1103.実戦っぽく(32)
「よし!」
隆一の方へ突進してきていたロックボアに放ったボーラが良い感じに魔物の前足2本に絡まり、最後に足止め用魔道具をぶつけて拘束を完成させた。
足を取られてもんどおりを打って倒れたロックボアを避けた後に風矢を喉元へ叩き込んで倒した隆一は満足げに拳を握った。
「うんうん、魔道具を使ってとは言え、中層下部の魔物も一人で倒せるようになってきたな。
大したもんだ」
満足げにデヴリンも頷く。
初期からの付き添いで、隆一を育て上げたような気分なのかも知れない。
もしくはこっそりドキドキしながら見守る『初めてのおつかい』モドキなのかもだが。
「ロックボアはサクッと倒した場合は魔力たっぷりで美味しいからな。
肉も持って帰るだろう?」
デヴリンが解体用のナイフを取り出しながら言った。
「あれ、美味しいんだっけ?
あまり豚系の肉を持ちかえってなかったからちゃんと聞いていなかったな。
折角だから、持って帰って、余った分はハムにでもして貰うか」
隆一が頷く。
何とはなしに牛系の方が肉として有難みが多かったので、牛系と後は穴兎を大量に持って帰っていて、豚系は適当に突進豚を気が向いた時に買って帰った事が多かった。
色々と泥の装甲に関して調べた際には魔力が尽きるまでちょっかいを出して実験しまくったせいか、あまり美味しくなかったのでロックボアと言うのは肉が不味い種類なのだと思っていた。
だが、考えてみたら美味しいからこそその肉を目当てに襲ってくる敵を撃退する為に泥装甲なんてものを進化の過程で身に着けたのだろう。
不味い肉の魔物だったら無理に防御手段を磨く必要はない。
まあ、弱肉強食な厳しい世界だったら大して美味しくなくても餌であるという段階で狙われる可能性も高いが。
「ロックボアは魔力が抜けると肉もスカスカな感じで不味くなるんだ。
一度抜けた魔力を魔石で補っても不味いのが変わらないから、あの泥装甲を発揮させずに一気に殺すか、発揮させてもさっさと時間を掛けずに殺すかしないと美味しく味わえない。
今回は良い感じに一撃でいったから、きっと美味しいぞ~」
デヴリンが嬉しそうに言った。
最近は倒した素材は肉のような食べるものの場合は3等分している。
隆一が興味を示さなかった場合はデヴリンもしくはダルディールが欲しがったら全部持って帰ってもOKと言ってあるのだが、解体の手間を遠慮してかそのまま捨て去ることが多い。
ロックボアは隆一が要らないと言っても持って帰るつもりっぽかったが、折角美味しいのだから食べようと勧めているようだ。
「ちなみにレッドブルも火を吹く前に倒せれば美味しいぞ。
この階の魔物は魔力が抜ける前に倒せれば美味しいんだよな」
ダルディールが言った。
「・・・ミノタウロス(小)も美味しいのか?」
魔石だけで良いと断った時に特に何も言わずに迷宮に吸収するがまま放置していたが。
「まあまあ?
でも、レッドブルの方が美味しいから。
ミノタウロス(小)は味と言うよりも二足歩行で力の強い魔物と戦う練習用って感じかな?」
デヴリンがあっさり応じる。
なるほど。
中々工夫がされているようだ。
二足歩行の強いのを倒す練習をして、それが出来る様になったら今度は群れで襲ってくるコボルトとホブゴブリンを対処できるようになれという流れらしい。
「レッドブルは拘束して倒れても口から火を吹くかもしれないから、スピードが大事って事か。
ちなみに口を縛って閉じたりしたら、レッドブルは火を吹くのを諦めるのか?」
首周りに足止め用魔道具を巻き付けて口を止められたらどうなのだろうか?
まあ、首の周りに上手く巻き付いたらそれで首の骨を折るなり呼吸困難にさせるなりして倒せる可能性もあるが。
「縄を巻き付ける程度じゃあ僅かな隙間から火を吹いて縄を燃え切ろうとするから駄目だな。
あの粘着液で止めたらどうなるが知らんが・・・あれの場合、鼻の孔とかも塞いで普通に窒息死しないか?」
デヴリンがちょっと首を傾げながら言った。
レッドブルに関して変に工夫してもあまり意味はないらしい。
というか、魔力感知用インクに試した際には火を吹く前に倒せるかどうかあまり気にしていなかったが・・・有意に違いが出るのだろうか?
骨の成分がそれ程急激に変わるとは思い辛いが、肉だってそれ程あっさり変わると思えないのに味が変わるらしいのだから、骨の中の魔力に反応する部分が変わる可能性はゼロではない。
まずは一発、火を吹かさずに殺せないか試してインク用に使って確認すべきかもしれない。
どうせ肉を持って帰るのだ。
骨をついでに付けておいてもらって持って帰れば一石二鳥だろう。
食欲全振り?
回復師だったら脂っこいのがダメになるような年齢になっても胸焼けを即時解消できそうw




