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実は召喚したくなかったって言われても困る  作者: 極楽とんぼ


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1179/1303

1179.同一か否か(6)

「スライムも冷凍すると冷凍肉と同じ魔力線になるな」

 冷凍庫から取り出したスライム片が入ったシャーレを試作機の上にのせて魔力線を出力した結果を見た隆一が頷いた。


「ではレッドブルと突進豚の魔力がほぼ同じ波動だったのは冷凍庫に入れたからなんですね」

 エフゲルトがテスト結果を記録しながら確認する。


「冷やす際に使う魔力が内部に漏れているんだろうなぁ。

 多分冷やすのに関係ないと思われる魔力の漏洩だから、それがゼロになるように出来たら冷凍庫の魔力消費効率が上がるかも?」

 元々隆一がこちらに来た段階で既に一般的に普及していた冷凍庫も冷蔵庫も自作する必要を感じていなかったので特に調べていなかったが、魔力が上書きされるほど漏れているのだったら、もう少し魔道具の構造や仕組みを見直してもいいかも知れない。


 ……考えてみたら、魔力によって味に違いがあったりするのだろうか?

 穴兎の魔力は突進豚よりも美味しく感じるとか、魔力がたっぷり含まれた肉の方が魔力が抜けた肉よりも美味しいとか。


 迷宮外にいる野良の魔物は魔力を豊富に含む餌を好むという話だから、少なくとも魔物にとっては魔力の密度は美味しさに繋がるようだが、人間にとっても何か味覚的影響があるのだろうか?


 下層の魔物の肉の方が上層のよりも美味しいと言われるし。

 まあ、単に高いから高級品扱いされていて、そのイメージで美味しく感じているだけという可能性もゼロではないが、実際に濃厚な魔力が籠っている方が人間にとっても美味しいと感じられる可能性もそれなりに高そうだ。


「魔物の素材から魔力を抜くとか込めるとかいう料理方法ってあるのかな?」

 ふとエフゲルトに尋ねる。

 確か魔力循環機能異常を伴う疾患の患者は魔力の濃い迷宮産の果物とかを食べない方がいいという話を聞いた気がするから、だとしたら魔力を抜く調理法があっても不思議はない気もする。ならば反対に美味しくする為に足すのだってありなのではないだろうか。


「魔力が籠っている方が肉が劣化しにくいって言われますから、傍に魔石を置いて魔力濃度を濃くすることはあっても、抜こうとするのはあまり聞かないですね。

 何か特殊な病気で迷宮産の食材を食べられない人間は外の小麦とか家畜の肉や魚を食べるとは聞きますが」

 エフゲルトがちょっと首を傾げながら言った。


「ふむ。

 魔力が濃い方が美味しいかもと言うのだったら冷凍庫の食材へ魔力が漏れないようにすると味が悪くなるかもだな。

 取り敢えず、穴兎の魔力を注いだら美味しくなるかだけ、実験してみるか」

 魔力が籠っている方が食材の劣化が遅れるというのだったら、冷凍庫の肉に魔力が漏れ込まないようにするのは味を損ねるかもしれない。

 それだったら、美味しい穴兎の魔力を使ったら更に美味しくなるのかだけ確認するので良いとしよう。


 だがそれよりも先に。まずは実験室の引き出しの中から穴兎の魔石を探し出し、それとレッドブル及び突進豚の魔石で魔力線を出力してみた。

「大分と違いますね」

 ちょっとほっとしたようにエフゲルトがコメントした。

 魔物の肉に魔力線が全部同じというのはちょっと納得がいっていなかったようだ。


「魔石の魔力が同じ種族でもちゃんと個体差があるのかも、確認しよう」

 考えてみたら、ここで違いを認識できなかったら肉に残っている魔力をいくら調べようとあまり意味がない。


 という事で穴兎、各種魔物の魔石を4つずつ取り出して魔力認証の試作品で調べてみた。


「そっくりなのと全然違うのとありますね~」

 穴兎は4つとも全部違っていたが、レッドブルは3つ同じ線のがあり、突進豚も2つほど同じものだった。


「マジかぁ。

 いや、考えてみたらレッドブルと突進豚は最近は基本的に同じところで倒しているから同じ個体がリポップしているのを倒しているだけなのかも?

 穴兎は巣の中に大量にいるのを適当に倒しているからリポップしたとしても違う個体を倒している確率が高いんだろう」

 コボルトの群れで襲って来たのを倒したのでリポップした場所でプロトタイプが決まるのか確認していないが、考えてみたら同じ場所でリポップする個体は同じプロトタイプなのだろうか?


 取り敢えず、魔石の魔力にも個体差があるのだ。

 次に迷宮に行く際には同じ場所をテリトリーにしている魔物を時間差で倒してリポップした個体が前のそれと同じかを確認しておこう。




今度はレッドブルとかミノタウロスみたいな固定位置で出てくる魔物が虐殺?!

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― 新着の感想 ―
ある時点で存在する個体は全てユニークなのか クローンもいるのかとか 段々と大勢に影響ないことが気になってきました
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