1201.若葉入りポーション試作(10)
「このサイズの飴って口に入れたらかみ砕かないと邪魔だし、下手をしたら危険だよな?」
出来上がった飴を見ながら隆一がコメントした。
「下町の子供だったら長続きするご褒美という事で喜ぶかもですが」
エフゲルトが軽く笑いながら応じる。
初めて作ってみた飴は、子供の拳程度の特大サイズになってしまった。
元々、回復薬の一回分の分量はそれなりに傷口に万遍なく掛けられるぐらいの150㏄程度あるのだ。
それに合わせて継続的回復薬も精製したので、考えてみたらあれを一気に全部飲むのはちょっと大変かも?と後から気付いたぐらいである。
それの三分の一となると大体50㏄。
そこに大量の砂糖を混ぜて固めたのだ。
子供や女性だったら口に一気に頬張れるかも怪しいぐらいに大きな飴になってしまった。
それこそ、このサイズだったらうっかり戦闘中に丸呑みしたら喉に詰まらせて死にかねない。
「そういえば飴を作る仕上げとして、水分が蒸発して纏まってきたら台の上でこねて棒っぽい形にして切り分けると良いとアリスナが言っていたな。
ちょっとこれを柔らかくして捏ねてみるか」
この拳サイズを口に入れる気はしないし、誰かにこれを口に含んだままちょっと軽い怪我をするような鍛錬をしてくれと頼むのも無理がある。
という事で、手をもう一度洗浄した後に、台所から借りてきたまな板の上に飴を出し、加熱しつつ加工スキルで少し柔らかくして金太郎飴っぽい棒形に捏ねて伸ばしてみた。
「このサイズぐらいが普通の飴だよな?」
人差し指の第一関節ぐらいのサイズになるように切り分けて、一つを手に取って鑑定してみる。
「鑑定」
『飴型継続的回復薬タイプBQ52:BQE211(通称:トレント)#A3の薬効成分を魔力水に抽出し、砂糖を加えて飴にしたもの。口にある間は軽度組織損傷に対して5%程度の回復効果と3%の体力回復効果が続く。かみ砕くと残っていた飴の量に応じた一時的効果が生じる』
「ふうん?
飴を舐めながら長持ちさせられる人が居たら、お得なのかも?
20分ではなく、飴が口の中に残っている時間だけ5%の回復効果が出るんだってさ」
ある意味、出来るだけ溶けないように舌の裏か頬の奥にでも押し付けておいて、戦い始めた際に唾液で溶かし始める感じで使うといいかも?
かみ砕いた時の一時的効果がどの程度かを確認して、それなりなのだったら怪我をしたらかみ砕き、別の飴を口に放り込むというのもありだろう。
複数の飴を口に含んでいた場合に5%を超える効果を得られるかも確認してみたいところだが……怪我の回復度というのは%で観察できるものではない。
同じ長さの傷をつけた際に傷が完治するのに掛かる時間でも比較して調べればある程度は分かるが……被験者とは言え、鍛錬の最中に負った傷が治るのを観察するのはまだしも、意図的に刃物で体に傷をつけるのはちょっと微妙だ。
とは言え。動物実験をしようにも、動物がこちらの期待通りに飴を噛まずに舐めてくれるとは思えないが。
「砂糖の素材とか、砂糖の量でこの効果に違いが出るんでしょうかね?
飴にしても店によって直ぐに口から溶けてなくなるのと、かなり長持ちしてお得なのとある気がします」
エフゲルトがちょっと首を傾げながら言った。
「ふむ。
それこそ、迷宮産の蜂蜜でも使ってみたら更に効果が上がるかもだな。
ちょっと入手を探索者ギルドの方で依頼しておこう。
次はグミを作ってみようか」
ゼラチンは確か豚や鳥の脂か軟骨などから採れた気がするが、これも元の魔物が何かによって効果が違ったりするのだろうか?
まあ、取り敢えずは手元にあるゼラチンでグミを作って効果があるかを確認すればいいだろう。
飴って口の中にあるとついつい噛んでしまう気がする……




