1129.近所付き合い
「今日は13階で果物をがっつり集めた後は14階に降りて穴兎を集めまくる!」
迷宮前で集合したデヴリンとダルディールに隆一が宣言した。
「おう。
そろそろ穴兎の備蓄が尽きそうだったから丁度いい」
ちょっと嬉しそうにデヴリンが頷く。
やはり隆一の護衛役としては幾ら13階ならダルディールだけで隆一の守りは十分だとしても、こっそり自分だけ抜け出して14階まで穴兎を獲りに行く訳にも行かず、穴兎の肉が欲しかったのだろう。
「やっと氷矢の連射モドキが大体出来る様になったからな。
王都以外の迷宮へ行く準備も大分と出来てきたらしいから、その前に家でバーベキューをしたい。
まずは個人的な知り合いを招いて予行演習して、数日後に近所の人たちを招いてちょっと縁を作って猫用おやつの試食に協力してもらうよう話を付けてから王都から出ていきたい」
隆一が今後のプランについて説明する。
先日フリオスから王都外の迷宮への遠出の許可が通り、人繰りなどの準備も大分と進んできたと言われたのでそろそろその他の準備を終わらせてしまおうと思い立ったのだ。
猫用のチ〇ールもどきもそれなりに完成度が高まってきたし。
犬用チ〇ールもどきも作ろうかと思ったが、犬たちは基本的に何でも喜んでガツガツ食べるし、オモチャで釣らなくても遊ぼうと近付く気配を見せたら尻尾を振り振りしながら駆け寄ってくるので別に要らないだろうと言う事で開発はやらなかった。
「肉の丸焼きか。
こないだのは中々美味かったから、穴兎でやったら更に美味しいかもだな」
デヴリンが嬉しそうに笑った。
「ああ。
まあ、焼き方によっては牛系魔物の方が美味しいという結果になるかもだから、そっちも十分揃えておくつもりだが。
取り敢えず、スフィーナに話を聞いたら探索者ギルドの事務方やスイーツ製作要員の人間は大体次の休養日に予定は入っていないという事なんで、フリオスもその日に呼べるか、聞いておいてくれないか?
後はダルディールの家族だが……予定はどうだ?」
隆一が尋ねる。
まあ、ある意味ダルディールの家族ならば美味しい肉は隆一に付き合ってそれなりに集めているので、予定があって参加できなくても特に問題はないだろうが。
「特に動かせない予定があるとは聞いていないな。
招いてくれるなら喜んで来ると思うから、聞いておくよ」
ダルディールが多少苦笑気味に応じた。
「良かった。
そうだ、デヴリンの家族とかも良かったら呼んでくれ」
隆一が付け加える。
積極的には助けなかったが、隆一の子守役にデヴリンが合意したのは妹の治療の為と言う意味が大きかったのだろうから、会えるならば会ってみたい。
それなりに親しく友人づきあいをするようになったデヴリンの家族なのだし。
アーシャに既に声を掛けてあるが、そう言えば煌姫にも一応声を掛けておくべきだろう。
バーベキューが特に好きだったという印象は無いが。
「ありがとな、予定を聞いてみるよ」
デヴリンが答え、隆一達は迷宮の中に入って行った。
◆◆◆◆
「大分と戦うのも上手くなってきたな」
10階の転移門を出て、11階はほぼ素通りして12階のレッドブルをあっさり倒した後に解体を手伝っているデヴリンが感慨深げに言った。
「今回は足止め用魔道具も無しで倒せたし、俺的にも上達を感じられる気がする。
攻撃魔術を連射出来る様になったら落ち着いて狙えるようになって、足止めしなくても一体でこっちに突っ込んで来るなら普通に倒せるようになったな」
隆一も肉を切り分け、真空パックにしてリヤカーに入れがら頷く。
元々、一体だったらそれなりに魔力を練った攻撃魔術一撃で倒せるのだからダルディールも足止め用魔道具も必要無かったのだが、どうしても殺意マシマシな大型魔物が駆け寄ってくると焦ってしまって狙いが微妙になりがちだったために足止め用魔道具を使わないと急所への命中率がイマイチだったのだ。連射出来る様になり、最初の一撃を外しても大丈夫だと思えると大分と落ち着いてしっかり狙いを定められるようになったのだ。
まあ、連射のお蔭だけでなく基礎能力値が上がったのもあるのだろうが。
個体ごとの脅威度は階層としては低めとは言え、ホブゴブリンとコボルトの階層中の群れを何度も殲滅させたのだ。
それなりに基礎経験値が上がる。
歯形もしっかり集まったし。
後は他の迷宮で王都迷宮の戦闘経験がしっかりそのまま活用できるかと、あちらの群れが同じ個体の複製なのか、興味深いところだ。
バーベキューとチュールを忘れてそのまま王都を出ていっちゃうとこでしたw




