1252.18階(13)
隆一に倒せる可能性が限りなく低い最下層のドラゴンを倒した場合の売却方法に関しての考察はさておき。
アーミーアントのフェロモンに関する実験を早速始めることに。
「リュウイチとダルディールは階段のところで待っていてくれ。
ちゃちゃっと途中の魔物を倒して、一番近くのアーミーアントと一回戦ってからここまで引っ張ってくれば良いんだよな?」
15階まで転移門で移動し、階段を下りてきて18階に辿り着いた隆一にデヴリンが告げた。
どうやらどうせ階段に戻ってきて色々とフェロモンに関してテストするのだったら、隆一を引き連れて18階を行ったり来たりするよりも自分一人で動く方が早いと考えたようだ。
「そうだな、それだけ荷物があるんだし、下手に動かして何かが壊れても面倒だろう。どちらにせよ戻って来るんだし。デヴリンが一人で倒しながら行って帰ってくる方が早いし安全だ」
ダルディールもデヴリンの提案に頷いた。
一応うっかり迷宮に吸収されないように探索者ギルドの売店で買ったダンゴムシ(多分)が入っている迷宮用の保存具は運搬具に入れてあるが、他の探索者が来るかもしれない迷宮の階段に色々な道具を放置して行くのも良くない。
そしてダルディールとデヴリンの二人と言うのならまだしも、隆一を含めた3人だったら18階程度を動くのならデヴリン一人の方が良いのだろう。
というか。
どの階層であろうとデヴリン一人の方が隆一を含んだ3人よりは良いのが現実な気がする隆一だった。気にしないことにしているが。
「じゃあ待っているよ」
足手まといである自分の待遇にため息をつきつつ諦め、隆一はデヴリンに頷いて実験道具の整理を始めた。
考えてみたら、たとえどれほど腕が上がろうと、絶対に死なせてはいけない存在と言うのは危険な場所に連れて行くと邪魔なのだろう。
それこそ他の誰よりも強いというのならば話は別かもだが。
そして隆一がそんな強さを身に付けられる可能性は限りなく低いので、考えるだけ無駄だ。
「取り敢えずブラックライトもどきを見やすくするために、光を遮るテントを立てるから手伝ってくれ」
待っている間に準備を始めようと、隆一がダルディールに声を掛けた。
ブラックライトでフェロモンを光らせて見られるかもと期待しているのだが、外程明るくなくてもそれなりに明るさのある迷宮では見分けにくい。
ちょっと暗くするために、階段の途中で広げられる天井付きのアパレルショップにあるような着替え室サイズぐらいの直方形テントを持ってきたのだ。
階段の段差に対応して前と後ろの高さが違う支柱に、黒い布と言うだけの簡単なものだが。
一応成人男性が2人入って動けるように大きめな着替え室ぐらいのサイズにしてある。
「うん?
なんでテントが必要なんだ?」
ダルディールが隆一に手を貸しながら尋ねる。
「持ってきた試薬の一部は、血とか体液の一種に触れると化学反応を起こし、紫外線を当てた時に光るものなんだ。
光ると言っても淡くだから暗くしないと光っていると分からないが、掛けられたフェロモンを可視化出来たら便利だろう?」
隆一が説明する。
出来れば普通の光で反応するように何らかの工夫が出来たらいいのだが。
というか、考えてみたら多分魔力もフェロモンの一部でもあるのだから、魔力に反応するような試薬がないか、探すべきかも?
魔力視では見つけられない程度に弱い魔力だが、それでも何らかの形で魔力の残滓を見つける試薬とか道具があってもよさそうだ。
「そういえば、こう、魔力の残滓を調べる道具ってないのか?」
此方の世界だったら血よりも魔力の残滓の方が追いかける必要が高そうな気がする。
「魔力視でうっすらとした残滓でも見つけられるスキル持ちが捜査機関にはいるが、道具としてはそういうのはないかな?
それこそ以前隆一が開発した魔力の残量を図る道具はあるが、あれはもっと多い魔力量用だよね?」
ダルディールが応じる。
「多分?
考えてみたら、あれをもっと微量でも視えるように改造するのもありか?
ブラックライトがダメだったら考えてみるか」
魔力視で視えないぐらい微細なフェロモンを感知出来るぐらい繊細な機器だったら、迷宮内では周囲の魔力に反応してしまって何も測定できない気もするが。
取り敢えず。
今日は色々と試薬を吹き付けて調べてみよう。
これからプシュプシュと試薬塗れにされるデヴリンw




