1101.実戦っぽく(30)
11階の熊蜘蛛とエレメンタルスライムではどちらも微妙に不完全燃焼な感じだった隆一だが、そのまま12階に降りた。
どこまでやったら蜘蛛相手にやり切った感を得られるのか不明だったし、スライムに関してもそこまでムキにならなくて良いだろうと思ったのだ。
幸い、12階はもっと単純に戦えるミノタウロス(小)とレッドブル及びロックボアである。
どれも普通にボーラ型足止め用魔道具を使えそうだ。
と言うことでクロスボウもどきの装填もしっかりした隆一が12階のフロアに入って行く。
最初に遭遇したのはミノタウロス(小)だった。
「そう言えば、ミノタウロスって12階の小と17階の中と22階の注釈無しの3種類いるみたいだが、これってミノタウロス(極大)みたいのも居たりするのか?」
隆一達の方へ駆け寄ってくるミノタウロス(小)に足止め用魔道具をぶつけるタイミングを見計らいながら隆一が尋ねる。
25階までの魔物のラインアップは確認してあるが、それより下は見ていないのでミノタウロスの種類に関しても微妙に不明だ。
「極大って言うよりも黒とか赤とか色で敏捷さや力、回復力とかの特徴が違うタイプがいるな」
デヴリンが教えてくれた。
なる程。
ある意味、むやみやたらと大きくなることが戦闘力アップには繋がらないのか。
「ちなみに、小中と注釈無しでパワーとかの違いはどんな感じなんだ?」
基本的に隆一が魔物とまともに剣で撃ち合ったりしたのはごく初期だけで、残りは魔道具やダルディールに足止めを頼って動きが止まったり遅くなったところを攻撃魔術で急所を狙ってきたので、魔物のパワーや防御に関してはほぼ実感が無い。
どちらにせよ、ミノタウロス(小)であろうと殴られたら一発であの世行きな可能性が高いので、詳しく知る必要は無いと言えば無いが・・・拘束する足止め用魔道具の強度をどの程度アップした方が良いかの目安にはなりそうだ。
「ミノタウロス(小)はパワー的には10階のゴーレムと大して違いは無いが、動きがずっと柔軟だし早い。
ミノタウロス(中)は・・・1.5倍って感じかな?
22階のミノタウロスはそれの更に倍程度ってところだが・・・力だけでなく敏捷性や賢さも上がるから、単純に力だけで脅威度を判断できないぞ」
ダルディールが応じる。
そこら辺の敏捷さや賢さも全てダルディールに封殺して貰って来たので実感していなかった隆一だが、どうやら階層が下がっていくと脅威度は上がっていくので、要注意と言うところだろう。
まあ、元々迷宮の下部に行くのは命に関わる危険な行為なのだが。
と言うか、はっきり言って最初に腕のいいお守り役を付けられたせいで、うっかりそれを標準だと思って二人が忙しい時に他の探索者をお守りに雇って探索に行って、あっさり死にそうな気がしないでもない隆一だった。
「ちなみに、ダルディールやデヴリンってパーティで金ランク、個人で銀ランクだったんだよね?
個人の銀ランクだったら他の探索者でも同じ程度の安定感と能力があるの?」
ちょっと失礼かもと思いながらも確認の為に尋ねる。
金ランクが最高峰なのは分かるが、その一歩手前の銀ランクだったらどれも似たり寄ったりなのか、それともかなり大幅に違いがあるのかは知っておきたい。
「あ~。
金ランクって言うのはそれこそ大型迷宮を攻略できる探索者ってことなんだ。
つまり、個人で金ランクって言うのはソロで大型迷宮を攻略できるって意味だから・・・実質存在しないな。
銀ランクは金ランクのパーティメンバーから銀ランクパーティのメンバーまで幅が広いから、一口に『銀ランク』と言われてもピンキリとまでは言わなくてもそれなりに戦闘力に違いはある」
デヴリンが言った。
なるほど。
「つまり、デヴリンとダルディールの都合が悪い時に、銀ランクの探索者2人を雇って王都迷宮に入るのは止めた方が良いのか」
まあ、変な探索者を雇って迷宮に入って誘拐されてはたまらないので、元々それこそスフィーナが太鼓判を押してくれるような相手以外を雇うつもりはなかったが。
「そうだな。
必ずしも騎士だったら安心とは言えんが、どうしても迷宮に入る必要があって、俺たちが不在な場合は騎士団の中隊位を連れていく方が無難かも知れない」
ダルディールが応じる。
「・・・デヴリンが忙しいってことは騎士団そのものも忙しいだろう。
そう言う時は諦めて迷宮には入らないことにするよ」
隆一が何が何でもやらねばならないことなんてほぼ無いのだ。
無理にごり押しして他の人間の命をうっかり危険に晒してもしょうがない。
とは言え、いつまで経っても子守が必要な存在であるのは微妙だが・・・。
まあ、隆一の場合は魔物対策だけでなく、誘拐対策もあるのだ。
そこら辺は国の都合もあると考えれば極端に気にしなくても良いだろう。
誘拐対策は本人の能力だけでは難しいですよねぇ




