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神様に借りた農場  作者: 秋野 木星
第一章 四月
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新製品を作ろう

町から帰った珠美は、洗濯物をたたみながらポコットに提案する新製品のことを考えていた。


何がいいかな。

洗濯といえば、波状になった洗濯板は店になかった気がするな。板か……チーズのカッティングボードはどうだろう? 


「ねぇ珠美、町へ行かなくなるのなら、少しは暇になるよね。畑の仕事がない時に釣りに行かない?」


「……うん……ペロル! 今、釣りって言った? 釣り竿というのもありね。子ども用にするんだったら魚獲り用の網とか。なるなるぅ~」


「もう、珠美ったら、何を一人で納得してるニャ? 私たちが言ってることが聞こえてる?」


「ダメだよミーニャ。完全にあっちの世界にいっちゃってる」


「珠美はのめり込むと他のことを考えられなくなるからニャ」


ペロルとミーニャがそんなことを言っているのも耳に入っていない珠美は、子ども用という単語から連想して、竹トンボのことを考えていた。

ものすごく薄い羽の竹トンボを体育館の中で飛ばして、滞空時間を計る競技があったよね。羽の外側にタングステンを貼り付けるんだったかしら?

よし、これも作ってみるか。


女の子用にも何かほしいな。

うーむ……お、そういえば毛糸があったじゃない。もふもふぅ……もふもふといえば、ぬいぐるみ。あ、アニメでウサギの毛糸の塊が動き回って、カエルやクマと学校に行く話があったわ。ああいうフェルトの動物だったら、季節を問わずに飾る人がいるかも。春や夏の行事に合わせて作るのよ。まずは春の「花祭り」用ね。

でもこれはリサーチが必要か。今度、デルム村に行って誰かに花祭りの様子を聞いてみよう。


それから以前、聡さんがキッチン用品のカトラリーとかを金属で作ったらどうかと言ってたわね。

ナフキンリングやバターナイフに肉用のナイフ、そしてもちろん大小のスプーンやフォーク、こういうものはデザインが違ったら何セットあってもいいかもしれない。結婚の贈り物にもなるし。

金属で作ったエッフェル塔の小物入れなんかどうかしら。木製にするんだったら変わった形の塩、コショウ入れもいいわね。


それにバーバラからは服を作ってほしいと言われてるし。

ふむふむ、考えてみたらたくさんあるじゃない!



「珠美、珠美!」


「へ? 何、ミーニャ?」


「作り出したらキリがなくなるから、夕食を食べてからにするニャ!」


「はぁい」


ミーニャ母さんに注意されたので、珠美は夕食を作ることにした。


炊事場へ行ったら、塩漬けにしていたシャジッポが目に入った。

これも塩でたたんでから、そろそろ一週間になるわね。洗って塩出しをしときましょう。

珠美はシャジッポの塩を洗い流して、それを今度はたっぷりめの水に浸けておいた。水を何度か入れ替えて塩抜きをすれば、歯ごたえのあるシャジッポの炒め物ができる。

シャジッポは採ってきてそのまま加熱すると、歯ごたえがなくなり溶けてしまう。めんどくさいようだがこうやって塩漬けにすると、旨味と歯ごたえが出るんだよね。



何を作ろうかな。

グルさんとは卵料理ばかり食べてたから、久しぶりに手間のかかる肉料理にしましょうか。


「ハンバーグ! これはまだ食べてないわね」


「なになに? それっておいしいの?」


ペロルとミーニャも興味を示したので、二人には香辛料を入れないものを作ることにした。

珠美のハンバーグには、もちろんナツメグを入れる。これを入れると入れないとでは、味が違うのよね。


ふふふ、今夜は煮込みハンバーグにしよう! 

トマトケチャップ、お湯、ソース、醤油でベースのソースを作る。それにローリエやコンソメを入れて、焼いたハンバーグを煮ていくのだが、ソースに砂糖を入れてトマトケチャップの酸っぱさをある程度、軽減させるのがポイントだ。

ついでにお弁当用に、大葉でひき肉を巻いて甘辛い醤油味をからめた肉巻きも作っておこう。


イノブタとムー牛肉を合挽きにするのに時間がかかったが、後はいつもの手順でスムーズにハンバーグができあがった。付け合わせは、こふき芋とニンジンのグラッセだ。クレソンとパセリも添えておく。



「やっぱり煮込みハンバーグは美味しいな~ 後からチーズをすりおろしてかけたから、ソースもとろっとろ!」


「うん、どーしてわざわざ肉を刻むのかと思ったけど、これ普通に食べた時と全然食感が違うんだね」


「噛んだ途端に金色の肉汁があふれて出てくるニャ~」


ペロルとミーニャもハンバーグが気に入ったようで、また作ってほしいと頼まれてしまった。

ふふ、やっぱりハンバーグが嫌いな人っていないわね。



夕食の後は、追加注文の木工品などを作った。

けん玉をたくさん作るのに苦労するのではないかと思っていたが、一度作ったものは手が覚えているようだ。数を作ったわりには、あっという間にできてしまった。


洗濯板やカッティングボードもすぐにできたのだが、竹トンボの場合は作ると飛ばしてみたくなるのが難点だ。

ついついペロルやミーニャと作業小屋で飛ばして遊んでしまった。


これ、珠美だけが夢中になったのではない。

ミーニャは意外と負けず嫌いで、自分が勝つまで何回も挑んでくるものだから、後の作業ができなくなってしまった。


「キャー、落ちないでぇー!」


「あ゛ー、そっちは壁だニャ」


「へへへ、今度は僕が一番長く飛んでるよ」


その日は、童心にかえって遊ぶ三人の賑やかな声が、夜遅くまで農場の作業小屋に響いていたのだった。

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