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実は召喚したくなかったって言われても困る  作者: 極楽とんぼ


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1162/1303

1162.ファルダミノ迷宮(6)

「昼前に着けたな」

 周囲を見回して、先行していた騎士パーティが確保しているはずの休憩スペースへ向かいながらデヴリンが大きく息を吐いた。


 7階ではあの後レッサーコカトリスをもう一体倒し、8階で5回ほど戦闘があった。

 戦闘を受け持つ騎士を置き去りにしてそのまま進み、次の戦闘でまた別の騎士を置き去りにし、という感じに進んでいたから、最終的には隆一も戦うかとちょっと期待していたのだが、あっさりデヴリンの斬撃とフリオスの魔術で魔物が殲滅されてしまい、結局9階まで下りてくる間、隆一は一度も戦わなかった。


 時間があれば足止め用魔道具を使ってレッサーコカトリスを拘束した後、生きたまま下肢を切り取って爪と毒腺を確保したかったのだが。

 まあ、生きたまま解剖というのはちょっと残酷なので、毒腺を確保したらすぐさま首を刎ねて、嘴の毒腺も即座に確保するつもりではあったのだが……直ぐに終わると言ったものの、ちょっと周囲に引かれてしまったので諦めた隆一だった。


 一応2体目のレッサーコカトリスの遺骸も確保し、切断した毒腺を魔石と一緒にしておくことで毒素の弱体化が抑えられるか確認しているところだ。


「この階層はコボルトと火吹き鳥だっけ?

 火吹き鳥って……これか」

 どんな魔物なのかと聞こうとしたら、近くでリポップしたので思わず即座に対処しようとしたデヴリンを身振りで止め、クロスボウで足止め用ボーラを発射し、倒れたところへ近づく。


「火を吹くぞ」

 デヴリンが注意喚起する。


 ガツンと鞘に入れたままのショートソードで頭を殴ってみたら、くたりと大ぶりな七面鳥のような鳥が動きを止めた。

 上手いこと、殺さずに無力化できたっぽい。


 レッドブルは体にある魔法陣で水を酸素と水素に分解して火を吐くが、火吹き鳥はどうするのか。

 呑気に調べる暇はないのだが、隆一がファルダミノ迷宮に来れる機会が限りなく少ないことを考えると、ここで調べなければフレッシュな検体で実験できる機会は二度とないかも知れない。


「悪いが、先に昼食を食べててくれ」

 フリオスに声をかけ、隆一はそっと回復術を掛けて頭の向きを固定した火吹き鳥を覚醒させる。


「グワ~~!!!」

 意識が覚めたものの動けないことに気づいた火吹き鳥が憤怒の鳴き声を上げ、口から炎を吐いた。


 レッドブルのような火炎放射器的な炎とは違い、こちらは火の塊が口から飛び出し、地面に落ちた後も暫く燃え続けていた。

 どうやら可燃性の油か何かを吐き出して火をつけているらしい。


「もう一度吐いてくれ」

 固定した火吹き鳥の肩(羽の付け根?)あたりをグラグラとゆすり火吹き鳥を怒らせると、隆一の方へ向こうとあがきながらぺっぺと火のついた油を吐き出しまくる。


 魔力視でじっくり視ていたら、どうやら口にある小さな魔法陣で着火しているようだ。

 喉か食道近くのどこかに可燃性油を生成して吐き出す仕組みがあり、それを着火して相手に吹き付けているようだ。


「ふむ。

 ありがとう」

 油を全部吐き出されてしまう前にどこで生成されているのか確認したいので、サクッと心臓にショートソードを突き刺してとどめを刺す。


 実は回復士は弱っている相手の心臓を止めることだって可能ではあるのだが、相手の魔力が防御機能として邪魔をするため、よほど弱らせていない限り魔物を回復術で殺すことはできない。

 少なくとも隆一の腕と魔力では。


 なので物理的に心臓を止める方が早いのだ。


 足止め用魔道具から魔力を抜いて邪魔な粘着網を消し、早速火吹き鳥の解体を始める。


 まずは嘴を大きく開いて少量の魔力を流しながら魔力視で着火用魔法陣を探す。

 どうやら舌ではなく上顎にあるようだ。

 油を吐く構造が分からなくなってはもったいないので、取り敢えず下顎(嘴?)を切り分け、解体用ナイフで用心深く喉を縦に切り裂いていく。

 着火さえしなければ油が飛び出しても大丈夫なはず。

 解体用の手袋と、ゴーグルを持ってきたのは正解だった。可燃性で粘着度の高い油が顔についたりしたらかなり危険だ。


 今まで見た限りではコボルトの唾液や血に毒や菌がついていなかったが、違う迷宮だったらコボルトの状態が微妙に違う可能性だって絶対にゼロとは言えない。

 うっかり隆一が死んでも国にとっては大問題だし、そうでなくても歯型取りを頼む騎士たちが変な菌に感染しても困るので人数分解体用の道具は揃えてきた。


 マスクとゴーグルをつけて解体するというのはこちらの騎士たちにとってはかなり不思議な経験なようだったが、顔に変な液体がかかってうっかり飲みこんだりしたら嫌だろうというダルディールの言葉に頷いていた。


 用心深く解体したところ、喉の奥に油が溜まっている器官があった。

 魔力を流しても特に反応は無かったので、どうやらこの油は普通に体で生成しているだけなようだ。

 

(発火用の魔方陣を何かに使えないか、帰ったら実験してみるか)

とは言え、既にライターもどきな魔道具は存在するし、大抵の人間なら火花程度の炎なら魔力で出せるのであまり利用価値はないかもだが。

興味深い構造は見つかりましたが利用価値はそれ程高くないかも?

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― 新着の感想 ―
>「ふむ。ありがとう」 >サクッと心臓にショートソードを突き刺してとどめを刺す ここだけ読んだらマッドアルケミストそのものにしか思えませんね
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