1196.若葉入りポーション試作(5)
アーシャが帰り、夕食も食べた後に隆一は実験室に戻って継続的回復薬の試作に取り掛かった。
まずは、トレント苗の若葉だけを使って作ってみる。
薬草の方が圧倒的に入手が楽なので、出来れば薬草とトレント苗の若葉とを混ぜて作れる方が良いが、もしも若葉だけで作った薬の効果が大幅に効果が高い様だったらボス戦とか大量の回復を長時間必要な状況用に作るべきではある。
という事で、若葉を刻み、魔力水に投入し、ゆっくりと温度を上げつつ混ぜ、ビーカーの底に泡が生じてきたあたりで抽出スキルを使い、火を止めて魔力を流し込みながら混ぜてみた。
薬草で作る回復薬と同じ作り方をしてみたところ、出来上がったのは透き通った黄緑色な液体だった。
「鑑定」
『継続的回復薬《リジェネ薬》:服用した場合、回復効果が20分程度続く』
ちゃちゃっと探索者ギルドで作ったものよりも回復時間が長い。
とは言え、どの程度の治療効果があるのかも知りたいところだ。
更に集中して、もう一度鑑定する。
『継続的回復薬《リジェネ薬》タイプBQ52:BQE211(通称:トレント)#A3の薬効成分を魔力水に抽出した薬効系ポーション。服用した場合、軽度組織損傷に対して5%前後の回復効果が20分程度続く』
(軽度組織損傷ね。擦り傷や痣のことなのかな? 慢性胃炎や口内炎なんかはどんな扱いになるんだろう?
アーシャに連れてきてもらう被験者以外に、口内炎や慢性胃炎がある人間も見つけるようザファードにでも頼んでみるかな)
隆一はそんなことを考えながら鑑定結果と思い付きをメモしておく。
次は薬草と若葉を半々ぐらいで作ってみようと、素材を刻んで洗浄したビーカーに入れた魔力水へ投入し、加熱する。
ビーカーの底に泡が出てきた段階で抽出スキルを使うが……微妙に力の通りが先程より悪い感じがする。
もしかしたら薬草と若葉を最初に一緒に放り込んでいるのは好ましくないのかも知れない。
取り敢えずそのまま魔力を籠めて混ぜ、完成させるが多少色が濁った緑色の液体が出来上がった。
「鑑定」
『回復薬改(トレント若葉入り):薬物系ポーション。表面的な外傷に作用して治癒する。飲んだ場合は多少の継続的な治癒効果が10分程度続く』
探索者ギルドで作ったのと同じ結果になった。
あの時は特に濁りは気にならなかったが……昼食に気を取られていたせいで、気が付かなかったのだろうか?
集中してもう一度鑑定する。
『回復薬改(トレント若葉入り)タイプBMQ612:BMS145(通称:薬草)#A3とBQE211(通称:トレント)#A3を合わせて作成した薬物系ポーション。飲んだ場合に初期の回復効果に加え、軽度組織損傷に対して1%前後の回復効果が10分程度続く』
1%とは少ない。
5%ですら微妙な心境だったのに、1%が10分なんて、気休めの世界だろう。
ふと思い立ち、常備薬として持っている回復薬を小瓶に分け、それに最初に作った継続的回復薬《リジェネ薬》を混ぜてみた。
「鑑定」
『回復薬に継続的回復薬《リジェネ薬》を混ぜたもの:掛けた場合は継続的回復は殆どないが、内服した場合は継続的回復効果が15分程度続く』となった。
(考えてみたら、回復薬って飲んだらどうなるんだ?)
基本的に回復薬は外傷用なので傷口に注いで使う。
飲んで使うと聞いたことはないがそういう使い方は出来ないのだろうか?
手元にある回復薬の残りに集中する。
「鑑定」
『回復薬タイプBMS140:掛けると外傷を癒すのに使える。
飲んだ場合は口内や食道、胃の炎症等をある程度癒す。体力回復効果もあり』
どうやら回復薬は飲んでそのまま外傷を治すのには向いていないらしい。代わりに薬草から得た生体エネルギーっぽいモノが体力回復効果を齎してくれるようだが、胃に入った液体が足の傷を治すような働き方はしないようだ。
「こうなると、内服した際の治療効果を何とかして薬草で若葉の水増しに使えるよう工夫できないかが重要ってところかな?」
思いつく限りのことを試して、ダメだったら諦めて若葉だけで作ることになる。
そういえば、飴にした場合に効果を残せるかも調べないと。
飴って砂糖を加えて水分が無くなるまで加熱して作るみたいですね。
加熱しすぎたら薬効部分が減りそう……




