1264.蟻対策:魔力(3)
「見ている間にどんどん変わられるよりも、一端計測結果を確認してから準備が出来たら今の状態を見直せる方が良いな。
ボタンを押したら情報を取得しなおす形にするか」
完全に一度切ってから再起動するのはちょっと面倒だし魔力の無駄遣いな気がする。
情報取得だけをやり直すにはどこに魔力を流しなおせばいいのか、ちょっと確認してそこをやり直す形のスイッチを付ければいいだろう。
「なんかこう、元の状態のこの絵?を記録出来たら良さそうですけど。
数字ではなく色なので、記録が取りにくいです」
エフゲルトがちょっと困ったように言った。
なるほど?
徐々に変わる数値だったらそれを書いていけばいいが、色が変化するとなると細かな色の変化自体が識別しにくいし、その色に関する形容詞も知らない人間が多いだろう。
と言うか、男性と女性だと色の違いに対する認識力も違うと聞く。
それこそ女性の買い物に付き合った男性の多くが経験しているように、男にはほぼ同じようなピンクにしか見えない色でも、女性には何十通りもの違いがある色に見えるらしいのだから、色の細かい違いは女性の方が認識できる場合が多いのだろう。
「流石に迷宮探索に大掛かりな魔道具を持っていく訳にはいかないからなぁ。
まあ、俺はかなり細かく画像を記憶できるから、それで何とかしよう。
ここで試作品をテストするためには画像を写し込める魔道具を作るのも手だが……取り敢えずは俺の記憶で済ます」
コピー機もどきはあるがカラープリンターはない世界だ。
カメラは一応あるらしいが、それなりに大ぶりな魔道具だと聞くから、それを迷宮探索に持っていくのも大変そうだ。
一度カメラを買ってそれを小型化できるか、研究すべきかもしれない。
隆一個人は画像情報ならほぼ完ぺきに記憶しておけるので、あまりカメラの必要性を感じていなかったからカメラモドキな魔道具にも特にそれ程興味を持っていなかった。
という事で。
何度か魔道具を動かし、魔法陣の一部に魔力を流しなおす形でトレント素材の魔力含有量の計測し直しを繰り返す。
何度かやっている間に粉砕したトレント素材の魔力がほぼ尽きてしまったので、隆一の魔力を流し込みつつ繰り返し、やっと夕食前に新魔力計測器を満足いく形に改造し終えた。
「フェロモンに含まれる魔力の量はこれで確認できるが……次はその魔力をどうやって消すかの実験だな」
ある意味、それこそ魔力の含んだ水球で洗うなりクリーンの術を掛けると魔力を上書きできるのだろうから一番早い気がするが。
ただ、それを出来るのは魔力を使う系統のスキル持ちだけになりかねない。
誰でも使える魔道具でどうやって魔力を上書きするか。
「それこそ魔石から魔力を取り出してぶつけるか?
まずは魔道具で出した水にどの程度魔力が含まれるかを実験してみるか」
創水の術を魔道具化した場合にどの程度水に魔力が含まれるか確認する必要がある。
いや、どうせだったら極緩いが継続的な水矢をホースから水が出るような形に変形させた魔法陣を作れれば、魔力とフェロモンそのものを両方洗い流せていいのではないだろうか?
攻撃魔術関連の魔道具は敢えて見ないようにしてきたが、きっと魔道具として開発されたことは過去にある筈。
それをちょっと改変させて、使い勝手のいい携帯式ホース(水源付き)に出来るか、試したらいいかも知れない。
明日は錬金術ギルドに行くことにしよう。
考えてみたら、飲料水を作る魔道具があっても良さげだけど、あるんだろうか……




