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実は召喚したくなかったって言われても困る  作者: 極楽とんぼ


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1145/1303

1145.次は

ヴァーレでの20階までの突貫探索を終え、朝食後に野営地を出て王都に戻った隆一達は昼前には騎士団の拠点に着いていた。


「取り敢えず、明日一日は集めた歯形の研究をさせてくれ。

で、明後日はここで次に行く迷宮に関して話し合いたい」

隆一がフリオスとデヴリンに告げる。

ダルディールも傍に居るが、口を挟む気はなさそうだ。


「そんなにすぐに出るのか?

もうちょっとじっくり比較研究するとか、しなくて良いのか?」

デヴリンがちょっと意外そうに尋ねる。


「まあ、詳細を調べようと思ったらきりが無いからな。

今回の歯形実験に関してはどの程度個体のプロトタイプが各迷宮に存在するのかと、迷宮間のプロトタイプ共有の有無を確認するのが目的ってことで、歯形を見比べるだけだから1日で大体終わるだろう。

一応騎士たちに歯形取りの技術を学んでもらったから残りの迷宮を全て彼らに代わりに行って貰うのも可能だが、ペルワッツはまだしも、せめてあともう一か所位は自分で行きたいから、そこら辺の相談をしよう」

歯形を集めた箱を入れたリュックを揺すりながら隆一が説明する。


実は大体どれが同じでどれが違うかと言ったような見極めは既に昨晩のうちにしてある。

記憶に基づく分析なので、家に帰って記憶違いが無いかを確認すれば良いだけなので本当はこれから帰ってやったら今晩中に終わっているだろう。


とは言え、流石に家族とかが居るだろう相手を連続で連れ回すのも申し訳ないから、1日猶予を取って明後日と提案したのだ。


「あと一か所で我慢して頂けるなら、有難いですね。

では明後日の朝にこちらでよろしいですか?」

あっさりフリオスが同意した。


隆一の傍にいたフリオスは、既に隆一が大体歯形取得の結果の分析が終わっていることに気付いているのだろう。


「おう。

よろしくな」


◆◆◆◆


2日後、騎士団の会議室でお茶を飲みながらデヴリンが地図を取り出してきた。

「王都とヴァーレ、ペルワッツを除いたら残りの迷宮はファルワースとゼルゲデルタ、ファルダミノだ。

どれに行く?」


「ゼルゲデルタは街の神官長がちょっと他国との関係が怪しいので、出来れば避けて欲しいのですが」

フリオスが口を挟んだ。


隆一がマッピングで寄った際に会った各町の神官長を思い浮かべて、ゼルゲデルタで誰に会ったかの記憶を漁った。


図的な記憶だったらほぼ完ぺきに覚えているのだが、どうも人間と言うのは顔と言う図的情報ですら微妙に薄れやすいので、それこそ街のマッピング情報よりも怪しいのだ。


「あ~。あの妙に圧が強かった神官長か。

ヴァーレは街は入り口から迷宮まで通り過ぎただけで神殿にも寄っていないが、二か所目となると何らかの情報が漏れていて来るのを想定している可能性もあるかもか。

分かった、あの町は避けよう。

となると、ファルワースかファルダミノか」


「ファルワースは小さい上に鉱石と木材メインだからコボルトは居ない。

だからファルダミノだな」

デヴリンがあっさり言った。


「そうか。

まあ、悩まなくて済んでよかったというところか?」

選択肢が狭いとなると待ち受けられる可能性もありそうだが。


「下手に騎士団の人間が迷宮探索に多数来ていると知られたら、あそこの神官長に迷宮を攻略しろとせっつかれそうなので、出来るだけこっそり行きましょう」

フリオスがちょっと嫌そうな顔をして言った。


そう言われて隆一はファルダミノで会った老神官長を思い出した。

「スニーグル神官長だったっけ?

確かに何やら迷宮のラインアップを刷新して、新しく用途が分かった薬草とかを増やす為に攻略し直せば良いのに!って憤慨していたな。

王都の方にも攻略しろと要求を出していると言っていたが、あの要求って騎士団に送られていたのか」


考えてみたら大きいとは言え地方都市の神官長程度が、中型ではあるもののそれなりな規模の迷宮を攻略できるような探索者を雇う依頼金を個人で出せるとはちょっと考えにくい。

そうなると公的組織への要求、つまり軍になるのだろう。


「騎士団も軍も探索者ギルドも、手当たり次第に要求は送っていたな。

まあ、あれは領主への嫌がらせが主だって皆分かっているから誰もそれ程真剣に受け止めてないが」

デヴリンが言った。


「そう言えば、前行った時も領主への嫌がらせだって言っていたが、仲が悪いのか?」

それなりに重要な神殿のトップが領主と仲が悪いのは困るだろうに。


「ヴァサール王国は貴族とて迷宮に入り、それなりに基礎能力値を上げてもしもの時には国と民を守るために戦うことが求められる。だがあそこの領主は学生時代の迷宮探索すら雇った探索者に全部戦わせた腰抜けだからな。

ちゃんと戦う気概がないなら引退しろっていうのが神官長の主張なんだ」

デヴリンが言った。


貴族に生まれたからには腰抜けは許されないとは、ちょっと可哀想な気もしないでもない。

引退したら自分で自由に采配出来る資金や予算もぐっと下がることを考えると、比較的平和な現代だったら戦えないからと言ってあっさり権力の地位を手放すような人間はあまりいなそうだ。


「まあ、あそこの一族はへなちょこが多いんですけど、現当主は特に酷いですからねぇ。

現在王都で学院に通っている息子がもう少し真面に育つことを期待しましょう」

フリオスがあっさり言った。


おやまぁ。

変なお家騒動に巻き込まれないことを期待しておこう。


ボロクソに言われている領主一族w

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― 新着の感想 ―
き、きっと、生存意欲の他人依存が進んでいるんですね、でも、そんな一族がシレっと続いているんだから貴族って不思議だなあw
なんだかんだ言って発想が脳筋w
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