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実は召喚したくなかったって言われても困る  作者: 極楽とんぼ


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1258.18階(19)

「帰りに16階でイチゴを採取していこう」

 17階に登った隆一は16階への階段へ歩きながら同行者二人に提案した。


「そうだな。

 18階の探索を始めてからあまり果物を採っていなかったし、良いね」

 ダルディールが頷いた。


「最近胡桃や栗も採っていないから、16階のあとは15階から転移門で10階に行って、7階にも寄ろうか?

 いや、考えてみたらランチの時にケーキのリクエストをしておく方が良いだろうし、ちょっと荷物が多いから16階でイチゴを採った後に上に戻って、荷物を一度家の方に送るよう手配した後にランチを食べてから、7階と13階に行って果物とかを採取しまくらないか?

 そろそろそっちの在庫が減ってきたし、これから数日は迷宮に来ないで家で色々試作品作りに没頭するつもりだから」

 隆一がちょっと考えてから提案した。


 取り敢えず18階でアーミーアントのフェロモンを確認する試薬は出来上がった。

 次はフェロモンを如何に効果的に洗い流すかのテストだが、それは色々と魔道具を作る必要があるから1日か2日程度は迷宮は休みとなるだろう。

 だったらその前についでに甘味用の素材を集めておくのも良さげだ。

 気分転換にもなるし。


「別にもっとアーミーアントを倒しても俺は構わんぞ?

 あれはそれなりに外で被害が出る魔物だし、しっかり研究する価値がある」

 デヴリンが『自分のことは気にしないでくれ』と言いたげに慌てて口を挟んだ。


「そろそろ定期報告書の作成時期か。

 ここ数回は全部フリオスに任せていたんだから、久しぶりにお前がちゃんと目を通す機会があるのは良いことだろう?」

 ダルディールが笑いながらデヴリンの提案の茶々を入れた。


 どうやら何か書類作業の締め切りが近いようだ。

 フリオスに良い感じに押し付けてきていたのに、今回は隆一が数日迷宮探索をしないとなると、押し付ける言い訳がなくなると慌てているらしい。


「そうか、重要な報告書の作成があるんだったら、取り敢えず一週間ぐらい休みにしてみよう。

 考えてみたらこっちに来てからまとまった休みって取っていなかった」

 迷宮に行かない日はちょくちょくあったが、そういう日は基本的に家で研究をしていた。

 だが、考えてみたらもう少し王都内の散策なり、家でぼ~っとするなり、図書館で何か研究に関係のない書籍を読むなり、もう少しだらけるべきかも知れない。


 デヴリンやダルディールたちに家族サービスの機会を与えるべきだろうし。


 ついでに煌姫にでも声を掛けて、蟻退治に関して何か知らないか、聞いてみてもいいかも。

 煌姫自身が蟻の対処なんぞしたことはないだろうが、彼女の実家が創業家として動かしていたAY調薬も殺虫剤系の商品を扱っていた。

 何かそれが家での話題に上っていた可能性だってゼロではない。

 下手に病気用の薬の研究開発の話をするよりは、家に出る虫の退治に関する話の方がまだ情報漏洩のリスクは少なそうだ。

 女性にとってはあまり家族の団らんの話題には向かないかもだが。


「え?!

 1、2日ではなく7日も休むのか?!」

 デヴリンが世も末!と言いたげな顔をしてきた。


「なんだったら長期休暇でもこの機会にとってどっか旅行にいくとか、家族サービスするとかでもいいかも?

 フリオスが納得するかは知らんが。

 穴兎の肉の方が果物よりも賄賂に向いているなら、14階に寄ってもいいぞ?」

 フリオスはすらりとした魔術師的な体形に似合わず、かなり肉食系な食の嗜好だった気がするので、オレンジや桃やイチゴよりも、穴兎の肉の方が喜びそうな気がする。

 今日は肉を急速冷凍するための魔道具は持ってきていないが、氷矢アイスアローで取り敢えず凍らせればそれなりに美味しく持って帰れるだろう。


「……肉はダルガスから買った燻製があるから、あとは胡桃のタルトにする」

 ちょっと考えてから、デヴリンが応じた。


 どうやら果物入りケーキよりも胡桃のタルトの方がフリオスは好きらしい。




さて、突如湧いて出た1週間の休みをデヴリンはどう使うのか……

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― 新着の感想 ―
そりゃあ定期報告書を書いてるより ただひたすら蟻を斬りまくってる方が 気楽でしょうね
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