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実は召喚したくなかったって言われても困る  作者: 極楽とんぼ


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1157/1303

1157.ファルダミノ迷宮

「ファルダミノは中型迷宮でヴァーレより小さい。

 階層も全部で20階で各階層もヴァーレより一回り小さいが、中身はもっと多様性があって普通の迷宮に近い形になっている」

 騎士団に来た隆一にダルディールが解説を始めた。


「これが俺が覚えている範囲の9階までの大体の地図と魔物の分布図だ」

 キュルトがバサバサっと紙を机の上に出した。


「9階にコボルトがいるのか?」

 一枚ずつかなり大雑把な図をめくりながら隆一が尋ねる。


「ああ。

 ホブゴブリンはいないが、代わりに草原狼の群れが居るし、王都迷宮と違って魔物と会わないルートというのが無いから中々面倒なんだよ、あそこは」

 キュルトが言った。


 王都迷宮とヴァーレ迷宮は魔物を避けたい場合は避けて進み、狙った階層の魔物を選んで戦える構造になっている。

 どうやらそこまで広さに余裕がなかったファルダミノはそんな親切設計ではないらしい。


「ヴァーレはある意味問題外だが、王都迷宮も広いから、いちいち目的の場所へ向かう間に戦わなくて済むようにちゃんとマッピングしておけば魔物のテリトリーの隙間を進むルートが中層まではあるんだが、あれは大きい上に攻略されて至れり尽くせりに設計しなおした迷宮だから可能なんだ。

 ファルダミノはそこまで広さに余裕がないからそんな親切設計になっていないせいで、王都迷宮から行った奴が撤退に失敗することもあるんだが……まあそれでもペルワッツよりはマシだ。だから国外に出ない探索者だったらあそこを挑戦する前にファルダミノに行くことも多い」

 デヴリンが付け加える。


 なるほど、親切設計すぎる王都迷宮は探索者に甘いのか。

「ヴァーレじゃあ半人前以下だから王都迷宮で鍛え、更にファルダミノで苦労した後にペルワッツに行く流れなんだな」

 中々動きが多いようだ。


「まあ、そのぐらいの方がどこの迷宮にも探索者が行くようになっていいだろ?

 王都だけに人が集まるのも国の運営や安全保障的に良く無いし、迷宮が資源として活用されるこの国では各地の迷宮に探索者が程よく散らばって居ないと街での生活に差しつかえる」

 デヴリンが言った。


 なるほど。

 ラノベなどでは迷宮がある事で魔物の素材が特産物的に経済を活性化させて街が栄えると言う設定が多いが、ヴァサール王国では食料や建設用資材なども迷宮からゲットしている部分が多いので、探索者が居なければ街の生活そのものが成り立たないのだろう。


「ちなみに、大陸の中央側の古くから人が住んでいた地域では攻略されてちゃんとラインアップを調整した迷宮の方が珍しいぐらいだと聞いたが、あちらは普通に畑や放牧地で食料を育てたり、森や鉱山から必要な資材を得る形なのか?」

 隆一が尋ねた。


「鉱石や木材は採って使ったら無くなるのは困るから、そう言うのが出る迷宮は大貴族や国が確保して公式もしくは非公式に管理している所が多いですね。

 食料に関しては普通に農業でやっている地域が多いから、天候や大繁殖スタンピードで収穫に大きな増減があると民が餓死したり、街のスラムに住み着く様になるんですよ」

 部屋に入って来たフリオスが丁度隆一の質問を聞いたのか、答えを教えてくれた。


「なんか、そう考えると軍事国家になって他国を攻めるよりも迷宮を攻略してラインアップを調整する方が国を富ませる事が出来そうなんじゃないか?」

 と言うか、戦争は略奪して終わりにするならまだしも、占領して統治するつもりだったら搾取できる富には限りがあるのだから、収支がマイナスな気がする。

 やり過ぎると抵抗勢力がいつまでも独立運動を続けてそれに軍事力を割かねばならないし、緩くやるなら利幅は小さくなるのだ。

 戦勝国の貴族になれる一握りはウハウハだろうが、国全体としてはプラスなのか怪しい。


 それとも軍事国家は余程地理的条件が悪い場所にあったのだろうか?

 他国の歴史や地理や経済に関してはさらっとしか教わらなかったのだが、そのうち何か本でも読んだら参考になるかも知れない。


 とは言え、別にどこかの地域が貧しいから他の国へ侵略して肥大していくのを是認出来る訳ではないのだから、軍事化へ傾倒した理由が分かったところで何かが変わる訳ではないのだが。


「そうですねぇ。

 大繁殖スタンピード防止の間引きならまだしも、ダンジョンマスターを倒すレベルの攻略は少数精鋭じゃないと難しいので、残念ながら軍の得意とする領域では無いのですよ」

 フリオスがため息を吐きながら言った。


 今となっては軍事国家の領土内にある迷宮攻略を助ける様な魔道具を作って提供しても、他国への侵略を思い止まって自国を自力で富ませる方向に動くか、迷宮で得た素材を使ってさらに侵略行為を加速化させるか分からない。そう考えると軍事国家の迷宮攻略を助けようとするのも危険すぎる。


 隆一自身も、自分が開発した便利道具が他国に広まるにしても、軍事国家へ伝わるのは遅ければ遅いほど良いと思っているのだし。


 中々難しい。


一度安易な方向に転がり出した岩は、他の土や岩を巻き込んで土砂崩れになって谷底に落ちるまで止まらない……かも?

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― 新着の感想 ―
>一度安易な方向に転がり出した岩 まさにロシアそのものですね
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