1128.実戦っぽく(53)
隆一の方へ駆け寄ってくるホブゴブリン2体に向けて足止め用魔道具を発射する。
良い感じにその2体が転倒したので、それを乗り越えて出てきた1体はには結界を試すことにして、魔力を練りながら後ろから来る3体へクロスボウもどきを向ける。
「結界!」
一応棍棒を結界で止められなくても肩に当たるように体を動かしながら術を展開し、後ろの3体に向けて足止め用魔道具を発射した。
ゴン!
バコ!
ダン!
結界で棍棒を止められたホブゴブリンが何度も執拗に殴りかかって来る。
考えてみたら、結界で足止めしても足止め用魔道具を使うなり攻撃魔術で倒すなりしなければこのホブゴブリンはずっとそこに居るのだった。仕方がないので攻撃魔術で倒す。
「氷矢!」
残りのホブゴブリンも足止め用魔道具と氷矢で止めるなり倒すなりして、群れは問題なく対処出来た。
「集団に対処するのにも大分と慣れて来たな」
デヴリンが歯形を取る為に足元に転がるホブゴブリンの止めをさしながら言った。
「そう言って貰えると嬉しいが……結界って足止めするだけだから殴られ続けるんだなぁ。
これだったら攻撃魔術でガンガン応戦する方が良さげか?」
結界と攻撃魔術とは魔力の使い方が違うので、結界で足止めして次の瞬間に攻撃魔術を放つというのはかなり難しそうだ。
理想としては両方をほぼ同時に放てることなのだが、そちらはまだまだ達成まで遠い課題に思える。
「通常だったら後衛が襲われるようなことがある場合は結界で攻撃を防いでいる間に前衛が戻ってきて魔物を倒すか、傍にいる斥候役が弓矢で倒すとかといったことが多いかな。
攻撃を受け続けていると結界の方に魔力を供給し続けないといけないから、攻撃魔術を放つのも難しいって以前知り合いの魔術師は言っていたな。
だから結界なんぞ使うよりは攻撃魔術で倒す!!と言っていたが」
苦笑しながらデヴリンが言った。
なるほど。
今回はホブゴブリンに何度か殴られても結界が破られなかったが、魔物側の攻撃力に対して結界の強度がぎりぎりな場合は魔力を補充し続けなければ結界が破られる危険がある。
「よし、防御結界の魔道具をちょっと改造してそっちに魔石を大量に使ってもしもの時の防御ががっつり出来る様にしよう!
飛行具様に改造したのは結界の内部から攻撃をするのに向いていないから、中から攻撃が出来るタイプのを探してそれにがっつり魔石を強化に使えば良いだろう。
となったら、攻撃魔術を連射出来る方向に頑張るぞ」
考えてみたら、飛行具を造った際に色々と防御結界に関しては研究したのだ。
最終的にはハニカム構造という物理と魔術を併用して強度を上げたから迷宮で戦う際に使うのには向いていないモノになったが、あの際に色々調べた魔道具には内部から攻撃魔術を放つことが出来る純粋に術だけの結界もあった。
魔石の消費効率などを考えて飛行具からは排除したが、迷宮探索で宝探しは個人的な遊びなのだ。
隆一が今まで稼いできた資金や集めた魔石をガンガン使って経済性を度外視して魔道具で身を守っても問題はないだろう。
「そうか……」
ちょっと微妙な感じにダルディールが隆一のコメントに応じた。
「……正直言って、26階はもう諦めて欲しいと思っていたり?」
迷宮を下の方まで探索していき、様々な素材をしっかり鑑定して医療特化な錬金術師である隆一の強みを活かして今迄発見されていなかった新しい薬や素材を見つける為にだったら騎士団や探索者ギルドが協力するのは十分得るものがあるのだろうが、単に宝箱を探したいという遊び心だけではちょっと問題があるのかも知れない。
というか、問題がある可能性は高いか。
「例えば、迷宮内の魔物が同じ個体の複製であるか否かと言うような情報は素材の採取や戦闘に役に立つ可能性があるから、リュウイチのちょっと突拍子もない研究に付き合うのは悪くはないんだ。
だがまあ、宝箱メインと言う感じになると確かにちょっと微妙な顔をする人間もいるかもだな」
ダルディールが少し申し訳そうな顔をして言った。
「そうか。
じゃあまあ、研究もやりつつ戦闘力を上げる方向に集中して、結界に関してはもう魔道具の強度を経済性度外視で上げる方向でちょっと改善する程度にするよ」
隆一の自衛力が上がるのは関係者一堂にとっても悪くはない事だろうから、取り敢えず戦闘力と研究にもっと打ち込むようにしよう。
それでも26階に行くのは危険すぎるという結果になったら……まあ、諦めよう。
防御結界の魔道具に関しては過去に研究してたのを忘れてましたw
(作者が)




