がべしゃっと平らになった。
「う~ん、やっぱ毒を吐かれる前に当てなきゃと思うと焦るせいか、精度がイマイチだな。
それにそれなりに集中していないと気付けない可能性もありそうだ。
オーガも倒してそっちが問題なかったら、ちょっとテリトリーが分からないように目隠しをして少し動いた後にふらふらとテリトリーが分からない状態で18階を歩き回って、もう少し魔力探知の精度を上げた方がいいかも知れない」
オーガは足止め用魔道具が上手く機能すればそれ程問題はないと思われる。
足止め用魔道具の強度が足りなければそれは魔道具をパワーアップすればいいだけなので、こちらは機械的な構造修正だけで済むからそれほど難しくはない筈。
それよりは隆一本人の技能が足りていないポイズンスライムの方が問題だろう。
「頑張ってみるか?
付き合うのは構わないし、オーガよりはリポップが早いからふらふら動き回るのも良いかもな。
ついでにアーミーアントも群れ全部とは言わなくても複数を戦えるか試せるし」
デヴリンが頷いた。
そういえばアーミーアントとの戦闘も複数を対処できるようになれと言う話だった。色々とスパルタに考えているようだ。
「そうだな。
まあ、考えてみたらオーガだって想定外に接敵した時に慌てないで戦えるか確認した方が良いんだし、今から少し目隠ししてちょっと歩くか」
まだオーガと自分一人で戦ったことはないが、ヤバくなったら助けてもらえるのだ。
せめていつ接敵するか分からないぐらいのハードルはあってもいいだろう。
「目隠しに良い布なんて持ってきてないが……取り敢えず、タオルでも撒いて暫く目をつむって動けばいいか」
ダルディールがタオルを取り出して言った。
意外とノリノリなようだ。
ちゃんと洗濯してあって清潔な石鹸の香りがするタオルを顔の上半分に巻き、目を閉じた隆一をダルディールがぐるぐると回してから手を離した。
「これで暫く歩いてから、タオルを外したらいいんじゃないか?
あまり地形をしっかり見て分析しないようにしてくれ」
デヴリンが隆一が歩くのに手を貸しながら言った。
「これってずっとやっていたら魔力視で視界なしでも動けるようになるかな?」
時代劇にあたような達人のレベルに到達出来たらそれはそれで面白いのだが。
「まあ、無理じゃないか?
魔物の場所とかは分かるからある程度は戦えるが、地形って言うのは魔力感知で小石を知るのは難しいし、魔物と戦っている時だって尻尾と爪や牙の位置の違いを魔力感知で把握するのは中々厳しい」
デヴリンがあっさり隆一の希望的観測を撃ち落とした。
やはり無理らしい。
魔力感知で文字を読めるようにと魔道具とインクなどを作っていた時に会った騎士なんかはそれなりに戦えているようだったが、考えてみたら彼らは文字が見えないぐらいに視力が落ちていたが、全盲と言う訳ではなかったので地形や接敵した魔物の形程度はある程度分かっていたのだろう。
小石は分からないと思うが……そこら辺は慣れで何とかなるのだろう。
「このくらいで良いかな?
じゃあ、適当に動き回ってくれ」
タオルを取り去りながらダルディールが言った。
さて。
しっかり見知らぬ場所を動いている感覚になって、魔物探知と戦闘準備をしなければ。
なんか微妙に似た様なことを繰り返しやっている隆一w




