1225.肉チェック(5)
「昨日の肉を食べてみたか?」
翌日、王都迷宮の前であったデヴリンとダルディールに隆一が尋ねた。
今日はちょっと隆一が遅れたので二人が先に来ていた。
「俺は単に食堂の料理人に渡して昨晩の夕食に出してもらったんだが、特に何か気付いた人間は居なかったようだな」
デヴリンが肩を竦めながら答えた。
「私の方は妻に料理してもらったが……もしかしたら満腹感がちょっと違ったかも? ただまあ、違いがあるかもと思いながら食べたせいで受けた印象の可能性も高いから、確実ではないかな」
ダルディールが付け足した。
「確かに、あまり違いは感じられなかったよなぁ。
俺も味的には殆ど違いがなかったと思ったし、皆に感想を聞いたが誰も特に何も気づかなかったらしい。
一応燻製にもしてもらうよう手配したんで、そっちの職人にも出来上がったら何か気付いたか聞いてみるよ。
もしかしたら魔力の回復量が遅かったかもと思わないでもないが、今朝試した範囲では特に普段と違いはなかったので、誤差の範囲内な気がする」
隆一の試食(?)の結果も話す。
肉自体の味や歯触りは本当に違いがないと思ったし、アリスナにも聞いたが料理人として何か違いに気付くこともなかったらしい。
「魔力の回復量ねぇ。
魔術師の鍛錬の時にレッドブルと突進牛の肉を出して回復速度を比較してみるか?」
デヴリンが提案する。
どうやら魔術師の魔力の回復量に違いがあるかもというのなら、騎士団としてはそれなりに突き詰めて確認する価値があるらしい。
まあ、新鮮な魔力たっぷりな肉を戦場や大繁殖の現場で食べられるかはかなり怪しいところだが。
何といってもついこないだまで、遠征中は騎士たちが半泣きで嫌がるほどの不味い保存食しかなかったらしいのだ。
そう考えると保存食に関してはあまり贅沢を言えない可能性が高い。
「そうだな。
突進豚と突進牛とレッドブル辺りをスラムの被験者に食べてもらって体力アップに違いがあるかを確認するとともに、それらの肉を燻製にしたときに何か違いがあるかを騎士団の魔術師にで試してもらおうか。
新鮮な肉に関してはスラムの人員の体力アップ効果で確認すればいいと思うが、燻製肉に違いがあるのだったら保存食に持っていく燻製やフリーズドライの食材に関して色々と吟味する価値はあるかもだな」
レッドブルや更に下層のアーマーボアやバターブルを保存食にするとなるとかなり高くつきそうだが。
それに、フリーズドライにしたらそれこそ魔力が殆ど残らなそうな気もする。
「だな。
美味しい燻製だったら幾らでも食べたがる人間は多いし!」
嬉しそうにデヴリンが相槌を打つ。
「デヴリンが魔術職じゃないからテスト人員にはならないんじゃないか?」
ダルディールが指摘する。
「いやいや、普通の騎士だって気力を使って斬撃を放つんだし、それらの回復量の違いの確認は重要だ!」
デヴリンが反論した。
「取り敢えずはまず突進豚と突進牛の回復速度の違いを確認するのと、そいつらの肉で作った燻製に関して違いのチェックをしないとだな」
魔力枯渇寸前な個体からゲットした肉で燻製を作ると回復量が少なくなるとなったら、色々と魔力を使わせる実験をした肉はそれこそ炊き出し程度に使う劣化品扱いする必要があるかも知れない。
まあ、普通に市場に売りだしてしまえば一般市民はそこまで魔力の回復が重要ではない場合が多いので構わないかもだが。
「よし!
まずは7階だな!」
デヴリンが転移門の方へ足早に進む。
忘れているのかもだが、これから7階の沢山いる探索者の前で魔物虐待をすることになる。
ちょっとマントか何かで魔物を隠して実験をするべきだろうか?
デヴリンは燻製肉が大好きw
お酒のつまみとかじゃなくてもおやつが割りにバリバリ齧ってます




