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神様に借りた農場  作者: 秋野 木星
第一章 四月
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夜食

セレンは珠美たちをおろすと、そのままエルフの船に乗って去っていった。


港からの帰りには、小人族の村に寄ってゆっくりするつもりだった。けれど、セレンが疲れていることもあり、またお荷物の客が一人いたために、そのまま家の近くの岸辺まで送ってもらった。



珠美とセレンにお荷物認定されたゼスは、自分の頭の上に明度の高い『光』を出し、珠美たちの後ろをブラブラとついてきている。

その光の恩恵もあって、田んぼの畦道(あぜみち)を歩くのに支障はなかった。


ペロルはエルフの船と別れるのが寂しかったらしい。


「あーぁ、しばらく船に乗れないねぇ」


「そうね。でもしばらくは出かけないで農業をするのもいいわよ」


最近、外出する用事が続いていたので、船が使えないのなら家でゆっくりと仕事ができるし、珠美としてはそれはそれでよかった。


セレンは首都に置いたままになっている自分の船を取りに行くため、しばらく珠美の船を借りたいと言ってきた。

それは優先すべきことだし、あの船はもともとセレンの持ちものだ。珠美にとって、異存はなかった。

ただ、ペロルとしては、ちょっと残念らしい。

船が手元にないと、リザン町の彼女の所へ当分の間、行けそうもないというのもあるのだろう。

ほら、やっぱり昨日、カインに紹介を頼むべきだったのかもよ、ペロル。



家の側まで帰ってくると、光が見えたのかミーニャが玄関から迎えに出てきてくれた。


「帰ってこれたのね。遅いから、今日はトルーサ山に泊るのかと思ってたニャ」


「ただいま~」


「帰りました。それがちょっと大変なことになっちゃって……」


「んニャ? まさか魚が仕入れられなかったとか?!」


「ううん、違うの。詳しい話は夕食を食べながらするわ」


そんな話をしているところへ、ゼスが闇の中からぬっと現れたものだから、ミーニャは驚いて飛び退(すさ)った。


「ニャニャー!! 誰ニャ?!」


あ、しまった。


「ごめん、ミーニャ。紹介します、この人は現人魔法使いのゼス・ダンバールさん」


「あ、どうも~ 君が物知りの神の使徒かぁ。よろしくぅ、ゼスです」


ゼスが頭をポリポリと掻いたので、珠美とペロルは慌てて彼と距離を置いた。


「まさか……二大巨頭と(うた)われるあの、ゼス・ダンバール……ニャ?」


「ミーニャ、知ってる人? うちにある魔術書を書いた人なんでしょ?」


「珠美、それもあるけど、この人はオブリガ・ルドゥ大魔女と並び称される、世界最高峰の魔法使いなのニャ…………ええっと、たぶん?」


ミーニャもゼスの見た目のひどさに、だんだん自信がなくなってきたようだ。

皆に(いぶか)しげな目で見られて、ゼスも居心地が悪くなったのだろう、魔法を使って身ぎれいにした。


「【ヨドミモ スベテ ショウカセヨ】浄化!」


あ、この呪文、知ってるー!


ゼスの頭から足元までが虹色の膜で覆われた。

浄化の膜が溶けた時に、キラキラ輝きながら現れたのは艶のある真っ青な髪をした、中肉中背の中年のおじさんだった。


うん、フケや埃は落ちて綺麗にはなったけど、服のつくりや身体つきが劇的に変わったわけではないので、やっぱりちょっとしょぼくれたおじさんにしか見えないな。


頑張ったけど、どこか残念なゼスを、珠美たちは苦笑いをしながら家に迎え入れた。


とにかく皆で美味しいものでも食べて疲れを癒そう。



今夜のメニューは、ホタテの貝柱とトロの刺身、エビとベーコンを入れた春野菜のクリームスープだ。

ホタテやエビなどはなかなか手に入らないので、珠美も食べるのは久しぶりになる。


「あー、ホタテの刺身! やわらかくて甘いーーっ!」


「私はやっぱりマグロのトロがいいニャ。それはそうと珠美、魚はしっかり買えたの?」


「ふふふ、期待してていわよ、ミーニャ。しばらくは色んな魚が日替わりで食べられるわよ」


「やったニャー」


珠美とミーニャは賑やかに話をしながら食べていたが、ゼスとペロルはスープを飲み込むように食べながらご飯をかき込んでいた。

男二人は、よほどお腹がすいていたようだ。

珠美は『収納』から取り出した山菜の煮物を食卓に追加したのだが、ゼスにとっては珍しい味だったらしく、珠美に煮物のおかわりを要求した。


「なんだこのおかずは! 白い米にものすごく合うじゃないか」


「ゼスさんは、ご飯が米からできているのを知ってるんですか?」


「そりゃあ何百年も生きてるとな」


は?

何百年って言った?


珠美が問いかけるようにミーニャを見ると、ミーニャは黙って頷いてくれた。


「魔法を極めた人は、神の領域に近づいていくニャ。……ちょっとこの人を見ると信じられニャいけど」


へえぇ、そんなことになるのね。

それなら神様っていうのは、魔法の達人なのかしら?



夕食というよりは夜食に近いような時間だったが、ゼスたちの食欲にのせられて、珠美も太るのを気にせずにとことん食べてしまった。


風呂に浸かって鼻歌を歌っているゼスの声を聞きながら、珠美は明日炊く米を洗い、かまどに仕掛けていた。

客間は、雪男のグルじゃなくて、魔法使いのゼスが最初に使うことになってしまったけれど、部屋を増築しておいて良かったな、と珠美は思ったのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] おおー、タマミが老けた謎や、無くした記憶は取り戻せるのかな? ってか、まさかあの魔法使いと一緒に暮らす?! マジかー。まぁ、タマミとどうこうはないだろうけど……ないだろうけど!(重要なところ…
[良い点] 米を美味しく食べるやつに悪いやつはいね! ←誰だ(笑)
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