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神様に借りた農場  作者: 秋野 木星
第一章 四月
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少しは自重?

「ちょっと、珠美。ほら、もう朝ニャ。ったく、カーテンができてるってことは、あれから夜なべしたニャ」


ミーニャの声がしているようだったが、珠美はなかなか目を開けることができなかった。

(まぶた)を持ち上げようとするのだが、ひどく眠たい。


「突っ走り過ぎだニャ。毛糸を作った後に風呂場を建てて、その上、夜にカーテンを縫ったりしてたら、疲れるに決まってるニャ」


霞がかかったような頭で、なるほどなるほどと自分でも頷いている。

そのまま、また珠美は意識を手放した。



やっと目を覚ました時には、お日様が高く昇っていた。


「やばい、寝過ごした!」


珠美が慌てて服を着ていると、ミーニャが寝室の扉を開けて、顔だけを覗けてきた。


「ペロルに手紙を持たせて、ポコットのバーバラさんに今日は休みますと伝えに行ってもらったニャ」


「ええっ?! どーしてよ」


「こっちの世界に来てから、珠美は休みなしに動き回ってるじゃニャい。ちょっとペースを落とさないと病気になるニャ」


確かにミーニャが言うことも、もっともだ。

必要なものがたくさんあり過ぎて、毎日が目先のことを片付けていくことで無我夢中だった。

少しは家でゆっくりした方がいいのかもしれない。


「わかったー。でも手紙って、ミーニャが書いたの?」


「あたりまえニャ。私は珠美のアシスタントだっていってるでしょ。手紙ぐらい書けなくてどうするニャ」


普通、猫は手紙なんか書けないと思うけど……

やっぱりミーニャも神様の使徒なんだなぁ。



うーん、でも何にもしないというのもねぇ。

畑の水やりをすませた珠美は、ちょっと凝った朝ご飯を作ることにした。


「まずは林に材料を採りに行かなきゃ」



この辺にあると思うんだけど……

以前、ワイルドストロベリーの繁みを見つけたところに行ってみると、ミツバチがブンブンといい音をさせて飛び回っているのが見えた。イチゴの白い花は満開で、日当たりがいい場所では、もう小さな実がついている。もう少ししたら食べられそうだ。

今日は野いちごを採りに来たのではない。ミツバチの方に用がある。


珠美は飛びかうミツバチが巣に向かう後を、そっと追って行った。


「ウホホッ、あった!」


古い樹の幹のうろに、ミツバチの大きな巣ができている。

そう、ハチミツをちょっとだけ、いただきます。


「【デテコイ デテコイ】」


珠美は『抽出』魔法を使って、大瓶に一杯ハチミツを採った。

黄金色のハチミツがトローンと一筋になって飛んできて、トポポッとガラス瓶に入っていくのを、働きバチたちは不思議そうに見ていた。



「ホットケーキを作るぞー!」


疲れた時は、甘い物よね~


小さい頃に読んだ、サンボ少年のお母さんが作ったトラのバターを使ったホットケーキが、珠美のかねてからの憧れだった。

どんどん積み重ねていって、タワーのようになったホットケーキの上から、たっぷりとハチミツをかけるのよ! しっとりとハチミツが染み込んだホットケーキは極上の味だと思う。



⒈ ボールに薄力粉、砂糖、塩、ベーキングパウダーを入れて、泡だて器でシャカシャカとかき混ぜて、ダマを潰し、空気を含ませておく。

⒉ バターを湯せんにかけて溶かしておく。

⒊ 卵と牛乳を混ぜ、その中に溶かしたバターを入れて、しっかりと混ぜておく。

⒋ これに、少しずつ粉類を入れながら、切るように混ぜていく。

⒌ フライパンを熱し、いったん濡れ布巾の上で底を冷ます。

⒍ 再び火にかけたフライパンにバターをたっぷり入れ、ここにホットケーキのタネを流して焼いていく。中火の弱火で、バターを焦がし過ぎないようにする。

⒎ 表面にポツポツと穴が開いたら、ひっくり返して弱火にし、裏面にも火を通す。

⒏ できあがったホットケーキにハチミツをたっぷりとかける。これを積み重ねていって、最後にとどめのハチミツを上からかけていく。



「これこれ、これよっ!」


見ているだけで笑顔になれる素敵なホットケーキの山ができあがった。

部屋中に幸せな甘い香りが広がっている。


珠美はコーヒーを飲みながら、ゆっくりとホットケーキを堪能した。



満腹のお腹をさすりながら、昨夜仕上げた新しいカーテンをしみじみと眺めていると、そばにある魔法書が入った本箱が目についた。

この本箱、小さすぎるよね。飾りも何もないし。


よし、新しい本箱を作っちゃおう。この小さい本箱は寝室のベッドの横に置いて、サイドテーブルにしようかな。

そうだ、窓際に縫物をする時の作業台を作って、増えた糸や刺繍糸も分類する仕切りのある引き出しも作ろうか。服飾に手を出すとなると……布なんかも柄の色ごとに仕分けできる棚を、今後のために用意しておくべきだよね。

でもここ、台所だよ。

そうだ! 南側に客間と手芸用の作業部屋を造設したらどうだろう。グルさんがまた泊りにくるかもしれないし。

そうすると部屋が暗くなるから、台所の東の壁を抜いて、窓を一つ作った方がいいよね。


「ふんふん、この寸法でっと」



珠美が母屋の台所でトンテンカンテンやっていると、外にいたミーニャが家に入ってきた。

削られた木の板があちこちに散乱して足の踏み場もなくなっている台所を見て、ミーニャは天を仰いだ。


「珠美……ちょっと目を離した隙に何やってんの? 今日は休みにするんじゃニャかったの?」


「え? 休みだよ~ これは趣味で作ってるやつだから」



本棚を一つ作るつもりだったのに、東側に玄関を作り、廊下を挟んで南に客間と手芸用の作業部屋ができてしまった。

おかしいな。


でも、今日はミーニャが言うように自重して、家でゆっくりと過ごせたから、良かったんじゃないかな?

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