1238.肉チェック(18)
「突進牛の肉も確保した方が良いのかな?」
バターブルの肉3体分を探索者ギルドで解体・真空パックで密封・冷凍させて騎士団に送ってもらった隆一は、他の部分を各種利用する工房に送り付けた後、フリオスと実験の詳細を確認する為に騎士団へ来ていた。
「いえ、突進牛は食堂で通常使われる素材ですから、大丈夫です。
取り敢えず、まずは実験の最初の被験者になった六人が食事は変えずに気絶寸前まで魔力が空になるまでランス系攻撃魔術を放ちまくり、それが何回だったかを記録した上で4時間経った昼食後に更に魔力が空になるまで魔術を放った場合に何回撃てるかを確認し、更に午後にまた4時間後に同じことを行うというテストを3日ほど続けて、何か変化が生じないかを確認します。
その後に6人のうちの3人に関しては肉を本人に知らせずに変えて実験を更に3日続けて、肉を変えなかった3人及びそれ以前の3日と比較して何か違いが生じたかを確認します。
3日後には肉を変える人員を交代して更に3日続ける予定ですので、何か違いが出てくるか、それなりな実験結果が得られると期待しています」
フリオスが実験に関して説明してくれた。
朝から3回も魔力が空になる寸前まで攻撃魔術を撃ち続けるというのは中々ハードな気がするが、確かに魔力を全部使い切り、それを数値化するには攻撃魔術の回数辺りが一番手ごろなのだろう。
「大変そうだな。
ちなみに、そういう風に魔力をほぼ空にするまで使って更に鍛錬した場合でも、魔物を倒さないと基礎能力値が上がって魔力の総量が増えたりはしないのか?」
魔力を枯渇さするというのはラノベでは典型的な魔力の総量を増やす手法だ。魔力の回復が傷の治療速度と同じように下の方の層に肉を食べる事で早まるかは興味があるが、魔力を枯渇寸前まで使って体を追い込む事で魔力総量が増えるかも是非知りたいポイントだ。
此方の世界では基礎能力値を上げるのは基本的に迷宮(外でもいいが)で魔物を倒すのが典型的な成長手段らしいが、単なる鍛錬だけでは基礎能力値は上がらないのだろうか?
「基本的に魔力の総量を上げようと思ったら魔物を倒すのが一番簡単かつ収益が出る手段なので、外で空撃ちする鍛錬がどんな効果があるかは微妙に不明なんですよね。
それもあって食材を変える前に3日ほど予行演習的にやらせるんです」
フリオスが苦笑しながら応じた。
此方の世界でも、魔力がほぼ空になるまで鍛錬したら魔力の総量が上がるかもという理論はあるらしい。
誰も真面目に試していないらしいが。
子供でも倒せる魔物が居る迷宮がある弊害と言えるかもしれない。
外でも一角ウサギ程度だったら農家の子供たちが夕食用に狩るそうだし。
「じゃあ、取り敢えずバターブルの肉は密封して冷凍したのを料理長の所に送り付けるよう探索者ギルドの方で手配しておいてあるから、実験を頼む。
……4日目にでもちょっと顔を出すから食材を変えなくても何か効果があったか、あと食材を変えた場合に違いが出たか、教えてくれ」
最終的に結果報告は来るが、やはり好奇心が疼くので中途経過を知りたい。
「勿論です。
リュウイチ殿も試してみないんですか?」
フリオスがちょっと首を傾げながら尋ねる。
「……確かに?
食材が変わっているという事を知らない形での実験は出来ないが。
いや、だが迷宮で魔物を倒していたらそれで基礎能力値が変わってしまうからイマイチ実験に向かないんだよなぁ。
騎士団の実験から何か有意な違いが出てきたら、それと迷宮での探索とどう組み合わせたら一番効率的な鍛錬が出来るか、考えてもいいかも」
というか、下層の肉を食べると魔力の総量が上がるのだったら単に迷宮の探索をしつつ出来るだけ下層の肉を食べればいいだけだ。
そうなった場合、バターブルと穴兎の肉で効果に違いがあるか、確認したいところだ。
魔力量を増やすために穴兎を食べるのを辞めるのは嫌だ。
『美味しいは正義!』




