1107.魅惑の味?(14)
「どうだ?
どっちが美味しい?」
順番に食べられたのではどちらが好ましいと思われたのか分からない可能性が高いと思い、今日はそれぞれ別の皿に複数入れた後、右の人差し指に火息前、左の人差し指に火息後の出汁を戻して作ったチ〇ールもどきを付けたのを見せて、窓辺から降りてきたアルーナに順番に両方を一口ずつ食べさせてから、トレーから出した試作品を並べて見せた。
さて。
どっちの指についていたチ〇ールもどきが美味しいと判断して、それが入っている皿から食べ始めるか。
一応今回はあまり選択肢がありすぎてもしょうがないという事で、皿は4つになっている。2つは火息前、2つは火息後だが中身は同じ物にしてある。
これでどちらか2皿を選んで先に食べてくれれば、明らかにそっちが好きで選んでくれたと思えるのだが・・・。
猫相手にプラセボテストをやっても意味が無いが、なんと言っても感想を聞けないのでちゃんと連続して美味しいと判断したと思われるものを食べてくれるか、それとも偶然どれかを選んでいるかを判断できると良いと思い工夫した。
のだが。
右から順番に食べられた。
火息前、火息後、火息前、火息後と並べてあるので、要は選んでいないか、匂いで違いが分からないのか。
一応こちらを見て歩み始めてから火息前と後の皿に指を突っ込んで舐めさせたのだから、それに関してはどっちがどっちかは分かった筈なのだが、二皿目に火息後のを選んだあと、他のを先に確認しようとしなかったという事は特に拘りは無いという事なのだろうか?
「・・・どうだった?」
そこはかとない敗北感を感じながらエフゲルトに結果を聞く。
「火息前のが好きなのか、そちらを選んで食べてましたね~」
エフゲルトがあっさり答えた。
どうやらセリスはおやつの好みにそれなりに拘りがあるらしい。
アルーナはおやつを食べるのは好きだが、拘りが無いのか、もしくは味覚か聴覚が大雑把で違いが分からないのか。
微妙に切ない。
見た目は優雅でお嬢様チックなお洒落っぽいグレーな美猫なのに。
こんなことを言ったら三毛猫ラブな人たちに怒られそうだが、隆一的には野良猫っぽい三毛猫なセリスよりもグレーで良い家の飼い猫っぽいアルーナの方が繊細で好みに煩いだろうと思っていた。
アルーナの方が愛想が無いし、猫らしい猫なのでもっと孤高を保ち、違いの分かる猫なのかと思っていたのだが・・・孤高な猫と言うのは食べ物にあまり拘っていたら長生き出来ないのだろうか?
「・・・アルーナはなんかこう、どれでもいいのか食べた順番は適当だったなぁ」
まあ、肉に出汁を加えてチ〇ールっぽくするとそれなりに気に入っているのかすり寄ってきてくれるので、これからは猫と遊びたい時に媚びる為の小道具として使えば良いだろう。
と言うか、近所の人たちとバーベキューをやってそちらの猫にも試してもらいたいと思っていたのだが、こうもアルーナ相手に違いが無いと、微妙にそこまで頑張ってテストする意味があるのだろうかという気にもなって来る。
まあ、近所付き合いも多少はあった方が良いし、猫用のおやつというのを一般で売り出させるためにも猫全般から好かれることを確認しておく方が良いから、ある程度のテストはやって損はないだろう。
火息前のレッドブルみたいな高級品を他所の猫に食べさせる必要はないので、突進豚と突進牛の出汁程度で済ませるつもりだが。
取り敢えず、バーベキューをやって話が付いたらエフゲルトに各家に回って飼い主なり餌やり係なりと一緒にチ〇ールもどきを何通りか出して、どれが一番人気かを調べて貰おう。
隆一は・・・アルーナにちょくちょくチ〇ールもどきを上げてスキンシップを増やすほかは、もう少し迷宮探索を頑張って26階の宝箱探しが可能になるか、努力しよう。
お嬢様チックなのに拘り甲斐の無いヌコ様




