あせっ
昨夜は本箱や、引き出しなどの細かい仕上げをしていたため、ポコットに持っていく製品を作る暇がなかった。
ヤバいなぁ。
けん玉はたくさん注文を受けてたよね。他のものも、それぞれ4個の追加注文だったし。
それに雑貨の試作品も作ってみるつもりだったのにな。
昨日は休みだと思い込んで、そんな仕事のことは頭から飛んでしまっていた。
とにかく今日は、ポコットの駐車場に馬の水飲み場を作る予定だから、新しい魔法を習得しておかないとね。
珠美は魔術書を読んで『硬化』魔法を取っておくことにした。
それに、野菜が大きくなってきたら防鳥ネットも必要だ。
そのため今日習得した魔法は二つだ。
『硬化』・・・【カタァク ナアレ】
『防鳥』・・・【ダメデス トリハ ハイレマセン】
うん、これでよしっ。
「珠美、最近ステイタスを確認してないニャ」
「そういえばそうね。ちょっと見ておこうか。ステイタス オープン!」
ミーニャに注意されて久しぶりに見たステイタスは、またランクが上がっていた。
名前 (日色) 珠美
年齢 15歳
種族 異世界人、ヘブン人
職業 農場管理者、竹林管理者、山林管理者(トルーサ山)、生活雑貨製作者、ポコット・アルバイター
ギフト 製作(日常生活に必要なスキル、農業従事者に必要なスキル、手作りができるスキル)
生活魔法 言語1、料理、光・ライト、精米、ウォーター、発酵、鑑定・植物、解体、抽出、消臭、浄化、保存
農業魔法 耕作・畑、新鮮適温収納・倉庫、防虫、草刈り、防鳥
手作り魔法 金属加工、木工名人(木工は木工名人に進化しました)、粉砕、竹細工、裁縫、倍速羊毛(羊毛は倍速羊毛に進化しました)、染色、研磨、成形、建築・匠(建築は建築・匠に進化しました)、念力、硬化
土魔法 掘削
風魔法 ウィンド、バリア、なんでも乾燥(木材乾燥はなんでも乾燥に移動、統合されました)、
火魔法 ファイヤー
レベル 691
体力 Bランク 43点(Aランクまで後7点)
魔力 Aランク 2点(Sランクまで後58点)
「あれぇ~? なんかいろいろと変わってる」
「……もうAランクになってるニャ。ニャんだかいろいろと、規格外すぎるんですけど」
「『倍速羊毛』だけじゃなくて、『木工名人』に『建築・匠』、それに『なんでも乾燥』なんていうものまであるよ!」
「短期間のうちにあれだけ増築工事をしてたら、そうなるニャ。毎日、ポンポン家を建てるなんてことは、誰でもしないからニャア」
ミーニャに言われて自分の行動を振り返ってみると、地球での生活では考えられないことをしでかしてるなぁとちょっと反省した。
魔法が発動し始めたら、夢中になってあれこれやっちゃうのよね。これは魔力に身体が馴染んでしまったからかな?
異世界慣れ、そんなことを思った珠美だった。
ポコットには、いつもより早めに出勤した。
ペロルはついて来てくれていたが、店に着くと珠美をおいて、すぐに駐車場の向こうへ走っていく。
彼女に会いに行ったのかしら? そういえば昨日も遅く帰って来たわね。バーバラに手紙を持って行っただけなのに、帰って来るのが夕方になるってどうなのよ。
店のドアを開けると、バーバラがハッとして振り返った。心配そうに珠美の顔色を見ると、小走りでこちらへ来てくれた。
「まぁ、タマミ! もう出てきても大丈夫なの?」
「はい。昨日は急にお休みして、すみませんでした。あの……それで、申し訳ないんですが、お休みを頂いたのにまだ商品が作れてないんです」
珠美は宿題を忘れてきた生徒のように縮こまって恐縮していた。
「とんでもない、商品なんていつでもいいのよ。タマミの体調の方が大事なんだからね。私も開店に合わせて完璧に準備することばかりを考えてて、焦り過ぎちゃったわ。タマミに負担を強いてたんじゃないかって、反省したのよ~」
「そんな、そんなことないです。私が提案して、注文を受けたものなんですから」
バーバラに反省なんかしてもらったら申し訳ない。なにせ昨日は一日中、元気に家を建ててたんだから。
実際にやってたことを伝えたら、ずる休みだって言われそう。
「それでね、聡と相談して開店一週間前には会社を完全退職してもらうことになったの」
「え?」
「本当は先月には辞めてるはずだったのよ。それを新規事業の立ち上げがずれ込んだとかなんとか言って、会社側がズルズルと聡を引き止めにかかっちゃって。だからね、タマミは今日とあと一日だけバイトしてくれたらいいから。今度は商品を納入する時に来てくれる?」
「そーなんですか……」
「ええ。ごめんね~、私の我儘で春の忙しい時期にタマミを借り出しちゃって。スノウマンにも注意されたの。いくら魔法が使えるからって、一人の人間にできることには限界があるんだからって」
スノウマンって、グルさんのことよね。
そうか、農家の手伝いをしていたグルさんは、種蒔きの時期が忙しいことを知ってるからな。そんな風に思ったから手助けにも来てくれたのね。
グルさん、いい人だなぁ。
でも聡さんがいるのなら、バーバラの精神も安定するだろうし。これは喜んでお役御免になるべきだな。
「わかりました。それなら今度は26日に来ますね」
「26日か……その日は引っ越しがあるから、午後から来てくれる?」
「はい、でも引っ越しも手伝いましょうか? 魔法があるから重い家具もすぐに運べますよ」
珠美がそう言うと、バーバラの目がキラキラと輝き始めた。
「そういえば、タマミは部屋の模様替えが得意なんだったわね」
「ふふ、ええ得意です」
「じゃあお願いしようかしら。もちろんアルバイト料は一日分払います」
バーバラは律儀にそう言ってくれたが、珠美はバイト料がなくても手伝うつもりだった。聡とバーバラとは長いお付き合いになりそうだ、こういう縁は大事にしなくちゃね。
じゃあ、駐車場整備は今日のうちにしておきますか。
まずは、馬の水飲み場ね。
地面に手をあてると、土の中から棺桶のような形をした器を『抽出』していく。それを『成形』し、最後に『硬化』魔法を使って、バーバラが予定した場所に馬の水飲み場を作った。
ついでに同じようなやり方で、土壁の倉庫も建てると、バーバラに呆れられた。
「珠美ったら、こんなに簡単に……」
なんかバーバラもミーニャと同じような目をして珠美を見るんだよね。
Aランクになり、魔法の威力もスピードもあがってきたような気がする珠美だった。




