1243.18階(4)
「オーガだ」
次のポイズンスライムに遭遇する前に、大きな魔力の塊へ近づいたのでデヴリンがそちらを指して隆一に伝えた。
今回は大きいだけあって、向こうが攻撃態勢に入る前にちゃんと隆一も気付けた。
まあ、先ほどのポイズンスライムだってもしかしたら攻撃をしてくる前に隆一も気付けた可能性もゼロではないが。とは言え、浸食性の毒で奇襲されたら危険極まりないので、何が何でも絶対に先に気付けるようにならなければ18階を動くのに厳重なお守りが必要だ。
「オーガってオークの進化系というよりはゴブリンの進化系なのか?」
近付いて来る魔物の顔を見ながら隆一がお守り役の二人に尋ねる。ラノベなどではオークは猪っぽい顔をした二足歩行する魔物と言うイメージでオーガはそれの進化版な場合と、ゴブリンの進化版な場合とあるが、考えてみたらゴブリンは進化するとゴブリンキングとかになる話の方が多い。
というか、別に日本のラノベがこちらの魔物のラインアップと一致する必要性はないのだが、異世界言語理解がラノベの知識をこちらの名称などにも当て嵌めて訳している場合もあるので、意外とラノベ知識に沿った流れになっていることも多い。
「さあ?
明らかにオークはゴブリンともオーガとも系統が違うから、しいて言うならまだゴブリンの方がオーガに近いかも?
だがゴブリンは進化してもゴブリンソルジャーやゴブリンロード、ゴブリンジェネラル、ゴブリンキングといった幾つかの進化先があるが、オーガがゴブリンの集落に君臨しているという話は聞かないな。
大繁殖の際にはオーガの進化系のオーガキングがゴブリンを含めた周囲の魔物を率いていることはあるが」
隆一の質問の意図がイマイチ分からないっぽいダルディールが少し首を傾げながら答えた。
どうやらオーガはオークともゴブリンとも違う系統らしい。
オーガはオーガで進化するとオーガキングと言うのがあるらしいし、馬と河馬ぐらいに近くて遠い関係なのかも知れない。
まあ、ある意味どうでもいい話だし、組織だった化石の研究とかが盛んでは無いこちらの世界では魔物の進化・分離過程を調べるのもほぼ不可能だろう。
オーガはミノタウロス(中)とほぼ同じぐらいなサイズだった。剣らしきものを手に持っている。
「こいつらは体の構造的には人間に近く、武器を動かすの際に肩や足回りの可動領域が広い。
まあ、元々隆一は近接戦闘はしないと思うが、近くで戦うことになった場合はミノタウロスの様に肩の可動領域が狭いと思って避けると死にかねないから、気を付けてくれ」
デヴリンが近づいて剣でオーガの攻撃を受け流しながら隆一に説明し始めた。
遠距離から斬撃で切り捨てるのでは学べることが少ないと思ったのか、今回は色々とオーガの動き方を説明してくれるつもりのようだ。
「力の強さは?」
ついでに参考までに聞いておく。
「それなりに強い。と言うか、迷宮中層辺りから魔物の攻撃をまともに食らったら人間は死ぬぞ。
剣や棍棒の攻撃も、避けるか逸らすかだな」
ダルディールが横から口を挟む。
「足止め用魔道具や防御結界を使った場合の参考として、15階のゴーレムと比べてどうなんだろう?」
力が強すぎたら足止め用魔道具の拘束を引きちぎったり、防御結界をたたき割ったりする可能性もあるのだ。
「あ~。
そこら辺はやってみなきゃ分からないかな?
後で試そう」
デヴリンがちょっと面倒そうに言い、どうやらもう見せられることは特にないと思ったのかあっさりオーガの首をスポンと切り飛ばして終わりになった。
「ちなみに、嗅覚とか聴覚とか魔力感知とかに関して、避けたい場合に気を付けるべきなのは?」
隠れる羽目になった場合にどれを特に注意すべきはそれなりに重要だ。
「……魔力感知と聴覚かな?
遠距離からの視覚での認識も早いが、迷宮内だったら魔力感知で見つかることの方が多いだろうな」
デヴリンが応じる。
何故か迷宮内は地平線よりも近い距離までしか見えないので、確かに魔力感知の方が先にお互いの存在に気付ける可能性が高そうだ。
取り敢えず。
見つけるのは一応先に出来たっぽい。
後は足止めが出来るかと、隆一の攻撃魔術で倒せるかの検証だ。
ゴブリンは猿の亜種、オーガは鬼の変異系って感じかな?




