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実は召喚したくなかったって言われても困る  作者: 極楽とんぼ


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1189/1303

1189.16階の素材(5)

「見えん!」

 トレントの傍は小動物も寄ると餌食になってしまうせいか、草が食われずに沢山茂っていて苗があるのかどうか、見極められない。

 迷宮内にそんな小動物が居るのは見たことないが。実際にそんな小動物が居るのか、もしくは外の環境に準じているだけなのかは不明だが、兎に角エルダートレント(中)の根元は草だらけだった。

 ウロウロとトレントの蔓に襲われる範囲ギリギリをうろつきまわり、最終的に元の位置に戻ってきた隆一はグオ~!と苛立ちの声を上げながらエルダートレント(中)を睨みつけた。


「蔓だけ先に切り落としたらどうだ?

 暫くしたらまた生えてくるし、足元の根も襲ってくるがずっと遅いからちゃちゃっと下草を調べるぐらいは出来るだろう」

 隆一の探索を見守っていたデヴリンが、とうとう解決策を提案した。


「なるほど。

 その手があったか」

 隆一が頷き、魔力を練り始める。

 これかと思う枝に注意を払いながら攻撃範囲内に入り、擬態を解いた枝に向かって氷矢アイスアローを放つ。

 最初に目星をつけていた枝とは違ったがそこそこ位置が近かったので、狙いを多少修正する程度で済んだため蔓が隆一に届く前にザクっと良い感じに幹に近い位置で切り落とせた。


「うっし!」

 大分と実戦力がついたと嬉しくなった隆一は再度魔力を練り、もう一歩右に動く。

氷矢アイスアロー!」

 擬態を解いた枝に攻撃魔術を叩き込もうとしたが、外した。


「おっと」

 慌てて二歩ほど下がった隆一が躓きそうになったのをデヴリンが軽く腕をつかんで支える。


「ちなみに、この階層にイチゴ採取にくるような探索者だったら斬撃か矢でエルダートレント(中)の蔓を落としてさっさと根元の苗を採取できるのかな?」

 考えてみたら、この階層は食肉イチゴとエルダートレント(中)しか魔物は居ない。

 そう考えると15階の転移門を開いておけば、殆ど戦わないでも採取だけに来れるから戦闘に自信がない探索者が採取専門で食っていける可能性がある。


 そういう探索者が問題なくエルダートレント(中)の蔓を始末して苗を常時採取できるのだったら素材の入手費用もそこそこ抑えられると思うのだが。


「人によるかな?

 斥候役で弓が得意なタイプが小遣い稼ぎに来ているなら可能だが、怪我をした戦士や盾役タイプがリハビリが終わるまで来ているとなると微妙かもだな」

 ダルディールが答える。


「戦士だったら斬撃で蔓を切り落とせないのか?」

 盾役だったら微妙かも知れないが、戦士なら斬撃で何とかなりそうなものだが。


「怪我をして戦いに支障があるから休んでイチゴ狩りをやっているんだとしたら、斬撃も思うように放てないんじゃないか?

 第一、ガンガン斬撃を飛ばしてエルダートレント(中)の蔓を切り落とすのって誰にでも出来ることじゃないからな。

 下層上部程度の探索者だったらまだまだ筋肉だよりな戦士役も多いんだ」

 デヴリンが言った。


 下層まで来るようになった探索者ならデヴリンの劣化版と言った感じでかなりのことが出来ると思っていたのだが……どうやらそうでもないらしい。


「ふむ。

 まあ、どちらにせよあの苗がどの程度の効果があるかだな。それなりに効果があるならそれなりな探索者を雇えるだけの金を出す意義があるだろう。

 氷矢アイスアロー!」

 先ほど外した蔓が擬態状態に戻ったのを待って、攻撃を加える。


 今度は良い感じに枝が切り落とされ、落ちる最中に枝がふにゃりと柔らかい蔓に代わっていた。


 ついでに気になったので蔓も鑑定してみる。

 苗をゲットするために毎回切り落とすことになる可能性が高いのだ。何か効果があるなら持って帰って来て貰うべきだろう。

『BQE210(通称:エルダートレント(中))#D6:魔力を通すと強度・柔軟度の変わる蔓性木材』

「ふむ。

 この蔓って魔力を通すと柔軟さだけでなく強度も変わるみたいだが、何かをそれを利用する使用法ってあるのかな?」

 足元の近くに落ちた蔓を拾いながら隆一が尋ねる。


「さぁ?」

 デヴリンが首を傾げる。


「ロープとして使う地方もあると聞いたが、詳しいことは知らないな」

 ダルディールも首を横に振った。


「残り2本も切り落とし終わったらついでに持って帰って研究してみよう」

 魔力を練り、もう一本の切り落とした蔓を拾える位置へ隆一が動く。

氷矢アイスアロー!」

 動いた隆一を目指して後ろ側にあった蔓が擬態を解いて隆一に襲い掛かった。

 今度は一応外さずに切り落とせたが、ちょっと幹から離れた部分に当たったので蔓の長さが短い。


「う~ん、これって長さによって買取価格を変えないと、それなりに違いが出そうだな」

 2本の蔓を腰のベルトに引っかけ、最後の一本の蔓を探しながらゆっくりと隆一が足を進める。


「あ、蔓はそれで終わりっぽいぞ?

 別の探索者が通りすがりに切り落とした後でまだ戻ってないみたいだ」

 用心深く注意を払いながら足を進めていた隆一にデヴリンがちょっと申し訳なさそうに教えた。


 どうやら最後の用心は必要なかったらしい。


鑑定を使う場合はまだしも、それ以外の場合だと観察眼はまだまだな隆一ですw

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