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実は召喚したくなかったって言われても困る  作者: 極楽とんぼ


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1181/1303

1181.同一か否か(8)

氷槍アイスランス!}

 隆一の攻撃魔術がミノタウロス(小)の胸を貫く。

 しっかりそれで倒せたらしく、ミノタウロス(小)はそのままあっさり倒れこんだ。


「そういえば、レッドブルっていかにも火に対して耐性があって氷系の魔術に弱そうだけど、ミノタウロスにはそういう属性的な耐性や弱点みたいなものってあるのか?」

 今まで隆一が魔物を鑑定した際に弱点が何属性とか、何それ属性には耐性ありといったような情報を見た覚えはないが。


「いや?

 攻撃魔術としては火が追加的に燃焼ダメージが加えられたり、土だと質量でノックバック出来たり、氷で体の動きを阻害出来たりといった効果はあるが属性的な極端な弱点はそれこそエレメンタルスライムでもない限り、あまりないな。

 確かに火竜やレッドブルのような火を吐く系の魔物は火系の魔術に対する耐性が強いし、極寒地の魔物は氷系の魔術を受けても追加ダメージが無いが」

 ダルディールがあっさり隆一の質問に答えた。


 教わったことが無いと思ったら、やはり属性の弱点や特攻的な効果は殆どないらしい。

 あれはある意味ラノベで主人公の賢さやアドバンテージを強調するためのご都合主義な設定なのだろう。


 それはさておき。

「ミノタウロスの歯形は……意外と牙が大きいな」

 草食系という想定だが、人間も食うという話だから牙が必要なのだろうか。

 歯形と魔石を迷宮内の場所を記した紙を入れた袋に纏め、素材を飛行型運搬具(リヤカー)に積み込む。


「もう一体ミノタウロスを倒させてくれ。

 考えてみたらミノタウロスの個体をそれ程調べていないから、同じような結果が出た場合にミノタウロスだと皆そんな感じなのか、ちゃんと本来なら個体差があるのかを確認しておきたい」

 そう考えるとレッドブルも複数倒しておく方が良さそうだ。


 ◆◆◆◆


「なんかこう、歯形と魔石の為だけに殺されるコボルトがちょっと哀れになってきたな……」

 12階でミノタウロス(小)とレッドブルを2体ずつ倒して13階に下がり、コボルトの群れを一つ全滅させた隆一はちょっと溜息を吐きながら歯形と魔石をペアにして袋に詰めた。


「コボルトの素材はあまり使い道がないからなぁ。

 まあ、隆一の基礎能力値を上げるための犠牲だと思うしかないな!」

 にっかり笑いながらデヴリンが応じる。


『何をいまさら』と言わないだけ、親切と言えるかもしれない。

 まあ、魔物とは言え実験の為に虐殺するのに良心の咎めを感じる隆一のスタンスに共感できないだけなのだろうが。


 というか、ついこないだまでコボルトを繰り返し虐殺していたのだ。

 実験が終わりに近づいてきて隆一も知的好奇心が落ち着いてきたにつれてちょっと日本的考え方が戻ってきたのかもしれない。


「まあ、どうせ全部コピーなのだろう?

 死んだところでまた複製されるのだからあまり気にしなくても良いんじゃないか?

 それよりは、もう一つの群れを倒してさっさと隆一の確かめたい仮説の検証をしてしまおう」

 ダルディールがあっさり隆一の感傷を流してもう一つの群れの方を指しながら言った。


「そうだな。

 ぐだぐだ言っていてもしょうがないし、さっさと終わらせてメロンでも集めるか」

 あっさり隆一も頷き、集めた歯形と魔石を飛行型運搬具(リヤカー)に放り込んで次の群れへと向かった。


氷矢アイスアロー

 氷矢アイスアロー

 氷矢アイスアロー!」

 二度ほどクロスボウから足止め用魔道具を放ちつつも、慣れた作業で隆一はあっさり二つ目のコボルトの群れを全滅させた。


「うん、魔道具の確認が終わったらもっと下に進んで行けそうだな。

 俺も強くなったよな~」

 思わず自画自賛した隆一にデヴリンが笑いながら応じる。

「はいはい、強くなったね。

 まあ、確かに大分と慣れてきたが、さっさと歯形を取ろうぜ」


 どうやらさっさと終わらせてメロンを集めたいらしい。

 いや、デヴリンだったら桃かも知れない。どうも妹さんが桃が大好物だという話だった。

 以前は病気のせいで迷宮産の桃を食べることも命にかかわると禁じられていたのだが、完治した今となっては好きなだけ果物も食べられると本人もそれこそ朝ごはんの代わりにフルーツを山盛りで食べるぐらい人生を謳歌しているらしい。


 お陰でデヴリンの実家にある果物の在庫が凄い早さで減るそうだが。


「お!

 同じ歯形発見」

 2体目のコボルトの死骸の歯形が見覚えがある形だったのを確認して、隆一は急いで魔石を抉りだし、水を出してそれを洗う。


「さて。

 魔力線は……やはり同じになるな」

 試作品で出力させた魔力を、前の群れで倒した同じプロトタイプから得たコボルトの魔石と比べたら、完璧に一致している。


「こっちだとやはり違いがあるか?」

 別のコボルトから取った魔石をデヴリンが渡してきたので、それも魔力認証の試作品に乗せて魔力線を出力させる。


「ああ。

 やはりちゃんとコボルトの魔力波動にも個体差はあり、同一プロトタイプから複製された個体だと魔力も同じなんだな」

 本当に迷宮内の同一個体は同じらしい。

 それこそ指紋や虹彩も同じ可能性が高いが……別にそこまで調べる必要はないだろう。


「よし! あとは果物を採取して、12階でミノタウロス(小)とレッドブルを倒したら終わりだ!」

 やっと一連の実験の終わりが見えてきた。


 コボルトたちの虐殺の日々もこれで終わりになりそうである。


『やっと平和な日が戻ってくる!?』 byコボルト

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>デヴリンの実家にある果物の在庫が凄い早さで減るそう いつの間にか妹の体形が渡辺直美に!?
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