1211.17階再び
「今日は久しぶりに17階に行くぞ!」
隆一が王都迷宮の前で待ち合わせた護衛役の二人に宣言した。
「16階はもういいのか?」
ダルディールが尋ねる。
「好奇心を満足させる程度の実験は大体やったし、特許申請はザファードに任せたから。あとは薬師ギルドと神殿とで治験をしながら実験的に色々な人に使わせて普及させていけばいいんじゃないかな?
探索者ギルドもちゃんと状況を把握しているから活用していけるよう首を突っ込んでくるだろうし」
色々と試行錯誤し、自分が貢献できる範囲はほぼ実験し終わったと満足した隆一はトレント苗の若葉を使った一連の継続的回復薬や回復薬改(トレント若葉入り)やそれらから作った飴の特許登録をして、一区切りついて終わった気分になっている。治験や普及に関しては神殿や薬師ギルド、及び探索者ギルドに丸投げするつもりだ。
ちなみに飴に関する特許利用料についてはアリスナにも利権を少ないながらも一部押し付けた。
隆一邸での業務中にやった作業なのだから特許利用料を貰う謂れはないと本人には反対されたが、隆一があそこまで食べられる味にしようと思ったらとんでもなく時間が掛ったのだろうから、お返しゼロはないと言い聞かせ、色々とやりあった末に総合金額から見れば比較的少ない金額で話が落ち着いた。実際にはそれなりになる可能性が高いが。
まあ、年金制度も碌にない世界なのだ。アリスナの老後のためにも不労収入があるのは良い事だろう。
ちなみに飴に関しては庭で実験したところ、紙の袋に入れてリュックのポケットに突っ込んで直射日光が当たるところに半日置いていたらそこそこ効果が下がった。
錫と鉄の合金で出来た一般的に飴などを入れるのに使う缶に入れて外に置いた場合は午前中は殆ど効果の劣化がなかった。
正午近くになって溶けてしまった後に再度固まった物はなぜか味が劇的に不味くなった上に効果も下がっていたので、暑くなりすぎる場所には置かない方が良さげだ。
それこそ召喚前の日本の真夏の様に35度前後まで気温が上がるような場所に行くのだったら冷感シャツで使っている魔法陣でも参考にして何とか温度を少し下げる工夫をした方がいいかも知れないが、ヴァサール王国はそこまで暑くならないらしいので、国内の利用ではそこまで問題はないと隆一は期待している。
探索者ギルドが色々な状況での利用や持ち運びをテストして、問題があったら教えてくれるだろうし。
「ポーションを飴にするというのは中々いい考えだよな。
魔力回復ポーションも飴にして使えないか、フリオスが軍の研究室の方に投げかけていたぜ」
転移門に向かって足を進めながらデヴリンが言った。
「確かに、魔力もポーションを一々がっと使った時にがぶ飲みするよりも、ちょくちょく使っているのを常時回復的に飴で補給出来た方がいいだろうな。
飴の味に関しては……研究室で働いている錬金術師よりも、料理人とか飴を子供の為に作っている家政婦とかに相談する方が効率的だぞ」
隆一が頷きながら、ついでに情報を提供する。
「そうなのか?
継続的回復薬飴のレシピが提供されたからあれを使えばいいだろうとフリオスは考えていたようだが」
デヴリンが少し首を傾げる。
「魔力回復ポーションと継続的回復薬では使う草が違うから、味も違うぞ?
まあ、どっちも苦くて不味いという点に違いはないが。
魔力回復薬の飴が食える味にできなかった場合は、マジでプロの手助けをさっさと求めた方がいいぞ?
普段料理をしない錬金術師とか研究者って、飴を作る場合の味の調整にどのくらい何を足せばいいのかっていう細かい調整が苦手なんだと思う。
俺が作った飴は……マジで不味かった」
自分が最初に作った試作品の飴の味を思い出して溜息を吐きながら隆一が言った。
もっとも、国の研究所なのだ。
予算は潤沢にあるだろうし、砂糖や調味料を無駄に使っても経済を回すのに貢献しているという事になるかも知れない。
一応警告はした。
上手くいかなかくても、頑張ればいつかは正解に辿り着くだろう。
軍の開発が中々進まないようだったら、自分で使う用だけちょっと実験してアリスナに手伝ってもらってもいいし。
魔力回復薬も内服薬で激マズw




