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神様に借りた農場  作者: 秋野 木星
第一章 四月
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燻製と飴煮

花祭りの山車を見た後、珠美はスパーポーン雑貨店によって、ショウガなどの必要な食材を買い足した。


スパポーンさんに作ったばかりの「ミズヒキ・アクセサリー」を見せたら、ものすごく残念そうな顔をされた。どうやら自分の店でも取り扱いたかったらしい。


「こんなにいい物ができるんだったら、うちで売りたかったじゃないの! もう、タマミを自分の店に取り込んでしまうなんて。サト君に文句の一つも言ってやらないと気が収まらないな」


ものすごく悔し気にそう言われてしまった。

聡さんとスパポーンさんが険悪になってもいけないので、珠美はスパポーンさんに大き目の松飾りのヘアバレットをあげておいた。

売ったわけじゃないし、スパポーンさんが身に着けてくれたら、ポコットの宣伝にもなるのでいいだろう。


それから窓の大きさを書いた紙をスパポーンさんに渡し、大量の窓ガラスを注文した。


「これと同じ大きさで、網戸も作ってもらってください」


「え? こんなにたくさんの窓ガラスをどうするの?」


「お風呂や作業場を増築したんです」


「増築っていつの間にそんなことをしてたんだい? 大工さんなら紹介したのに」


「ええっと、自分で建てちゃいました」


「はぁあああ?!! 自分で……?」


スパポーンさんが顎が外れるほど驚いているのを見て「やっぱりみんな驚くよねぇ」とペロルが訳知り顔で頷いていた。


ごめんね、規格外で。



店を出て、ヘイじいさんの家に釣ってきたヤマメを少しばかりお裾分けして後で、珠美は家に帰ることにした。

井戸の側のタライで泳がしているヤマメを、今日中には料理しておかないといけない。



家に帰り、まずは木で四角い箱型の燻製器を作る。

ペロルのおかげで思っていたよりも大漁だったので、前にトルーサ山で拾ってきた桜の古木でチップを作り、燻製にして取っておこうと考えたのだ。


隙間の空いた燻製棚にぬめりと内臓をとったヤマメを並べていく。

燻製器の下には大きな石で簡易の炉を作り、ここで桜の木を(いぶ)していくことにする。


大き目のヤマメの方は三匹とも背開きにして塩を擦り込み、木の枝で開きにして陰干しにしておく。

これは明日、バターで焼いて食べる予定だ。


ふむ、そうなると夕食は、やっぱり塩焼きよね。

珠美はペロルやミーニャが食べるものは塩をひかえめにして、こちらも裏庭に作った簡易の焚火の側に串で突き刺して並べておき、直火焼きにすることにした。


「にゃにゃにゃ?! いい匂い~ 今日はお祭りニャ?!」


ミーニャはこぼれ落ちそうなほど目を見開いて、フラフラと魚の間を彷徨(さまよ)い歩いている。

喜んでくれてるようで良かった。

ペロルの方は、自分で釣ったくせに、燻製の煙の臭いがキツイといって、林の中に避難している。

どうやら犬には、我慢できないほど煙たいらしい。


残った小魚は鍋でコトコト長時間煮込んで、ショウガの風味を効かせた甘辛い飴煮にする。

この飴煮は珠美の大好物だ。

これがあると、当分の間、朝の食卓が豊かになりそうだ。



魚の火加減を見るためにずっと調理場の辺りにいなければならないし、ご飯の方も手の込んだものを作ろう。

和風でまとめたかったので、もう一品は、山菜を入れた炊き込みご飯にすることにした。

ありがたいことに素材はたっぷりとお腹の『収納倉庫』に入っている。


それから、豆腐のすまし汁も作っておこうかな。



できあがった夕食は、ミーニャではないけれど春祭りのような豪華な料理になった。

ほっこりと蒸された炊き込みご飯は、立ち昇っている湯気もいい匂いがする。


「おいしいなぁ~ 炊き込みご飯を食べて、おつゆをすすって、この塩辛い魚を食べると安心の美味しさね。日本人でよかったぁ」


「ニャ、珠美はヘブン人でもあるでしょ」


ミーニャは珠美にそう言いながらも、口の周り中を魚の油だらけにして、夢中で塩焼きを食べている。

ペロルはそんな二人を満足そうに見ると、成長(いちじる)しい太い足で魚をつかみ、頭からかぶりついた、


「うん、自分で獲ってきた魚は格別の味だな」


「そうね。そう言えばペロルはなんで釣りが上手いの?」


珠美が質問すると、ペロルはミーニャの方をチラリと伺って、ちょっと言葉を濁しながらこう言った。


「神の使徒になる前は、僕にも前世があったからね」


「そうか、どんな人にも前世というのがあるのねぇ。ペロルは前世で魚釣りの名手だったんだ」


「ニャ、ところで珠美、花祭りのことはわかったの? まさかこれから夜なべして人形を作るんじゃニャいでしょうね」


ミーニャが突然、話に割り込んできた。


「作るに決まってるじゃない。明日は堆肥を畑に入れたいから、今夜のうちにポコットに持っていく物は仕上げておきたいのよ」


「もぅ~、あんまり遅くならないようにニャ」


「わかったわかった」



神の使徒の前世は、あんまり深く聞いちゃいけないみたいね。

二人の態度から、なんとなくそんなことを察してしまった珠美だった。


夜が更けてきても、もう急激には冷え込まなくなってきた。

ハナミズキやツツジが満開になったら、いよいよ本格的な園芸シーズンがやってくる。

これからは農業の方の仕事が忙しくなりそうね。

珠美は心の中でねじり鉢巻きをして、これからの生活を見据えていた。

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