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神様に借りた農場  作者: 秋野 木星
第一章 四月
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井戸と魔法の呪文

サミーが帰った後、珠美は畑に堆肥を()く作業に戻った。


サミーも内気なタイプだから大変だな。

タングの奥さんは押しが強そうだし、村で人間関係を損ねないでやっていくには、シャリナのエスコートを断りにくかったんだろう。


彼に誰かいい人を紹介してあげたいな。


珠美は持ち前のお節介な気持ちがムクムクと湧いてくるのを感じていた。


結婚した夫婦はお返しに三組の縁結びをしなければいけない、という昔ながらの言い伝えにのっとって、珠美たち夫婦も何回かご縁を取り持ったことがある。

けれど珠美たちが結婚した後から徐々に時代の意識が変わり始めていて、お見合い結婚の人が少なくなっていった。そのため珠美たちが仲人をすることができたのは、たった一組のカップルだけだった。

その一組のカップルはまずまず幸せにやっていたので、珠美たち夫婦も一組だけでも上手くいっているのだから許されるだろうと満足していた。


でもこっちの世界であと二組、縁結びをしておくというのも手ね。

珠美は、村の人間関係に詳しいミヨンに、今度相談してみることにした。



お昼を少し過ぎた頃に、やっと堆肥を撒き終えることができた。


念力魔法を使ったとはいえ、これだけ広い畑だと疲れたわ~


特に珠美が当初予定に入れていなかった余分の綿花畑が、ちょっと広すぎたかもしれない。雪男のグルに手伝ってもらった時にはあまり感じなかったが、独りで畑の世話をしていると、無謀な広さだということがよくわかる。

魔法の手助けがあるというのは、本当にありがたい。


昼から何の作業しようかと、頭の中でしておくべきことを考えながら井戸で手を洗っていた時に、ここの井戸の設備にまったく手を付けていなかったことに気付いた。


うわぁ、井戸はよく使うのに、私ったら後回しにし過ぎでしょ。

この穴を開けただけの井戸は日本でいうと中世の設備にも劣るだろう。もしかしてこういう素朴な水の汲み取り方は弥生時代ぐらいの設備になるのかもしれない。せめて時代劇でよく見るような江戸時代の井戸ぐらいにはしないとねぇ。


ふむ、ということは桶をたぐるための滑車が必要ね。手や顔をしゃがまずに洗えるように洗面台も欲しいな。できたらポンプ式で水を汲み上げたいところだけど、さすがにポンプの構造は知らないなぁ。

構造を知らないと、もちろん魔法で作ることはできない。

村で使われているような魔導ポンプを買えるようになるまで、滑車でやっていくしかないか。


そうと決まれば、魔法の習得をしなくっちゃ!



珠美は先日作った立派な本棚に、一冊だけ収められている魔法書を取り出した。

魔力がAランクになっているので、もうどのページもさほどの魔力を使うことなく読み進めていける。


「あったあった」


「ニャにを探してたんニャ?」


「あ、ミーニャ、いたのね。石を加工するのは手作り魔法じゃなくて土魔法の範疇(はんちゅう)になるのね」


「そうなるニャ。金属加工と分ける必要もあったんだろうニャぁ。それはそうと魔法を習得したら、ステイタスを確認しといたほうがいいニャ」


「そうね、ただ魔法が増えてくると、呪文がねぇ。次々とたくさんの呪文を覚えなきゃならないから、ちょっとこんがらがってきてるのよ。集約されたりすると呪文が変わることもあるでしょ?」


「それもそうニャ~…………」


珠美の相談に、ミーニャはしばらく考えていたが、あまり知られていない裏技があるにはあると教えてくれた。


「『パスラン』機能というのがあるんだけど、あれの活用はちょっと不安定ニャんだよニャぁ」


「『パスラン』機能?」


「そうニャ。Aランク以上になると習得した魔法が多くなるから、魔法呪文を絞って一語に集約することもできるニャ。ただし、使う時には注意が必要になるニャ。その時点で習得していなかった魔法の場合は、その場で魔力を大量に削られるし、すでに習得していた魔法でも魔力は毎回多めに使われてしまう。その上ちょっと不安定な機能だから、基本設定が変わることもあるし。だから普通はあんまり勧められニャい方法ニャ」


「どうして? ものすごく便利そうなのに」


「珠美~、普通はAランクにニャると無詠唱の魔法が増えてて、こんなことで困る魔法使いは滅多にいニャいよ」


そういわれればそうだ。

これって、短期間にレベルアップした障害なんだなぁ。


「あれはリスクもあるけど、珠美の魔力量の上昇率を考えると、こっちの方がいいのかもニャぁ」


その言葉を聞いて、珠美はすぐにミーニャのいうパスラン機能を使うことにした。

なんせ呪文を書いた紙がポケットの中でヨレヨレになってきていて、レベルが上がって集約された呪文がどれとどれだったのか訳が分からなくなりつつあったのだ。


その場で魔力を大量に削られるとはいっても、珠美の場合、戦闘員ではないのだからあまり困らない。


まずはステイタスを見て、トランスフォームさせていくというので、久しぶりにステイタスをオープンしてみた。



名前  (日色(ひいろ)) 珠美(たまみ)

年齢  15歳

種族  異世界人、ヘブン人

職業  農場管理者、竹林管理者、山林管理者(トルーサ山)、生活雑貨製作者、ポコット・アルバイター、建築家、大工


ギフト 製作(日常生活に必要なスキル、農業従事者に必要なスキル、手作りができるスキル)


生活魔法  言語1、料理、光・ライト、精米、ウォーター、発酵、鑑定・植物、解体、抽出、消臭、浄化、保存、釣り

農業魔法  耕作・畑、新鮮適温収納・倉庫、防虫、草刈り、防鳥

手作り魔法  金属加工、木工名人、粉砕、竹細工名人(竹細工は竹細工名人に進化しました)、裁縫、倍速羊毛、染色、研磨、成形、建築・匠、念力、硬化、釣り具作成

土魔法  掘削

風魔法  ウィンド、バリア、なんでも乾燥

火魔法  ファイヤー


レベル 898


体力 Aランク 32点(Sランクまで後28点)

魔力 Aランク 41点(Sランクまで後19点)



「へぇ、建築家に大工か……」


「珠美の職業欄は増え続ける運命ニャ」


ミーニャはもはや達観の心境に到達したようだ。

レベルやランクの点数にも片方の目をピクリとつり上げただけで、大声を出すこともなかった。



「どうすればいいの?」


「名前のところに利き手を置いて『パッシングランニングチェンジ』と唱えるニャ」


「ほほう、なるほど。やってみるね」



【パッシングランニングチェーーーーーンジ!!】



朝のペロルではないけれど、戦隊ヒーローのように珠美が叫んでみた途端に、ステイタスが出てきていた空間がグニャリと歪み、白く輝く光を発し始めた。

そしてその眩いばかりの閃光は、みるみるうちに辺り一帯をおおいつくしていく。


珠美は眩しくて目を開けていられなくなった。



しばらくして、徐々に収まってきた光の中に浮き上がってきたのは、すっかり変わってしまった珠美のステイタス画面だった。


おー、ビビった。

ここまで大掛かりな変化をするとは思ってなかったよ。



光に慣れるように目をシパシパさせた珠美は、新しいステイタス画面を覗いてみた。

それを見た途端に、珠美は魔法だけでなく自分の中身も大きく変化したことを悟ったのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] おお? どんなふうに変わったのか楽しみです! [一言] それはそうと、珠美さん、お節介おばさんの本性はちょっとセーブしてあげないと……( ノД`)
[良い点] 珠美の中身も大きく変化……何をやらかすのか、もうドキドキしますね(笑)
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