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実は召喚したくなかったって言われても困る  作者: 極楽とんぼ


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1143.ヴァーレ迷宮(9)

「やっと着いた!!」

 早歩きで只管移動し、現れた数少ない魔物は通りすがりにデヴリンかフリオスがあっさり一撃で倒す20階までの道程は……はっきり言って持久走の早歩きバージョンに近かった。


 一応昼食に間に合う時間に20階に辿り着いたが、ある意味考えてみたら朝8時から12時まで、4時間を1時間おきに短い休憩を入れて歩き続けたような物なのだ。


 そう言う意味では隆一にとって中々ハードだった。

「皆あまり疲れた様子が無いが、軍とか探索者だと半日とか1日歩き続ける様なことってちょくちょくあるのか?」

 ケロリとしている同行者たちを見回して隆一が尋ねる。


 現役の軍人と同じだけの身体能力があると思う程奢ってはいないが、それなりに迷宮で探索して基礎能力が上がったと思っていた。なので隆一的には魔術師であるフリオスですら全然疲れた様子を見せていないのにちょっと凹んだ。


「軍事行動では本隊は1週間かけて急ぎ足での行軍と言う様な事も十分あり得ますからね。

 まあ、騎士団だけでの出動でしたら馬を使うとか、飛行船を使う事が多いですが。本格的な戦争がどこかと起きた場合は兵たちの移動に同行することになるので、常日頃から歩く程度でばてない程度には訓練しています」

 フリオスがにこやかに応じた。


 なるほど。

 鉄道などはない世界なのだ。

 戦争が起きたら戦場まで歩く必要があるのだろう。

 騎士だけで駆けつけるのだったら馬なり飛行船なりで移動出来るだろうが、本格的な国と国の戦いだったら数がものを言う戦いになる。本隊の兵を置いて騎士団だけで先に馬で行く訳にもいかないから、行軍の訓練は必須なのだろう。


 隆一と煌姫が召喚されたことで戦争の可能性が低くなったから、これから数十年の間は訓練の為の訓練に近い形になるだろうが。


「まあでも、隆一も大分と体力が付いたんじゃないか?」

 デヴリンがちょっと慰めるように言う。


「確かに昔だったら4時間ほぼぶっ続けで早歩きなんて無理だったから、大分と基礎能力値も上がったな。

 4時間歩く必要が今後あるかは微妙だが」

 それこそ誘拐されて自力で逃げ出すことになった場合は夜を徹して歩き続ける必要が生じるかも知れないが……願わくは、誘拐なんぞ成功しないと期待したい隆一だった。


「それではいつも通り、歯形取りだな。

 取り敢えず安全の為にダルディールとフリオスがリュウイチの傍についていて、俺とリュウイチとで騎士達に歯形の取り方を教えるって感じで良いか?

 何人か真面に出来る様になったら3グループぐらいに分けて別々の群れを担当していく形にしよう」

 デヴリンがパンパンと手を叩いて注意を集め、これからの流れについて提案した。


「ああ、それで頼む」

 これだけ騎士が周囲に居るのだからダルディールとフリオスを専属護衛っぽく近くに侍らせる必要も無い気もするが、自分からコボルトの群れに近づいて戦闘をする予定なのだ。護衛は要らないという訳にはいかないだろうと隆一は頷いた。


「近くに居れば体勢がどうであれ戦えるので、私も歯形取りを覚えましょう」

 フリオスがニコニコしながら提案した。

 どうやら元よりこの試みに興味があったらしい。


「そうだな、出来るだけ早くガンガン歯形を取りまくって、夜通し交替で騎士たちが働かなくて済むようにしたい。

 まずは、魔物を倒すんだが、頭を吹き飛ばさないように気を付けてくれ」

 隆一が頷きながら近くのコボルトの群れへ歩み寄る。


「なるほど。

 攻撃魔術だったら頭を吹き飛ばすのが一番確実で早いんですが、駄目ですよね」

 ぽんっと手を打ちながらフリオスが言った。


 後ろからついてきた騎士の一人がぶふっと噴き出したが、隆一はそれを聞かない振りをして最寄りのコボルトに狙いを付けた。


 普段だったら鍛錬も兼ねて全部隆一が倒させてもらうのだが、ここは我儘を言わずにさっさと皆で倒すのが正解だろう。


「適当に頭以外の急所を狙って倒して、魔石は小遣い稼ぎ用にでも回収して好きに売り払ってくれ。

 で、殺したあとだが」

 一緒についてきた騎士たちが一斉に隆一が一体を倒したコボルトの群れに襲い掛かり、あっという間に残りを斬殺するのを見て隆一が自分が倒したコボルトの傍に行ってしゃがむ。


「コボルトの口を大きく開き、事前に配ったインクと筆で歯を黒く塗りたくってくれ。

 変な菌が付いてら困るから、皮手袋の装着も忘れずに」

 細かい作業が出来る、薄い皮手袋も全員に配ってある。


 隆一が自分が倒したコボルトの歯にインクを塗り終わる頃には最初に当たったコボルトの群れが全て死んでいるのを確認した騎士たちが隆一の周囲に集まって手許を覗き込んでいた。

 ダルディールは2、3歩離れたところで周囲に目を光らせている。


「で、紙をこんな感じに口の中に突っ込み、顎を押し上げて歯形を取る。

 数秒待ってからゆっくり顎を開いて紙を取り出すと、こんな感じに歯形が取れる訳だ」

 ゆっくりと取り出した歯形を隆一が持ち上げ、周囲の騎士達に見せる。

 見覚えがあるパターンの歯形なので、どうやら王都迷宮のコボルトと同じ個体タイプがヴァーレ迷宮にもいるようだ。


「じゃあフリオスもそちらのコボルトの歯形を取ってみてくれないか?」

 ちゃんとやり方を指導しながら取らせ、それと隆一の歯形とが違う事を見せたら何をしたいのか、皆も分かってくれるだろう。

 多分。



フリオスも久しぶりに書類作業から解放されてちょっとはっちゃけてたりw

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― 新着の感想 ―
>変な菌が付いてら困るから この世界の人々には細菌の概念は有るのでしょうか
もはやレクリエーション?
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