1127.実戦っぽく(52)
「お?
今日は本格装備だな」
フリオスから(というか国から?)提供された重量軽減機能付きアーマーを身にまとって現れた隆一を見てデヴリンが少し目を丸くした。
「考えてみたら、立ち回りが大変になる前にこれを身に着けるのに慣れておくべきだろうと思ってね。
ちなみに、うちの屋敷の警備担当もこの機能が凄く良いと言っているんだが、重量軽減機能とか形とかを模倣させてみらっても良いんだろうか?」
勝手に私有地内で使う分には特許侵害に当て嵌まるとしても罰則はほぼ無いに等しい筈だが、流石に好意(と招かれ人に死んでもらいたくない国としての下心)で提供された軍事品を勝手に模倣してそこから情報漏洩したりしたら目も当てられない。どの程度は許されるのかは事前に確認しておきたい。
「あ~。
フリオスに聞いておくよ。
ちなみに何人分ぐらいなんだ?場合によっては試作品とかを無料提供するとか払い下げするって言うかも」
デヴリンが応じる。
「6人だな。提供してくれるなら当然金は払うよ。
まあ、休憩を含めての24時間警備の人員なんで実際に働いている人数は常時2人だから、体形を確認する必要があるが3人分ぐらいで良いかも?」
それなりの数が必要になる標準装備だったら既製服と同じで、大体の決まったサイズで使いまわせるのではないのだろうか?
個々人に合わせていたら遠征先とかでちょっとした破損などがあった時の交換が出来なくなるだろう。
「……本当に戦うのに使う防具だったら例え大元は規定サイズだとしても個人用に色々と手を加えて使い勝手良くするもんなんだが。
個人宅の警備程度だったら例えリュウイチの家でも何人かで共同使用で構わないかなぁ?
まあ、先ずはフリオスに相談するからちょっと待ってくれ」
少し悩んでからデヴリンが答えた。
なるほど、実験室の白衣と違って戦闘用になるかも知れない防具はサイズが大体合えば良いだろうと言う問題ではないらしい。
考えてみたら、隆一がこのアーマーを渡された時も、幾つか試した後にこれと決めた際に、何やら関節とか腰回りとかを職人っぽい人が微調整していた。
そう言う微調整を毎回シフトのたびにするのは面倒そうだ。
取り敢えず、買わせてもらえるのだったらケチらずに一人一人に購入させてもらおう。
「あ、ちなみに消臭機能を付けたアーマーってあったりするのか?
シャツは汗が乾く様に冷感シャツを着るにしても、あれって結局それなりにアーマーの中が湿気るからそのうち黴臭くなりそうだろう?
クリーンの術を毎回かければ良いんだろうが、どうせ重量軽減用に魔石を付けるんだったら消臭機能も含めたのがあったらその方が便利かなと思ってね」
クリーンの術が本人のイメージにかなり左右されるのは、既に机の上とか床に使った際の隆一や煌姫と現地人の術の効果の違いで分かっている。
そうなったら、黴臭さに関しても本人の匂いに対する敏感度でかなり変わりそうな気がするから、個人でクリーンの術を毎回使用後に掛けるよりも、最初から常時術で消臭する方が良いだろう。
「……多少の悪臭はしょうがないという事で諦めている事が多いから、それに予算は割かれないんじゃないかなぁ。
本当に気にするタイプは自分でクリーンの術を掛けるだろうし。
まあ、一応聞いておくよ」
デヴリンが言った。
「おはよう。
今日は随分とごついな?」
後ろから現れたダルディールも隆一の姿を見て言った。
「26階に行くことになったらこれを身に着けることになるからな。
今から慣れておこうと思って。
あ、そう言えば今日はホブゴブリンに何度か殴られてみて結界を上手く使えるか実験するつもりなんで、よっぽどヤバそうな一撃じゃない限り、手を出さないでくれ」
結界の練習に関して言っておくのを思い出した隆一が後半はデヴリンも含めた二人に告げる。
「結界?
範囲魔術のコツはつかめなかったのか?」
デヴリンが尋ねる。
「多少は役に立つ助言は貰えたが、26階で通用するレベルの出力を出せるようになってもコントロールが難しいだろうと言われてね。
実際に、出力を上げたら範囲指定を思い通りに出来る自信がないからそっちは諦めた。
だから結界とか、単体魔術の連続射撃っぽいのを試してみようと思っている」
隆一が答えた。
どちらも上手く形になるかはまだ不明だが。
取り敢えず、ヴェルタンからの一撃を耐えられるようになるか、単体魔術の連続射撃が出来るようになるか、両方試して実現性が高そうな方に後で集中してみたいと思っている隆一だった。
どちらかだけでも上手くいくかは不明だが。
無駄に戦闘に関して研究心を発揮せずに諦めてくれ〜と周囲は思ってそう
まあ、自衛力が上がるのは良いことでしょうが




