1175.同一か否か(2)
「う~ん、まずは魔力を認識出来ているかを確認するのが先か」
結局、修正版魔力認証の魔法陣が機能しているかを確認するのに新鮮な血を使うのでは意味がない可能性が高いとなり、髪の毛で試そうとしたのだが、『髪の毛に魔力がたまる』というラノベにあった設定とは反し、実はあまり魔力が残っていないのか魔法陣に適当な抜け毛を載せてみても全く何の反応を示さなかった。
床に落ちていた抜け毛を使ったのが悪かったかと隆一が自分の毛を一本引き抜いて試してもみたのだが、それでもダメ。
血だとそれなりに数適で反応は示したのだが、髪の毛は血程魔力が籠っていないのか、隆一の10センチ程度な髪の毛では微妙に反応したかも??という程度で、認証に使えるレベルでは到底なかった。
これでは生きた素体でないから駄目だったのか、毛に籠っている魔力が少なすぎてダメなのかも分からない。
と言うか、考えてみたら髪の毛って毛根以外の部分も体に繋がっている間は生きているのだろうか?
痛覚は無いのだが。
それに考えてみたら調べる素材のサイズが大きいとは限らない。
爪や牙や内臓、目玉とかだったらサイズに限りがあるのだ。
大きくなければダメと言うのではテスト対象に出来ない可能性もある。
可能ならば魔石や利用者の魔力を使ってテスト対象な素材の魔力波動を拡大してそれをテストできるといい。
が、外部魔力を使ってテスト素材の魔力を拡大させたらテスト素材の魔力が打ち消されてしまう可能性も高そうだ。そうなると微細な反応を読み取ってそれを拡大する路線の方が現実的か。
取り敢えず、魔力認証を読み取った結果を魔石からの魔力で拡大させて人間の目で認識できるレベルにしたい。
いや、人間の目で認識できなくても、同一か否かを調べる比較対象の結果と同じかを比べられればいいのだ。
そのためには、まずは結果を読み取って記憶させる必要がある。
「魔力認証の魔法陣に承認元の魔力を最初に登録するんだから、登録させる部分の魔法陣を使えばそっちはそれでいい筈」
そう呟きながら隆一は魔法陣を更に調べ始めた。
「……こっちも流し込む感じなんだな」
暫く探していて見つけた魔法陣を見て、思わず隆一は唸ってしまった。
元々、生きている人間の魔力が認証対象なのだ。
最初の魔力登録の段階で生きた人間が必要であり、その人間は当然意識があるのだから自力で魔力を流し込む形になる。
なので登録する魔力の認識もかなり大雑把というか、強めな魔力を流し込まないと登録できない。
が。
考えてみたら、最初の魔力も生きていない素材の微細な魔力で、テストする対象も同じようなモノになるのだ。
外部魔力で認識した魔力を拡大させた際にちょっとした癖がつくにしても、同じ変動になる筈だろう。
微細な魔力を無理やり外部魔力で拡大させたら詳細が失われて誤認証も起きそうのが問題だが。
「取り敢えずは実験だな!」
髪の毛は諦めて、取り敢えずは比較的新鮮なレッドブルの肉を冷凍庫から取り出し、魔力認証の登録用魔法陣に乗せて起動させてみる。
「一応反応はある……かな?」
何か反応しているので登録する。
ついでにもう一つ取り出した突進豚の肉も同じように登録用魔法陣に乗せて起動させてみた。
ちゃんと違いが出てくるかを調べる必要がある。
レッドブルの肉だったら同じ個体の違う部位の肉である可能性もあるので、絶対に違う突進豚の肉を使ってみたのだが……。
「同じに見えますね」
後ろから見ていたエフゲルトが首を傾げながら言う。
今度は突進豚を被認証者側として魔力認証の魔法陣に乗せて起動させたら、『同一』という認証結果になってしまった。
「冷凍保存した肉の魔力量が少なすぎて違いが誤差扱いになっているのか、冷凍用魔道具の魔力で素材の魔力が上書きされているのか。
もしくは魔物の魔力は人間と違いすぎて魔法陣的には同じ扱いになっているのか。
やはりまずは新鮮な魔物の魔力から実験する必要があるかな?」
今日は迷宮に行く予定はなかったのだが。
実験用に培養しているスライムの核で何とかならないか、実験してみるか。
あれも隆一の魔力で育てて分裂しているので、全部同じ個体扱いになる可能性が高そうだが、少なくともスライムと突進豚の肉が同じだと認証されなければまだ少しは前進する……かも?
かなりダメダメなスタートw




