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実は召喚したくなかったって言われても困る  作者: 極楽とんぼ


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1214/1303

1214.17階再び(4)

 もう一体ミノタウロス(中)を倒し魔石と棍棒を入手した後、隆一達一行はアーマーボアのテリトリーへと進んだ。


 17階だとミノタウロス(中)は棍棒で殴り掛かって来るものの、アーマーボアとバターブルは突進から牙や角でひねりを効かせた体当たりが基本的な攻撃方法だ。

 なのでアーマーボアもテリトリーに隆一達が踏み入れたのを感じたら、かなりの速度で突進してきた。


氷槍アイスランス!」

 有効範囲ギリギリぐらいで攻撃が届くように攻撃を放ち、次の氷槍アイスランスの魔力を練りながらクロスボウを構え、アーマーボアの速度変化に注意を払う。

 氷槍アイスランスが当たると攻撃で怪我を負うというだけでなく、冷却効果で筋肉や血流の動きに支障が出て動きが遅くなることも多いのだ。

 上手い具合に鎖骨の間ぐらいに刺されば、実際に急所を貫いていなくても肺や頸動脈を凍らせて死に至らせることもある筈だが、まだそこまで経過観測に都合が良い部位に攻撃が刺さったことはない。


 今回も、正面から突進してくるアーマーボアの首のあたりを狙ったのだが、ちょっとずれて横の脇あたりに刺さった。

 衝撃でか少しふらついて突進が遅くなったが、直接足の動きに支障が起きなかったのかそのままアーマーボアは隆一の方へ進んでくる。


 なのでボーラが前脚に絡まるようにクロスボウを放つ。

 右前脚に当たったボーラが回転し、丁度脚の動きのお陰で近くなっていた右後ろ脚に巻き付いた。

 更にぐるぐると縄状になった粘着網が右側の前後の脚に絡まり、最初はグイっと無理やり伸ばしてそのまま走ろうとしていたアーマーボアも結局右側の脚を上手く動かせなくなったことでズシャアァ!と横倒しになって倒れた。


「うっし!

 氷槍アイスランス!」

 横側に近づき、首を狙って練っていた攻撃魔術を放つ。

 心臓を狙ってもいいのだが、うっかりすると肋骨に当たって体の表面で止まる可能性も高い。

 氷槍アイスランスの冷却効果で心臓が止まってそのうち死ぬ可能性も高いのだが、首の頸動脈や喉や肺凍らせて呼吸器官を麻痺させる方が早く死ぬのではとそちらを狙ってみた。

 鑑定しつつ見張っていたら、2分もたたないうちにアーマーボアは死んでいた。


「よし。

 次は心臓を目指して攻撃して、どうなるか確認だな」

 頸動脈の血流が止まって2分程度で死ぬとなると、考えてみたら心臓を貫くのに成功しても心臓が血をポンプさせる機能を停止してからやはり死ぬまで2分かかりそうな気もしないでもない。


「考えてみたら、魔物って心臓を貫いて殺すよりも目から脳みそを貫くとか、首チョンパする方が早く死ぬのか?」

 アーマーボアの死骸に近づき、魔石を切り出しながらデヴリンに尋ねる。


「……確かにそうかも?

 首を切り落としても体の方が少し動くことはあるから体が完全停止するまでの時間はどうやってもそれほど違わない気もするが、心臓を貫くのはよく切れる刃で心臓をピンポイントに切りつけた場合は回復能力の高い上位魔物だと傷を癒しちまうことがあるからなぁ」

 デヴリンがちょっと考えてから応じた。


 なるほど。心臓を鋭い刃物で切り付けるというのはそれこそ外科手術で心臓を切り開くのと同じで、絶対に回復できない身体的損傷ではないのか。

 通常だったら当然そのまま死ぬが、それこそ回復力が高く、筋肉がびっしりある上位魔物だったりすると筋肉に力を込めて膨らませることで傷をふさいで出血を最小限に抑えている間に、体の回復力で切れた肉を接続しなおして傷を修復する可能性もあるのかも知れない。


「魔物の回復能力って回復術ヒールに近いのか? 戦っている最中に心臓の傷が治るって言ったら普通に回復力が高いっていうレベルを超える気がするが」

 魔力を注げば傷が治るという訳ではない筈。

 それだったら魔力操作が出来る人間なら誰でも回復術ヒールを使える理論になるし、少なくとも魔術師ならばある程度の回復術ヒールが出来る筈だが、実際には回復術ヒールは限られた人間だけ持つスキルだ。


「ドラゴンとかじゃない限り、魔物って攻撃魔術を使えるか、その魔力で怪我をした際に体を本能的に改修する能力があるかに分かれる気がするな。

 方向性が種族的に決まっている代わりに、本能的に使えるのかも?」

 ちょっと首を傾げながらデヴリンが答えた。


 なるほど?

 攻撃的な魔術っぽい手段がある魔物と、そうでないタイプの魔物との怪我に対する反応の違いを調べてみても面白いかも知れない。







流石に上位魔物の心臓を切り付けてその回復プロセスを観察しよう!とは言い出さない良識が隆一にもあると期待w

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― 新着の感想 ―
なるほど次は魔物を拘束した上で 色々傷を負わせて回復過程を観察しようと
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