1147.次は(3)
「猫のおやつに関しては何かフィードバックを貰っているのか?」
次の迷宮探索の話を騎士団で終え、家に帰った隆一はまず実験室に顔を出してエフゲルトに尋ねた。
「毎日各協力者の家に顔を出して前日のおやつに対する反応を聞き取り調査して来ていたのが、こちらになります」
オルベンとデリタフ、カッシュ夫人と夫人の友人であるキューラ嬢とやらが今回のチ〇ールもどきの試食モニターとして協力してくれているのだが、エフゲルトが提出した資料は4つに分けられていた。
ちなみにキューラ嬢は未婚の貴族に連なる女性らしく、隆一のバーベキューには来ていなかった。
本人的には貴族ではなく平民として生きていくつもりらしく、カッシュ夫人の屋敷の隣の比較的小さな(ここ等辺ではであって、日本でだったら白金辺りの平均的豪邸サイズはある)家に住んでいる。
が、それでも独身男性の家に遊びに行くのは変な感じに外堀を埋められて婚姻を強要される危険があると危惧したらしい。
猫好きとの話で、猫を3匹も飼っているとカッシュ夫人に聞いたので、隆一は直接コンタクトしないでカッシュ夫人とエフゲルト経由で協力をして貰っている。
普通の事務員ならまだしも、ここ等辺のそれなりに豊かな家に暮らせる生活水準を平民になるつもりの貴族出身の女性の場合どうやって保つのか、密かにキューラ嬢の収入源に興味のあった隆一だが、流石にそこら辺を聞くのは失礼だろうと口には出していない。
「ふむ。
どれもそれなりに好まれているようだな」
ぱらぱらとエフゲルトのまとめた報告書を見ながら隆一がコメントする。
「この場合、どれを売り出すことにするんですか?」
エフゲルトが尋ねる。
「どれと決める必要はないだろう?
何種類かある方が、飼い主に『猫が飽きない様に何種類か交替で出すと良いですよ』と勧めやすい」
なんと言っても日本ではそれこそ壁一面と言っていい程のセレクションが開発・販売されていたのだ。
チ〇ールのxx味が特に猫に好かれているとか、嫌われやすいという話が全くなかったことを考えると、どれもそれなりに好かれるのだろう。
アリスナに聞いたところだと、人間と違って猫は毎日同じ食事を出しても嫌がる様子は特にないらしいので、実際の所何種類ものセレクションは本当は必要ないだろう。
だが、飼い主は人間だ。
猫と会話による意思疎通が出来ない限り、自分だったら毎日同じ食事だったら飽きるのだから、猫も飽きるに違いないと思って色々と味にバラエティがある方が良いと考える可能性は高い。
第一、沢山種類を作ってガンガン売りまくった方が、食べきれなくて余った際に知り合いの猫の飼い主にお裾分けすることで購入層が広がるかも知れないのだし。
特に嫌われるものが無かったという結果が分かっただけで、十分だ。
「ちなみに食料とかペットの餌系の商品って特許申請をするシステムはあるのか?」
売り出しへ動こうとして、ふと隆一は肝心な点に関して確認しておかなかったことに気付いた。
「さあ?
料理は料理長が秘密にして、腕を認めた弟子にだけこっそり教えるんだと思いますけど……詳しい事は知りません」
エフゲルトが答えた。
と言うか、どう考えても下町だったらそんな食料関係に特許を申請するような話はなさそうだ。
「ダーシュに尋ねるか。
試作品に関してしっかり報告を集めておいてくれて、ありがとう。
本格的に売り出しが始まるまではこのまま試食を続ける感じでいくから、よろしく頼む」
隆一の言葉にエフゲルトが首を傾げた。
「猫の嗜好を確認するのは十分出来ていませんか?」
「食材に関する特許権が確立していないかも知れないなら、味と触感と大体の中身が分かっているなら手に入らなければ自分で作らせようと考える人間が出て来ても不思議はないだろう?
手軽に購入できるようになるまではこちらから無料で提供することで勝手に競合者になるのを防げる可能性が高い」
なんと言っても隆一としては自分が頼む工房がぽしゃって潰れてしまっては困るのだ。
今後も手軽の猫たちのおやつを購入できるように、製造を任せる工房がしっかり稼げるようにしておきたい。
食品関係の特許ってペットフードにもあるんですかね?
名前は登録しているんだと思いますが




