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実は召喚したくなかったって言われても困る  作者: 極楽とんぼ


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1159/1303

1159.ファルダミノ迷宮(3)

「あまり高額なオマケを渡しちゃいけないって話だったから、フリーズドライの新しい試作品でも持ってこようかと思ったんだが、あれって食べるのにそれなりに水が必要だろう?

 飛行機で持ってくるのにちょっと問題がありそうだったから今回もこれで負けてくれ」

 ファルダミノの城壁外の野営地に着いた隆一は、フリオスに言い訳をしながら穴兎の燻製肉を取り出していくつかフリオスに差し出した。


 一応隆一が魔術で空気中の水分を蒸留する事を意識して出した水だったら魔術で出された水でも腹を下さずに食用にもできるのだが、ミネラル皆無な純粋な水なせいかいまいち美味しくないし、下手に『魔術で出した水でも飲める』と騎士が誤認したら問題かもしれない。なので結局もっとお手軽に持ってこれて食べられる燻製肉を配ることにしたのだ。


「まあ、今回で遠出が終わりなのですからこっそり貰う分には良いとしましょうか」

 ちょっと溜息を吐きながらフリオスが応じ、穴兎の燻製肉を受け取った。


 他の騎士たちにも燻製肉を配りながら、隆一はファルダミノ迷宮の魔物について聞いてまわった。

「へぇぇ、鳥系の魔物がいるんだ?

 そういえば、王都迷宮ではそっちは見なかったな」


「ちょっとした特産があった方がいいだろうって話で肉と卵が食える鳥系の魔物を選んだらしいが、迷宮の魔物は卵を産まないからな。

 時折見かけるんだがどれだけ古いか不明だから、鑑定なしには食えなくてあまり人気はない」

 キュルトが教えてくれた。


「鳥っていうと、ダチョウみたいにキックの威力がある大きな奴なのか?

 それとも鷲とか鷹みたいのとか、じゃなきゃもっと下層部の方だったらグリフォンとか?」

 ちょっと想像がつかなくて隆一が色々と尋ねてみる。


「ダチョウ?っぽく歩き回って蹴る魔物もいるし、それが下の方に行くと火を噴んですよ。

 空を飛ぶ飛空系魔物を増やすと迷宮の天井を高くしなくちゃならない上に討伐の難易度が上がるからか、飛ぶのは下層の方のグリフォン以外はほぼいないかな?

 代わりに中層でレッサーコカトリスと下層で普通のコカトリスがいるから、毒消しや石化解除薬は不可欠ですね~」

 先ほど隆一から燻製肉を受け取った若い男が情報を提供した。


「おお~。

 コカトリスって本当に石化するんだ?

 それって目があったら石化するのか、それとも何か口や爪から流し込む毒?」

 隆一が興味津々に尋ねた。


 コカトリスと言えばラノベでは定番な魔物だ。


 美味しいとか毒があるとか、色々なバージョンがあるが、こちらの世界のコカトリスはどうなのだろうか。


「中層のレッサーコカトリスは爪でひっかかれたらちょっと麻痺する程度の毒で、がっつり噛まれて毒を食らったら解毒しなければ徐々に石化するな。

 下層のコカトリスは爪や口からの毒に加えて魔術としての石化を使うから、長時間睨まれていると魔力耐性が低い場合は石化し始めることがある」

 キュルトが説明した。


「へぇぇ。

 ちなみに、その毒としての石化と、魔術としての石化で解除用の薬とか術は違うのか?」

 一応解毒(キュアポイズン)は習得しているが、あれは石化には効果がいまいちだと言われた。


 王都にはコカトリスの毒(やコカトリス本体)が手近な所になかったので実施実験ができなかったが。


「ファルダミノ迷宮でとれる石化解除薬用の薬草で作ったポーションなら品質が良ければどちらにも効くが、ほかの迷宮で入手した毒消し草で作った解毒剤では傷を負ったばかりのレッサーコカトリスのひっかき傷からの毒しか解除は出来ない」

 ダルディールが言った。


「う~ん、解毒キュアポイズンがどの程度効くのか試したいんだが、適当に上の層の魔物を捕まえてコカトリスがいる階まで引きずって行って石化させて、魔術でそれを解除できるか実験するのって可能かな?」

 隆一が尋ねる。


「レッサーコカトリスの居る階に一角兎を持って降りるぐらいだったら実験も多少ならば可能だが、コカトリスの前に実験のために無防備に立つのは許容できないぞ」

 デヴリンが口をはさんだ。

 確かに、一角兎を実験体としてコカトリスに差し出しても、一角兎ではなく自分を狙ってくる可能性は十分にあるのだ。


 解除できないかも知れない石化の術をかけさせるのは、ダメそうだ。


「そういえば、石化の術って体が完全に石化してからでも解除できるのか?」

 ラノベなんかだと石化して何年も経った石像を浄化とか解除とか解毒とかで治療して被害者が年を取らずに若いままの姿で復帰できるという話も時々あったが。


 心臓や肺まで石化したらそれで死ぬという設定も多かったが。

 現実的な話として、一瞬で体全部が石化するならまだしも、時間がかかるのだったら心臓や肺の機能が石化で止まった時点で脳への酸素の供給が足りなくなって人間なら死ぬか、酸素欠乏症でどうしようもないダメージを負いそうだ。


「石化の術も毒も、別に体が石になる訳ではなく、触った時に石のように固くなるって症状が出る麻痺に近い。

 脳や内臓にその麻痺が届いた時点で死ぬから、全身が石化した患者はエリクサーがあっても完全な治療は無理だと言われている」

 ダルディールが言った。


 どうやらコカトリスの石化というのは元の人間に復元可能な石像が出来上がるような術や毒ではないらしい。

 ちょっとがっかりした隆一だった。



石化で時の経過を無視できるなら、究極の延命手段としてある程度需要がありそうw

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― 新着の感想 ―
毒も少量なら薬になると言いますし 研究したら良薬が出来るかも
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