1207.若葉入りポーション試作(16)
「そういえば、回復草ってめっちゃ苦いんだったっけ。
上級のポーションにする以外の方法では飴にしても後味が強烈過ぎて飲むのは無理だって話を以前聞いたな」
今までで一番いい回復効果のある継続的回復薬が出来上がった。
出来上がったが……試飲する前に、最初に11階に降りた時にデヴリンに教わったことを思い出して思わず及び腰になる隆一だった。
「そういえば、回復草って薬草と違って直に揉んで傷口に塗り込んだら痛いらしいですね」
ふと思い出したようにエフゲルトが言った。
「いや! これは薬効成分を抽出したんだから、直に食べた際の苦さはない……かもしれない!
取り敢えず、一滴試してみよう」
掛ける回復薬だけでなく、飲む魔力回復薬でも使われるらしいのだから、回復草の強烈な苦さはポーションの素材の一部として薬効を抽出する分には多分大丈夫な筈。
それでもちょっと恐る恐る、一滴だけ出来上がった継続的回復薬をスポイトに吸い取り、舌の上に垂らす。
「どうでした?」
恐る恐るエフゲルトが尋ねる。
「元々が不味かったからなぁ。大して差は無い? もしかしたら微妙にマシかも」
スポイトにさっきより少し多めに取り、エフゲルトの方へ差し出しながら隆一が答えた。
これだったら普通に食べられる飴にして貰えれば、十分摂取は可能になるだろう。
大元が不味すぎるという問題は残ったままだが。
「……確かに、他の継続的回復薬と大して違いがない味ですね」
顔をしかめて砂糖入りのお茶で口の中を洗い流してからエフゲルトが言った。
「飲み干せばいいだけだったら青汁だと思えば飲めなくはないんだが……やはり突発的に戦闘が始まった時に備える感じに使うと考えると、口の中に入れておいてゆっくり摂取しておける飴型が一番いいよなぁ」
まあ、ボス戦みたいのがある場合は戦闘前にグイっと一杯飲んでおくのもありかもだが。
下手に口の中に飴があり、それを噛んではいけないと意識する必要があると力を入れて動くのに微妙に差し支えるかも知れない。
そう考えると一番効果が高いこの中級薬草と回復草を使った継続的回復薬はしっかり準備をしておいて大物と戦う際なんかに使えばいいのかも知れない。
「一応これも飴に出来ないか、アリスナに頼んでおくか」
隆一は出来上がった試作品を一部ビーカーに移し、台所に向かった。
「アリスナ、これも飴にして欲しいんで、頼んでいいかな?」
大量に小さな鍋と細切れになった飴が並んでいる台所にいるアリスナに声を掛ける。
「それに取り掛かる前に、これらの味をちょっと試してもらえます?
一応どれもそれなりな味になったと思いますが、好みがあると思いますので」
振り返ったアリスナが、隆一の方へお皿に色々と幾つも載せられた飴を押し出してきた。
「もう出来たのか??」
今朝頼んだばかりなのに。
「以前の職場でしょっちゅう風邪をひく坊ちゃんに咳止め薬を飲んでもらうために色々と実験したことがあったので。
あの時は子供用ということで甘い系統ばかりでしたが、坊ちゃんが喜んだせいで他の家族の方も欲しがったから料理長と一緒に色々と試したんです」
アリスナが微笑みながら答えた。
家政婦のやる仕事ではない気もするが、雇用主の家族と色々と話し合うのは料理長よりも家政婦の方が細かく感想を聞き取りしやすいのかも知れない。
「ふむ。
じゃあちょっと小さく砕いて試してみるよ。
ありがとう」
お皿を受け取りつつ、隆一が礼を述べる。
まずは鑑定してどの程度治療効果が変わったかを確認する必要がある。
いや、先に食べてみて、効果という前提条件なしにどれが一番食べやすいかを判断した方がいいか?
効き目が高いとなったらちょっとまずくても我慢しようと考える可能性があるから、味に関してはまず効果から独立した条件で判断して、最終的にどうするか総合的に判断する方が良さそうな気もする。
アーシャにもそのうち試してもらいたいが……この分だったら、明日にでも来てもらって試食してもらった上で騎士団の同僚たちに試してもらおうか。
というか。考えてみたら、一応フリオスとデヴリンに先に人体実験の許可を得るべきか?
騎士団の人員で人体実験するなら上に知らせるべきですよねw




