1130.近所付き合い(2)
「お久しぶり。
今日はお招きありがとう!」
隆一邸の庭でバーベキューの最終準備の確認をしていたら、アーシャが現れた。煌姫も一緒だったがどこかで出会ったのだろうか。
それとも態々護衛も兼ねて迎えに行ってあげたのか。
知らぬ間に二人が仲良くなっていたのか、興味があるところだが……これは誰に聞くべきか、微妙に不明だった隆一だった。
本人に聞いても良いのだろうか?
どちらとも付き合っているという訳ではないから下手に聞くと妙な独占欲っぽいモノを発揮していると受け取られても困るが、それこそ仲良くしているならば片方を呼ぶときにもう片方も呼んだ方が良いとか、少なくとも呼ぶ回数を似せた方が良いかもと言った気の使い方が必要……かも知れない。
後でザファードに確認しようと思った隆一だった。
アーシャはそこら辺はあまり気にしないさっぱり系だと思うが、煌姫はチクチク突いて揶揄うのに使いそうな気がする。
「お久しぶり。
今日は牛系の魔物だけでなく穴兎の肉や口直し用のフルーツも色々あるから、楽しんでくれ」
あまり早く解凍すると穴兎の肉が悪くなるかもと言う事でそこら辺のタイミングの見極めはアリスナに任せてある。解凍が間に合わなくて一時的に肉が切れる可能性はあるが、量は昨日がっつり獲ってきたので十分にある筈。
「お招き有難う。
穴兎って美味しくて有名なんですってね、楽しみにしているわ」
煌姫が持ってきたワインのボトルを渡しながら言った。
「神戸牛みたいな柔らかさと脂の美味さがありつつも、幾らでも食べられるようなさっぱり感があって凄く美味しいぞ。
思う存分食べてくれ」
最近はダルガスが大分と穴兎の燻製肉を売り出すようになったのでそれなりに常時金を出せば入手できるようになったとは言え、新鮮な穴兎の肉を食べるのは今でもそこそこ難しい。
ある意味、煙を出して近所迷惑になっても次回近所の人たちとバーベキューをする際に出す事で隣人達を調略するのに役立ってくれると期待している。
まあ、猫を飼っていない隣人だったら別にどうでも良いと言えば良いのだが。
煌姫と話している間にタルニーナがキッチン部隊の女性二人と一緒に現れた。
「タルニーナ!
此方が煌姫とアーシャだ。
どちらもタルニーナのスイーツの大ファンらしいぞ」
まだ声を掛けられる距離にいたアーシャもついでに紹介しておく。
タルニーナはある意味、甘い物好きにとって伝説的存在だ。紹介したら喜ばれるだろう。
煌姫もアーシャも自分で料理するタイプには思えないから作り方を教えてくれとまでは言わないだろうし。
「おう、大分と人が集まって来たな」
タルニーナと煌姫とアーシャがスイーツの話題に盛り上がったので隆一が離れたところで、デヴリンがスフィーナともう一人若い女性と一緒に現れた。
「リュウイチ、俺の妹のセラだ。
お礼につれてくるのが遅れたが、色々と助けて貰って本当に有難う。
セラ、此方がリュウイチ殿だ。迷宮での探索を手伝わせてもらっている」
スフィーナと一緒に来たことを揶揄える前に、デヴリンが一緒にいた女性を紹介し始めた。
これが妹さんらしい。
すっかり元気になったのか、ちょっとまだ細いが顔色は悪くないしもう普通に出歩けているようだ。
「デヴリンにはいつもお世話になっているよ。
これからもちょくちょく振りまわすことになるかも知れないが、困った時は言ってくれ」
握手しながらセラ嬢に挨拶する。
招かれ人であるという事実は告げて回らない方が良いと国に言われているので紹介の際にも誰も言及しない。
一応知っても大丈夫、もしくは知っておくべきと判断された人物は前もって知らされているらしいが、基本的にあまり大きな声で話す内容ではないらしい。
まあ、通りすがりのアホに聞かれて出来心で誘拐されても困るというところなのだろう。
流石に国家レベルで誘拐を考えていたら隆一の住居の場所等は秘密に出来ていないだろうから、特に隠してもしょうがないと思われる。
「色々とありがとうございました。
兄でお役に立つなら、幾らでも振りまわしてこき使ってください!」
元気に隆一の手を握りながらセラが言った。
病気がちだったとはいえ、それなりに元気なタイプらしい。
隆一の妹に似ているかも知れない。
うん。
彼女が元気になって良かった。
うっかりデヴリンの妹の名前とシーフな魔術師の準ヒロイン役の名前が一緒になってしまったのがやはりかなり気になったので、『シェイラ』から『セラ』に変えました。




