野菜の栽培計画
さて、栽培計画を立てないとね。
珠美は店で買ってきたわら半紙と鉛筆を前に、どの野菜から育てていこうかと考えていた。
お金がないので、焦る気持ちがないとはいえないけれど、農業一年目にできることというのはたかが知れている。
土ができていないので、畑が瘦せているのだ。
最初に珠美が思いついたのはマメ科とイネ科の植物だ。
大豆やインゲンなどのマメ科、トウモロコシや麦などのイネ科の植物は、根が土壌を育ててくれる。
根粒菌とかなんとかいったけど、難しいことは珠美にもよくわからない。
園芸のことを教えてくれる教育テレビで、お茶目な講師の先生がそんなことを言っていたのをおぼろげに覚えている。
テレビといえば、その番組の特集で自然農法を紹介していたのを観たことがある。
草だらけの中で野菜を育てていた。
草を刈って野菜のマルチをして根を守り、根をそのまま残すことでミミズなどの土の中で生きている虫を守り、生物を豊かにすることで土壌自体もを豊かにして、草にやってくる虫をそのままにしておくことでアブラムシや病害虫などを自然淘汰するという、まるでわらしべ長者のように幸運の連鎖を引き起こす農法だ。
雑草が元気で生き生きとしているのと同じように、野菜も雑草に負けないように育つことで、活力のある美味しい野菜が育つのだとか……
化学肥料を買わなくていいし、綺麗に草取りをしたり、たくさん耕したりしなくていい、ずぼらさんによるずぼらさんのためのおいしい農法だ。
珠美は「おおー、これは自分の性格にピッタリ!」とすぐに思った。
けれど「家のすぐ前にある畑を草まみれにしていると、見栄えが悪い」と旦那様に反対されてしまった。
残念無念である。
ふふふ、でもこの土地ならできる!
化成肥料などを買うお金もないし、人がやってくることもないど田舎に住んでいるのだ。
やるなら、今でしょ!
珠美は有名な塾講師のようなことを言いながら、こぶしをギュッと握った。
【農業一年目 試案】
〔売るための商品〕
★ トウモロコシ(イネ科)・・受粉させるために、時期をずらして植える。雄花を切って、蛾の対策。
★ 大豆(マメ科)・・枝豆として早期収穫するものと、大豆として出荷するものの二段構え。水を好むが加湿は嫌い。本葉が出たら土寄せをする。種類別に二度蒔きする。
この二つは店で買い物をしている時から頭にあったので、種を多めに仕入れてきていた。
どちらも鳥に注意が必要な作物だ。
〔自家消費用〕
☆ トマト・・乾燥を好むので大豆の側に植える。わき芽を利用して、倍にする。雨に注意。
☆ ナス・・トマトの側に植える。一番花を摘み取る。わき芽の剪定。根切りと枝の刈込み。長期収穫のための溝施肥。
☆ インゲン・・乾燥を好む。
☆ ジャガイモ・・乾燥と光を好む。湿度は苦手。土寄せをする。
☆ ピーマン・・暑さと乾燥が好き。枝の剪定をする。
☆ ダイコン・・涼しくて水はけがよいのが好き。
☆ キュウリ・・ネギをそばに植える。カビに注意。水が好きだが加湿は嫌い。わき芽と初期花を取る。
☆ カボチャ・・ネギをそばに植える。カビに注意。
☆ ニンジン・・水が大好き。雨を利用する。
☆ サトイモ・・高温多湿を好む。田んぼの横に植える。
☆ ゴボウ・・深く耕す。ゴボウじくが美味しい。
☆ 葉物野菜の園
(コマツナ、ミズナ、コカブ、チンゲンサイ、サニーレタス)・・バラ蒔きする。
☆ ホウレンソウ・・石灰をまいてアルカリ土壌にする。種の芽切りと初期の元肥えが大事。
☆ オクラ・・強い日差しを好む。収穫の時に下葉を取る。
☆ スイカ・・猛暑と乾燥を好む。実をつけるわき芽を三本だけ伸ばす。
今まで家庭菜園で春から夏にかけて作っていた野菜で、基本のものを書き出してみた。
これらの野菜の種や種イモなどは一袋ずつ買ってきている。
ふむむ、こうして書き出してみるとダイコンとジャガイモは春先の寒さが残っている頃に植えてた気がするなぁ。
この二つを早めに植えないとダメだね。
それからサンチュがあったら、メンテナンスなしでしつこいほどたくさん収穫できるんだけどな。
残念ながら、スパポーンさんの店には種がなかった。
ミヨンばあさんなら、何か知ってるかな?
夕食に焼きめしとカボチャの味噌汁を食べた後で、珠美はこんな栽培計画を立てていた。
それにしてもカボチャは早く食べてしまわないといけないな。
二日続けて味噌汁に使ったのだが、まだ半分以上残っている。
傷みやすい種だけ取り除いて、ラップにくるんで、冷蔵庫に入れておけばもう少しはもつのだが、あいにくとそんなものはこの異世界にはないようだ。
明日、天ぷらと煮物と焼きびたしを作ろうかな。天ぷらをするなら、野草も採ってこなくっちゃ。
畑を耕した後に腐葉土を入れたいから、林にも行ってみないとね。
ワラビもそろそろ出てるかなぁ。山菜の炊き込みご飯も美味しいかも。
何度もいうようだが、こういうスローライフというものは、気忙しいものである。
次々に連想ゲームのように考えを伸ばしながら、珠美は明日の予定を立てていた。




