1205.若葉入りポーション試作(14)
「こちらとこちらの液体を飴にして、長時間口の中に入れていても我慢できる程度に味を改善したいんだが。
取り敢えず香辛料でもミントでも蜂蜜でも果汁でも、なんでもいいから色々と試してみて食べられる組み合わせを何通りか見つけてもらえないだろうか」
色々と実験して、全てで敗退した隆一はアリスナに助けを求めることにした。
どうも加えるべき香辛料やその他の材料の量の調整が上手くできていないらしい。
大丈夫だろうと思ったミントですら、草のえぐみが強すぎて食べられたものではなかった。
ミントの葉をすりつぶして足すだけではダメなのかもしれない。
「回復薬ですか、これ?
あれって内服して効果があるんですか??」
アリスナが黄緑色ともう少し濃い緑に近い色の液体を見ながら驚いたように隆一に尋ねる。
「いや、普通の回復薬は内服しても外傷にあまり効果はない。
ちょっと新しい素材を迷宮で見つけてね。それを使って継続的に外傷の回復が起きる効果のあるポーションを開発したんだが、飴にして口の中に長時間保持しておく方が、一気に飲み干すよりも都合がいいと思われるんだ。
ただ、味がね……」
色々と試飲した薬の味を思い出して、思わず遠い目をしながら隆一が説明した。
考えてみたら、紅茶は砂糖なしの牛乳入り、コーヒーは必ずミルクと砂糖を入れて飲んでいた隆一は実は苦い味が苦手だったのかも知れない。
濃くて苦いコーヒーをガンガン飲むような人間だったらこのくそ不味い継続的回復薬やそれから作った飴でも平気なのかもしれないが、こちらでの隆一の知り合いは紅茶派の方が多いし、コーヒーを飲む際にも砂糖を入れている人間が多い気がする。
日本やアメリカの様に残業上等で眠気覚ましのコーヒーは必需品だった社会と違い、こちらは殆ど残業などしない。しかも基礎能力値を学生時代から迷宮でアップさせているので、地球のオフィスワーカーより遥か体力にある。そう考えると、苦い飲み物をがぶがぶ飲んで苦味に慣れている人間は少ないのかも?
どちらにせよ。
もう少し苦痛ではない味にしないと売り出しは無理だろう。
「美味しい味が必要なんですか?
それとも我慢して口に入れておける程度で良いんですか?」
アリスナが尋ねる。
「まあ、美味しいに越したことはないが、我慢できればギリギリ合格点って感じかな?
あまり加熱すると薬効部分が失われるので、入れる材料の分量が分かったら錬金術で殆ど加熱せずに飴にする予定だ。がっつり高い温度で加熱しなきゃいけない素材だったら、こちらのポーションと混ぜる前に加熱する形にして欲しい」
隆一が求める結果に関して説明する。
「加熱しすぎたらダメなんですか。
どの程度の温度までなら上げてもいいんです?
素材によっては熱しすぎると美味しさが逃げるものもありますから、温度の調整というのは意外と調理方法次第でなんとかなるんですよ」
アリスナがメモ用紙を取り出しながら言った。
「そうなのか?
だが35度までしか上げず、それも長時間は避けたいとなると難しいんじゃないかと思うが……。
まあ、加熱しすぎずに調理的手法で飴に出来るならば素晴らしいし、無理だったら錬金術でやるから温度管理に関しては『出来るなら』程度でいい。
味の方をを何とかしてくれると、切実に助かる」
なんとかなるかもというアリスナの言葉を切り捨てるつもりはないが、時間を掛け過ぎないでもらいたい隆一だった。
やる気がある相手にあまり『やるな』と言い聞かせるとやる気そのものを削いでしまうので、要注意だが。
アリスナだったらそこら辺も上手いことやってくれるだろう。
回復薬用の飴を料理として作ることにそこまで拘りはないだろうし。
料理系なことはプロに任せる方が確実ですよね




