1221.肉チェック
ごっそり16階でイチゴを採りまくった一行は12階へ向かった。
午前中の探索の際に解体した肉は昼食時に上に向かった際に自家消化分以外はすべて売り払い、自家消化分も家に送り付けたので飛行型運搬具は空になっていたのだが、荷物を入れる棚の一段目がほぼイチゴで埋まってしまった。
まあ、今日は残りの時間でレッドブルの回復スピードを確認するのと肉を集めるだけなので、先にイチゴを下ろしに行かなくても大丈夫だろう。
そんなことを考えながら、隆一はレッドブルのテリトリーの方へ足を向けた。
最初に探索を始めた頃は魔力感知で魔物の位置を探り、どの魔物かは行き当たってからのお楽しみという感じだった。
今となっては今まで探索した階で興味があった魔物に関してはテリトリーを大体把握しているので、狙った魔物のいる場所へさっさと向かえる。
デヴリン達は魔物のテリトリーを把握している様子を見せなかったが、あれは覚えるのが面倒だから行き当たりばったりに向かっていたのか、敢えてランダムになる様にしていたのか、どちらなのだろうか。
あまり探索者に対して至れり尽くせりにギルドが情報提供すると何も考えない脳筋な探索者を量産しかねないから、探索者ギルドも魔物のテリトリーの位置を把握していないか、していても緊急事態以外では探索者に教えない方針なのかもしれない。
デヴリンとダルディールにとっては隆一がウロウロする階層なんて彼らの通常の適正階層から大幅にずれているので、ここら辺の階の魔物のテリトリーなんぞ覚える必要もないだろうし。
「おっし、レッドブル発見。
頑張って足止めしてから切りつけまくろう」
想定した場所をのんびりと歩いているレッドブルの魔力を探知して、隆一が護衛役の二人に声を掛ける。
この階ならばそれ程探索者は多くないが、酸素ボンベ用にレッドブルの素材が必要となったせいで以前よりはこの階に来る探索者が増えたと聞いたから階段からのルート的には遠回りな場所にいるレッドブルのテリトリーに来たので、魔物虐待の現場を目撃されるリスクも少ないだろう。
明日はちょっとした仮面モドキな何かを持ってきてもいいかも?
日本だったらマスクと眼鏡でそれなりに隠せたのだが、こちらの世界はマスクを使う習慣はあまりないようなので、あれを迷宮内で使っていたら却って怪しまれて注目されそうだ。
「は!」
今回は全く攻撃をせずに突撃してくるレッドブル相手にクロスボウからボーラもどきな足止め用魔道具を放つ。
怪我をさせては実験の精度が下がるので、出来るだけ出血無しな状態で取り押さえて切りかかりたい。
「お~、大分と上手くなってきたな」
上手いこと左前脚と後ろ足に粘着網の縄が絡まって横転したレッドブルを見てデヴリンが褒めた。
「あ、一発頭を殴って気絶させてくれないか?」
出来れば火を吹かせないで回復実験をしたい。
魔力を無駄に使われると傷の治癒速度が正確に認識できない可能性が高い。
睡眠薬や麻酔薬でも注射出来たらいいのだが、残念ながら魔物に聞く薬は殆どないので、殴って貰うのが一番だ。
まあ、考えてみたら麻痺毒の強いのだったら効くかも?
だが魔物の場合は魔力を使って体内に入った毒を中和するという説もあるので、麻痺毒を使うのも結局無駄に魔力を使わせて実験結果を狂わせてしまいそうだが。
「ほいほ~い」
デヴリンが軽く応じ、鞘に入ったままの剣でレッドブルの後頭部辺りを殴った。
そういえば、人間や動物が頭を殴られると気絶するのって脳がショックを受けるせいで一時的に機能停止になるからなのだろうか?
それだったら回復師も脳に大して何らかのショックを与えて気絶させることも可能そうだ。
どんなショックが魔物を意識不明にさせるのに向いているのか、ちょっとついでに実験して今後の治癒速度チェックに活用してもいいかも?
ますます魔物虐待に磨きがかかる?!




