1208.若葉入りポーション試作(17)
「先日見つけた新しい素材で、継続的に回復できるポーションが出来たんだ。これは一気に飲んだら20分ほどある程度の回復効果があるんだが、飴にして口の中に入れていると飴が口の中に残っている間ずっと微量の回復効果が生じる物になった」
どうせ人体実験するなら、味の方も騎士たちの意見を聞くのがいいだろうという結論になった隆一は、アリスナに試作品の飴を更に増やしてもらい、それを持ってフリオスとデヴリンの元に来ていた。
「ああ、あのトレント苗の若葉か。
そうか、継続的な回復となると内服薬になるのか」
デヴリンが微妙な顔をしながら言った。
「ああ。
一番効果が高くできたポーションは軽度な怪我に15%程度の回復効果が20分続く。
ただし、味はそれなりに酷い。
飴にすると効果がちょっと下がる代わりに口にある間ずっと回復効果が継続する」
デヴリンの言葉に答えながら、隆一がボトルに入った継続的回復薬《リジェネ薬》ポーションと、飴の試作品を机の上に大量に出して見せた。
「ふむ。
此方で効果や使い勝手を試したらいいのでしょうか?」
フリオスが尋ねる。
「ああ。
最終的には探索者も使うと思うが、あちらは通常の探索でも怪我をしないのが重要な職業だろう?
日常の鍛錬でそれなりに怪我をしてポーションを使うか回復師に治療してもらう騎士の方が軽微な怪我の治療を継続的に出来る薬の効果を試すのに向いているかなと思ってね。%の治療効果って言うのが実際に怪我をしながら使うとどんな感じになるのかも知りたいし。
ついでに、味に関してもどれだったら現実的に耐えられるかの意見も欲しい」
幾ら回復の為とは言え、隆一が作った飴はどう考えても我慢して口の中で長時間舐め続けられるような代物ではなかった。
下級貴族や裕福な家の出身の人間が多い騎士団の人間が、エフゲルトよりも激マズ耐性が高いとは思えない。そうなると、アリスナの改良版でもダメなのがありそうだ。
まあ、フリーズドライ食が出来上がるまでは騎士団の人間も遠征の際にそれなりに不味い保存食を食べていたらしいから、考えてみたら普通の貴族とかよりはずっと激マズ耐性が鍛えられているかもしれないが。
「鑑定結果はこれなんだが、実際に使ってみた際の使い勝手とか傷の回復具合も調べてほしいし、味との兼ね合いでどれだったら我慢できるかとか、どれが購入したいレベルの味と回復度かといったフィードバックをもらえるだろうか?」
試作品の飴の番号ごとに書いた鑑定結果を差し出しながら頼む。
「激マズ。変な味。まあまあ?許容範囲内。
全部試してみたのか?」
鑑定結果に付け加えた隆一の味に関するコメントを見ながらデヴリンが苦笑する。
「ああ。
まあ、俺の好みと他の騎士や探索者の好みが同じになるかは不明だから、参考程度だと思って欲しい。
ちなみに、10個程度だったら飴をかみ砕いて次から次へと食べてもポーションをがぶ飲みした時のようなポーション中毒はなかったが、効果時間が長くなることもなかったと思う。
そこら辺も機会があったら確認してもらえると助かる。
あ、ちなみに嚙み砕いて飲み込むと一時的に回復するが継続的回復がなくなるんで普通に回復薬を掛ける方がいい」
何といっても掛ける回復薬なら苦さを味わう必要が無いし。
「そういえば、これって内服するのに外傷の回復効果があるんですね?
回復薬は飲んでも精々口内炎か胃荒れや食道炎程度にしか効かないと聞きましたが」
フリオスがふと首を傾げて尋ねた。
「そう、ちょっと不思議な効果なんだ。
口内炎や胃が荒れている人間が騎士団にいるようだったらそいつにも試してもらえると更にありがたいな。
出来れば回復薬との効き目の違いが分かったら更に嬉しい」
というか、口内炎や胃が荒れている人間は回復薬を飲むのだろうか?
あれも試しに飲んでみたらかなり不味かったし、自作している錬金術師や薬師以外にとってはそれなりに高くつくが。
「事務方の人間に何人か胃痛に悩まされている人間がいますし、口内炎はそれなりにいるので声を掛けてみますね」
フリオスがあっさり頷いた。
なるほど。
脳筋が多そうな騎士団でも事務方は色々と悩みが多いようだ。
口内炎は脳筋でも掛かるかな?




